78.村上城攻め(18)
崇数と義道らの軍勢は本丸への攻撃を開始。
辺りはたちまち両軍入り乱れての混戦となった。
本丸を残すのみとなった村上軍ではあったが依然として士気は高く、志太軍の侵入を許さない状態であった。
まさに背水の陣と言っても良いであろう。
崇数
「いやはや、それにしても追い詰められた兵は強いのう。」
崇数は、村上軍に感心した様子でつぶやいていた。
貞道
「村上家がこれほどにまで苦戦を強いられる相手とは思いもせんかったわい。」
貞道も続けてつぶやいていた。
崇数、貞道共に思い通りに兵が進まない事に苛立ちの表情が見え始めた。
志太軍と村上軍による一進一退の攻防はなおも続き、戦いの長期化が予測されたかのように思えた。
が、次の瞬間にけたたましい獣の鳴き声が辺りに響いた。
やがて、奥の方から獣の群れがこちらに向かって全速力で走ってくる姿が見えた。
その群れの中には崇冬と吾助、さらに幸龍丸がいた。
どうやらけたたましい鳴き声は、野犬の群れによるものであった。
野犬たちはすっかり崇冬らに懐いているようであり、共に井戸の中からの脱出をしていたようである。
崇冬はすぐさま崇数の元へ駆け寄ってひざまずいた。
崇冬
「父上、大変遅くなりまして申し訳ございませぬ。幸龍丸殿はご覧の通り、無事にございました。」
崇冬がそう言うと幸龍丸もまた崇数の元に駆け寄り、ひざまずいて一礼した。
幸龍丸
「杉康虎が嫡男、杉幸龍丸にございます。此度は拙者を救って頂き、感謝致します。」
幸龍丸は相変わらずの大人びた口調で崇数に礼を述べた。
崇数
「うむ、無事で何よりである。幸龍丸殿、今後は志太家で活躍される事を楽しみにしておりますぞ。」
幸龍丸
「ははっ。父である康虎に負けぬ働きをお見せできるよう、精進して参りますのでよろしくお願い申す。」
幸龍丸は迷いのない表情を崇数に見せてそう言った。
崇冬
「さてと、拙者たちも父上らと共に本丸を攻めるとするか。お前たち、準備は良いか。」
崇冬らの兵は、本丸へ向けて攻撃の準備を始めようとしていた。





