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すこし歩いてから、中でも大きい建物にはいる。
なぜかわからないけど、こっちの文字も読める。
文字は日本語じゃないんだけど、意味が頭の中に浮かび上がる。
入口の看板には『取引所』と書いてある。
そういえば、言葉も不思議な感じだ。
日本語と違うのはわかるんだけど、なぜかわかるし、話せる。
異世界転生のお約束みたいなものだろうか?
確かに言葉がわからないといくらチートでも、英雄になんてなれない。
でも、これは猫たちの物語だ。
猫たちにとって都合のいいことはいくら起きても不思議じゃない。
シャールと取引所に入っていく。
「シャール様、街道の災厄でも退治しましたか?
災厄級の素材なら高く買取りましょう」
シャールにいかにも商人って男が、手をこすりながら近寄ってくる。
「いや、今日はこちらの神官さまの付き添いだ。
商人のチュールはいるか」
「素材でしたら私どもで…」
胡散臭い商人が食い下がる。
「おまえは信用ならん。神官様の大事な取引はチュールにしか任せられない」
「チュールならあっちですよ」
残念そうに商人が指差す。
シャールに連れられて、奥に入っていく。
むしろの上に並べられる、いろいろなもの。
野菜、肉、魚、毛皮、鉱物…
取引所の中は市場の喧騒だ。
その中でも、賑わっている一角にシャールは向かう。
「チュール。あいかわらず忙しそうだな」
「あっ、シャール様」
商人たちに囲まれた金髪の少年がこっちを見る。
商人らしく人懐っこい笑顔だ。
でも、目は笑っていない気がする。
「こちらの方は見かけない顔ですが…」
「神官さまだ。素材を見てもらいたいとのことだ。
見てもらえるか?」
「神官様って、ニャニャー様の…ですか?」
「そのとおりだ。しかし今は詳しいことは話せないんだ。
口の堅いお前なら任せられると思ってな」
「ええ、儲けになるなら、死んでも秘密は守ります。
商売の神様、ニャニャー様のためなら、特にね」
そういえば、神殿にあった招き猫。
商売の神様に見えないこともない。それにミーニャ教は自由な宗教と聞いている。
商人には、その教えがしっくりくるのだろう。
「神官さま。わたしはチュールと申します。
ここ、バーミリオンの一介の商人です」
大仰に帽子を取って礼をする。
「ぼくはアヤト。神官っていうとすこし違うんだけど…
この国に来て間もないので、いろいろ教えて欲しいんだ」
「ぼくはクロにゃ」
クロも挨拶する。でも、クロでさえ人間姿では語尾にニャと付く。
なにかのお約束か。
それに、子供らしく舌足らずな喋り方となる。
「わたしでよろしければ、お力になりましょう。
シャール様のご紹介でもありますし、なんでもご相談ください」
「アヤト、とりあえずお金が必要だから素材を売ろう」
クロが僕にテレパシーで話してくる。
ぼくはクロの言うとおりに、チュールに伝える。
「とりあえず、素材を見て欲しいんだ」




