68.村上城攻め(8)
村上軍による攻撃を受けて壊滅寸前であった崇数と貞道の軍勢に思いがけない救いの手が現れた。
崇数の嫡男で今回の村上城攻めで初陣を飾らんとする崇冬の援軍であった。
崇数
「崇冬、お前は祐藤様本隊の護衛に回っておるはずじゃろう。何故にここまで来たというのじゃ。」
崇数は、この場に崇冬がいるということに驚いている様子であった。
崇冬
「祐藤様からの命によって拙者が参った次第にございます。」
崇冬は堂々とした態度で答えた。
崇数
「では、祐藤様が直々に我らの軍勢に力添えするように命を受けたと申すのか。」
崇冬は今回の戦いが初陣であり、実戦での経験は全く無い。
その為、祐藤本隊の護衛を行うように祐藤本人が命令を下していた。
しかしその命令は撤回され、崇数らの軍勢への加勢を新たに命ぜられたというのだ。
崇数は、この朝令暮改とも言える祐藤の采配に対して理解できずにいた。
そこで貞道が口を開いた。
貞道
「どうやら祐藤様は崇冬殿のことを試しておったのじゃろう。軍師である崇数殿のご嫡男とあらば、たとえ初陣であったとしても任務を遂行できるであろうと考えておられたのではござらぬか。」
志太家の軍師を務める崇数の嫡男の崇冬は、どれほどの器量の持ち主であるかを試す為、祐藤はそのような命令を下したのでは無いかと貞道は考えていた。
崇数
「なるほどな、儂ら親子はそこまで期待されておるということか。まことに有難き話じゃ。そうとあらば、その期待には何が何でも応えねばならぬな。崇冬よ、気を引き締めて参るぞ。」
崇数は、ぴしりと背筋を伸ばし直してそう言った。





