51.米村山の戦い(8)
村上軍による志太軍本陣への攻撃を開始して数刻後、志太軍は村上軍に対して地獄式鉄砲を配備した鉄砲隊を前線に配備した。
祐藤
「よし、反撃開始じゃ。皆の者よ、本当の鉄砲というものを村上軍に教えてやるのじゃ。」
そう祐藤が言うと、鉄砲隊は一斉に砲撃を開始した。
細野での戦いにおいて凄まじい破壊力を誇った地獄式鉄砲が再び米村山において使用されたのである。
たちまち村上軍の布陣付近一面は火の海と化し、多くの兵が負傷するなど甚大な被害を受けた。
これに負けじと村上軍も鉄砲を持って応戦するも焼け石に水といった状態であった。
長継
「このままでは我が軍は全滅じゃ。かくなるうえは退却するしか無いようじゃな。全軍、退却せよ。」
長続は直ちに全軍退却の合図を出し、兵たちは村上城へ引き返し始めた。
その頃、志太軍の本陣を目指して単騎で進軍していた康虎がその様子を見ていた。
康虎
「どうやら長継様が退却の指示を出されたようじゃな。我が軍は圧倒的に不利な状況ではあるが、今の志太軍は油断しておるのでは無かろうか。これは逆に好機であるぞ。」
康虎の戦法。
それは全軍が村上軍を追い込むことに力を注いでいる状況であろう志太軍の空きを突いての奇襲だ。
しかし、志太軍の本陣が手薄であるか否かは現状では不明とされている。
それ故、危険を顧みぬ戦法であることは承知の上で康虎は決死の覚悟を決めていた。
村上軍の退却という状況を目の当たりにし、自身が背水の陣であるという状態が康虎をそうさせたのかも知れない。
康虎
「長継様、待っていてくだされ。必ずや祐藤の首を手土産に持ち帰ってみせましょうぞ。」
康虎は更に馬の速度を早めて志太軍の本陣を目指して進軍を続けた。





