79.村上城攻め(19)
村上軍との一進一退の攻防を繰り広げ、長期化の兆しが見え始めた崇数らであったが、先刻に幸龍丸の救出に成功した崇冬らの軍勢が無事に帰還。
志太軍は新たな軍勢が増え、士気は一気に向上していた。
崇冬
「よしよし、ここはまずお前たちの出番じゃ。村上軍を蹴散らして参れ。」
崇冬がそう言うと野犬たちは一斉に本丸へ向けて走り出し、城壁を登り始めていた。
野犬たちは、先刻の井戸の中で崇冬たちにも見せていたぎらぎらとした闘争心に燃えた鋭い目へと切り替わった。
さらに崇冬の兵糧の施しによって野犬たちの体力は有り余っており、狼にも匹敵するであろう機敏でかつ力強い動きを見せていた。
恐れる事無く村上軍に戦いを挑む野犬たちの姿は、毛皮を身にまとった武士のようであった。
やがて野犬たちは侵入に成功し、次から次へと城内へとなだれ込んで行った。
野犬の群れの侵入に気付いた村上軍の軍勢は、突然の出来事により混乱し始めていた。
野犬の威嚇によって恐怖の余りにその場に立ちすくむ者や、野犬の群れに襲われて負傷する者などが現れ、村上軍の士気は大幅に低下。
村上軍は壊滅寸前の状態にまで陥っていた。
崇冬
「まことに頼もしい奴らじゃのう。後は我々が仕上げに参りましょうぞ。」
崇冬は野犬たちの活躍を見て興奮した様子であった。
崇数
「うむ、ようやった崇冬よ。それでは全軍突撃を命令する。このまま押し切って長継を討ち取るのじゃ。」
崇数は姿勢を正し、全ての軍勢たちにそう号令をかけようとしていた。
その直後、三の丸を超えた祐藤と義道らの軍勢が二の丸へと到着した。
崇数の姿を見つけた義道は大声で叫んだ。
義道
「おいおい、我らを抜きで大将様とやり合うとはちと寂しいのではござらんか。」
義道は羨ましそうな表情をして言った。
志太軍の武将全員が二の丸に集まっている事を確認した祐藤が続いて口を開いた。
祐藤
「どうやらこれで全員揃ったようじゃな。目指すは長継殿の首ただ一つ。全軍で突撃するのじゃ。」
祐藤は勇ましい表情を浮かべていた。
これにより志太軍は全軍が集結。
志太軍による一斉攻撃が間もなく始まろうとしていた。





