06
やっと、身体が動くようになる…
声も出るみたいだ…
ぼくは立ち上がる…
見渡す限りの草原…
遠くに白い神殿のような建物が建っている…
日本の田園風景じゃない…
かといって…外国でもない…
直感的に地球ではないって感じてしまう…
空気が違うような感じだ…
そういえば、異世界転移とか言ってた…
足元には丸い目で僕を見上げるトラ…
「よかったね。成功みたいだよ」
「成功って…」
「ちゃんと異世界に来たよ…
これでずっと一緒だよ…」
僕の足に身体を擦り付けるトラ…
「ここはどこなんだ…」
「異世界よ…」
シロが毛づくろいをしながら答える…
「だから、なんで、こんなところに…」
「史人と僕たちが望んだからだよ」
ブチが足元から丸い目で僕を見上げる・
「そうそう、離れたくないって、わたしたちも史人もね」
ミケがアクビをする。
「ぼくはそんなこと…」
「でも、ずっとわたしたちといれたらなっておもったしょ」
キジも足元で寝そべっている。
「それは…」
そう、こいつらが貰われていくってきまったら、急に…
こいつらといっしょにいれたらなと思った…
もっと、ちゃんとしたところに住んで、みんな引き取れたらなって…
でも、それは夢…
現実問題…1匹…ちょっと無理しても2匹が精一杯…
それに、家飼いなら、運動もできないし、かわいそうだから…
「それから、これが重要なんだ。
僕たちが史人といっしょにいたかった…
だから、ここに来たんだ…
僕たちの魔法でね…」
クロが僕の肩によじ登り、顔に頬を擦り付ける…
「わかった…
でも、ぼくはここにいるわけにはいかないんだ…
仕事もあるし、元の世界に戻してくれ。
ここにこれたんならできるだろ…」
「いや~それは無理だよ…
異世界にきたんだよ。どれくらいの魔力がいると思う?
もう、ぼくたち…そんな魔力残ってないよ…
6匹の魔力を全部つかったからね…」
「また、魔力を貯めれば」
猫たちは左右に首を振る…
「そうだね…それだけの魔力を貯めようと思うと…100年くらいかかるかな」
「ほんとに…」
「うん…」
ぼくたちはこの世界で生きていくしかない…
ぼくはこの理不尽な現実を受け入れるしかないのだった…