07
「それで…普通…小説とかで異世界に飛ばされた場合…
神様の加護とか与えられるよね…」
そう、ぼくはただの平凡な新入社員…
そのままの力で、異世界に放り出されても、生活さえままならないのでは…
前の世界では職もアパートもあったんだけど、それこそこいつらといっしょにいられるかどうか…
今は異世界のホームレスにすぎないのだから…
「ちゃんとぼくたちが与えたよ…」
クロが頭の上に乗って、僕の目の前にウィンドウを開く…
僕の能力が表示される…
笛吹史人 LV1
JOB 猫の世話係
HP10/MP5
SKILL 猫体術初級 LV1
猫魔法初級 LV1
猫料理 LV1
猫袋 LV1
猫医者 LV1
なでなで LV1
「ぼくたちが、一個ずつ与えたんだよ…
ちなみにぼくはなでなでの加護だよ。
なでなでがすごく上手くなるの。
いいでしょ」
トラが得意そうに尻尾を左右に振る…
なんか、使えねえって感じだ…
「まあ、普通の人は1つか2つしかSKILLはないの…
史人は6個もあるのよ」
シロが落ち込む僕をなぐさめるように言う…
まあ、チート能力なんていい話あるわけないにしても、全部猫の世話スキルみたいな…
それも全部初級だし…
ぼくはためいきをつく…
こいつらにここに連れてこられたのは、僕のせいかもしれないし…
たしかにこいつらと離れるのは寂しいなって思ったのは事実…
そして、前の世界に絶望していたのも事実…
仕事は面白くないし、彼女もいない…
ずっと、こんなことが続くのかって思っていた…
でも、こいつらを拾ったことで生きることが楽しくなった…
なにもしてくれないけど、こいつらと一緒にいるだけで…
しかたない…ぼくはこれを望んだのかもしれない…
そして、こいつらも僕を望んでくれた…
それで十分じゃないか。
ぼくは目を細めて、猫たちを見る…
こいつらと一緒ならなんとかなる…
頭の上のクロを胸におろして抱きしめる…
「わかったよ…」
とりあえず、あの神殿に行こう…
ぼくは歩き出す…
そして、そのあとを猫たちがついてくる…
ぼくはクロを抱き上げたまま空を見上げる…
僕の異世界生活がはじまった。