02
と…知らないところで、わけもわからないことが進行しているとき、ぼくは家で猫の世話をしている。
「ごはん、ごはん」
「トイレが汚いわ。ちゃんと掃除してね」
「なでて、なでて」
「遊んでよ。ねぇ」
そう、ぼくはこいつらに異世界に連れてこられた。
異世界転生…
そう、現実世界で不幸だった主人公が異世界に召喚されてチートな力で成り上がっていく。
そんなことはあるわけない!
チートな能力なんて与えられず、何をしているのかっていうと、
現実世界と変わらず猫の世話をしているだけ。
そうあの日。
ゴミ捨て場からミーミーという鳴き声が聞こえた。
街灯に青く照らされたダンボールを開けると、6匹の子猫たちがすがるようにまあるい目で僕を見上げた。
捨て猫だな。
かわいそうに。
でも、6匹なんて飼えないよ。
ごめんね。
悲しい気持ちで猫たちを見る。
その中の黒いのが、ダンボールの縁に両手をかけて、ダンボールからこぼれおちる。
ミーミーと鳴きながら僕の足元まで尻尾をピンと立てて歩いてくる。
ぼくはクロネコを両手の平で包み込むように抱き上げる。
その間にも、他の猫たちがダンボールから次々と脱出に成功して、僕のスニーカーに体を擦り付ける。
仕方ないか。
まあ、みんなかわいいし猫ブームだから里親くらい見つかるか。
なんとかなるよ。
アパートは古いだけにペット禁止じゃないし。
ぼくは猫たちをダンボールに戻し、ダンボールを持ち上げて家に帰った。
これが、こいつらとの出会い。
そして、僕の間違いのはじまりだった。