組合と元同僚
この地下には地上から入る様々な入り口があるが、現状この地下街に入ることが確か三つ。昨日俺が入ってきた南と、東、そして更に地下へと続く道が一つ。
今俺が向かっているのは、東側の出入り口。南側と違って換金場などはないが、一つ特殊な施設がある。
でかでかと大きく赤いスプレーで書かれたマーク。Rという文字を丸く囲んだ簡単なこのマークは、俺達ランナーを表したもの。地上でのセーフハウスや、何か重要な施設などにはよく描かれていることが多い。
西部劇に出てきそうな両開きの扉を開けて中に入り、広がるのは突き当りのトンネルの一つを全て使った集会場。鼻を衝く汗と血の混じり合った臭い。
中で話し合うのは男も女も関係なく武器を携え、目には剣呑な光が燃えている人間から、酒を飲んでバカ騒ぎる連中と多種多様。これが全て俺と一緒のランナーと呼ばれる人間。
「おお、ジンじゃねえか。昨日帰ってきてるって聞いてたんだが、遅い出勤だな」
「お前の暑苦しい顔を見る前に、花を愛でてきたんだよ」
右目を斜めに走る傷跡に、光を跳ね返すスキンヘッド。四角い顔の受付の男は「顔色的には愛でられたんだろ」と大笑いしている。
「まあ、馬鹿な話はいつでも出来る。依頼通り調べてきたが、お陰様であのゴリラ擬きと戦うことになったんだ。色着けないと承知しねえぞ」
「チャージャーの異核も組合に下ろしてくれてたら付けてやれたんだが、しっぽり対価にあげてきたんだろ? あんな美人な女とヤれるんだ。足下見られないだけでもありがたいと思え」
そんな下世話な会話を交えつつ、バックバックから取り出した数枚の写真と地図。受付の男はそれをしばらく眺めながら、出した情報と組合が持っている情報を照らし合わせる。
「―――あとこことここは通れなくなってる。ここはビルの間を伝っていけばもしかしたらいけるかもしれない」
「ふむ、少々マズいことになってるなぁ……。ジン、色は付けてやるからちょっとこい。お前にも参加してもらいたい仕事がある」
顎で裏に続くドアを示す男に思わず苦虫を噛んだように顔をしかめてしまう。
「色付けてくれなんて言わないから、行きたくねえよハゲ」
「ハゲじゃねえ、剃ってんだ。おら、さっさと来い。そんだけの範囲を自由に動き回れる人間を遊ばせることが出来るほど、この地下街は裕福じゃねえんだ」
俺が渡したのは市内全域の地図。その地図いっぱいに書かれた様々な情報は、自らの足で集めてきた物。
「手を抜けばよかったなぁ……」
愚痴をハゲの受付にぶつけながらも大人しく従業員でしか入れない扉をくぐっていく。
「アレクセイの旦那、ジンを連れてきました」
何処から持ってきたのか、社長が座るような椅子に腰かけて、ふんぞり返るのは服を押し上げる筋肉の塊を持つ男。オールバックに固められた金髪に鷹のような眼光。
この地下街を牛耳っていると言っても過言ではない男。元同僚のアレクセイ。