77.村上城攻め(17)
一方その頃、崇数と貞道ら軍勢の猛攻により二の丸まで侵入。
後は長継の構える本丸を残すのみとなっていた。
崇数
「いよいよ大詰めじゃな。しかし、長継は我らが思っておる以上に油断の出来ぬ男のようじゃ。心してかかるのじゃぞ。」
崇数はそう言って軍勢の気を引き締めて士気を保とうとしていた。
先程の会戦によって村上軍のほとんどの兵は志太軍に投降していた。
その中でも未だ長継に対して忠誠を固く誓う者たちが本丸の守りを固めている状態であった。
貞道
「それにしても本丸の兵どもの士気は、衰え知らずであるな。戦いが長引かなければ良いのじゃが…」
貞道は不安そうな表情を浮かべながら崇数に言った。
崇数
「長継への忠誠を誓う者は少なからずはおるようじゃが、奴らの団結力は尋常にあらず。自らの死を顧みずに戦う姿は地獄の鬼に匹敵する恐ろしさよのう。」
崇数は長継への過剰なまでの忠誠心が原動力となっている兵たちの存在に恐怖すら感じていた。
軍師で数々の戦の指揮を取って勝利に導いてきた百戦錬磨の武将であろうともそう感じるほどであり、その恐怖心は相当な物であったと言えよう。
貞道
「じゃが、このままおめおめと引き下がるというのはどうも我々らしくはありませぬな。」
崇数
「あぁ、そうじゃな。ここは何が何でも我らの意地というものを貫き通そうではないか。」
二人はお互いに覚悟を決めた表情で見つめ合っていた。
さらにそのやり取りを見ていた軍勢も次第に士気が上昇していき、好敵手を前に武者震いを始める兵が現れ始めた。
その様子に気付いた貞道も釣られて高揚し始めていた。
貞道
「崇数殿よ、どうも俺たちの兵は血相盛んな者が多いようじゃな。まことに頼もしい限りじゃ。」
崇数は、貞道の言葉に対して大きく頷いていた。
その直後に崇数は背筋をぴんと伸ばし、手にした刀を素早く抜いて一太刀本丸に向けて振りかざし叫んだ。
崇数
「よし、今こそお前たちの出番ぞ。これより本丸への攻撃を開始する。我らの力を長継に見せつけてやるのじゃ。」
崇数の号令により、軍勢は雄叫びを上げながら本丸目掛けて攻撃を開始した。





