奪還作戦
「分かった……。だが、どうする気だ? 整備されて、日当たりのいい滑走路、巣になりそうな倉庫が用意された夢の家だ。奴らが簡単に手放すと思うか?」
遠くから撮られたであろう写真には多くの怪物の姿が捉えられていて、全部を一度に相手をするのは不可能に近い。
「簡潔に説明するならば、基地内部まで潜り込み、外へと繋がる隔壁を閉じる。そして、内部の怪物共を徐々に殲滅しながら、ハイヴを全て破壊する」
とんでもなく穴だらけの作戦にも聞こえるが、それは追々詰めていくのだろう。ハイヴを破壊してしまわなければ、奴らはほぼ無尽蔵に増える。
「どれくらいの人数で行くんだ? 組合の軍人共も連れて行くんだろ?」
アレクセイの部下で、地下の治安活動からランナーの真似事をしている根っからの戦闘集団。
基地の全容や、多くの事は勝手知りたる彼らがいないとどうにもならない。ランナーは言わば彼らを軍の基地内部に届けて、怪物共を殺すことが任務なのだろう。
「技術者が二人と軍の隊員を十六人、他にはランナーをお前を含めて、六人は連れていく。あとは向こうで偵察しているのが二人いる」
基地奪還に合わせて二十四人。少なすぎるだろうと思うかもしれないが、大勢で移動すれば、無駄に怪物共を引き寄せる可能性が高まり、尚且つこの作戦が失敗した時の被害が大きすぎる。
「連れていく人材の手配は?」
「済んでいる。ランナーは出来るだけ遠くまで散策できる技量を持ち、奴らの生態を知っている人間を集めた。こちらが出す人間も、頭だけでなく戦える技術者だ」
外に出てしまえば、非戦闘員などという言い訳が奴らには通用しない。
「装備は支給か、それとも各自で揃えるのか?」
「ランナー達は各自で揃えたほうがいいだろう。無論その時に必要な弾はこちらが持つ」
慣れない支給の装備を使ったのが原因で死にました、は笑いごとではない。それにランナーは自分で、または鍛冶屋に頼んでオリジナルの改造を施した物を使っている人間が多い。俺もエリザに使いやすいように改造して貰ったりしている。
「作戦の詳細はこの書類を読んでおいてくれ。それと、買う時にはこのカードを渡せ。請求はこちらに来るようになっている」
コンコンとドアを叩く音。振り返ればそこには俺と同じく軽装でありながら、銃を腰に差した男のランナー。
「一人一人面接というか、説明してるのか?」
「当たり前だ。ほら、さっさと出ていけ。予定が詰まってるんだ」
なすが儘に外へと摘み出され、作戦に向けてアレクセイから渡されたカードと書類の束を持って、バリケードの入り口近くの露店通りへと向かう。
「取りあえず当面の食料と、火器系統を見るか。掘り出し物があればラッキーだな」
今まで自分では高くて買えなかった装備を思い浮かべて、軽くなった足で向かう。