01 プロローグ
「はいれ!」
「はっ…軍師どの」
鉄のドアがあいて、みすぼらしい男が兵士に引き立てられてくる。
「貴様が山賊団龍の旅団の頭、赤獅子のシリュウか?」
ボロボロの服に白髪まじりの長髪。
たしかに身体つきは戦士といってもいいかもしれない。
しかし…その目には生気がなく、血走っている。
「まちがいありません。
こいつと戦った者に見分させています」
軍師と名乗った男は、手配書と男を見比べる。
「しかし、我々の軍が手こずったという、龍の旅団の頭領をどうやって捉えたのだ。
将軍の手柄か?
たしかに龍の旅団といえば、頭目が英雄を名乗って、我々の小隊が幾度も退けられたのではなかったかな」
「いえ、街の道で貧民たちに紛れてうずくまっておりました」
「そうか…われわれの軍に敗れて、身をひそめていたところを…というわけか」
「いや、そうではない!」
大きな声、そして鎧をまとった大きな男が入ってくる。
「将軍!」
「軍師よ。こいつは間違いなく赤獅子だ。
なあ、シリュウよ」
シリュウと呼ばれた男は力なく顔をあげる。
「この前の戦い。あっぱれじゃったな。
わしのすぐそばまで食い込んできたんじゃからな。
また、お主とやりあいたいものぞ!
山賊、海賊…ほとんどはザコじゃが。
龍の旅団はやっかいな盗賊団じゃったな。
今、龍の旅団はどうしている?」
「……」
「おまえを追い出すくらいじゃから、さぞかし強い男に率いられているんじゃろ。
もしよければ、わしの軍隊にはいらないか?力を貸してくれないか?
まあ、おまえには窮屈かもしれないが、軍隊とかいうのも悪いことばかりじゃない」
「ニャニャー」
「ん???」
「ニャニャーだ!
龍の旅団は…全滅した」
男は震えだす…
「ニャニャーというと?」
「たしかミーニャ教の神…だったとおもいますが」
軍師が助け舟を出す。
「聖バーミリオン王国の神聖騎士たちか…」
「いや、ニャニャーだ。
我々の旅団を一瞬で…
神官が止めなければ、俺たちは全員…」
何を思い出したのか、男の震えは止まらない。
「神聖騎士たちは、特殊な魔法を使う。
その一種だろうが、バーミリオンを侮らない方がいいということじゃな。
しかし、もう、シリュウは使えんな」
「おまえたちもニャニャーには逆らうな!
絶対にだ!帝国であろうと滅ぼされてしまう。
あいつらはそういう存在だ。
おまえたちも、つまらない領土拡張とかやっている限り。
それは避けられないんだ。
ハハ…ハハハハハ…」
「狂っている。もう、こいつは戦力にはならない。
しかたない。こいつはお尋ね者として処理しよう。
我々の法律に照らしてな。
連れて行け!」
軍師がそう告げると、兵士たちはシリュウをドアの外に連れて行った。