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きみがわらってくれるなら  作者: カノウラン
4/9

カレの言い分 3

「ちょっとステージ、見に行ってみる?」

「……うん」


誘えば、従順についてくる。

とくに、嫌そうな顔も、うれしそうな顔もしない。


(たく。どっちなんだよ、その反応は)


また、マサキはぼりぼりと頭を掻いた。

こんなことなら、たまにはと、デートの約束なんかしないで、家でベースの練習をしていた方がよほど有意義だったかもしれない。

会いたいなら会いたいと言ってくるだろう、とおもっていたら、半月もデートをしていなかった。

会って、顔を見ると、あの、告白してきたときの真っ赤な顔をおもいだす。

あれはかわいかったな、とこころがいっしゅん、温かくもなった。

まあ、顔のつくりで言えば、ごくふつう。

振り返るほどの美人でも、手放すことが惜しいほどのスタイルでもない。

ごく、ごく、ふつうだ。

いっしょにいると、マサキの趣味って地味、さすがベーシスト、とか仲間の笑いを取れるほどだった。

そんなときは、すこしだけ誇らしいきもちを味わったけれど。

彼女のかわいい顔は、自分だけしか知らないのだ、と──


「お、っきい……!」


ぽっかりと口を開けて、サヤカは目の前に出現した野外ステージを見ている。


「多いときで、ここ、三千人くらいは集まってたんじゃねーかな、ひとが」

「三千人……っ」

「けど、スタジアムでのライブは、一万人規模だから。俺たちの夢は、そっちでやるほう」

「そうなんだ」

「ステージ、ちょっと、のぼってみる?」

「うん」


ステージ下の芝生を踏みしめてひろばを突っ切ると、マサキは一メートルちょっとあるステージの上によじ登った。

サヤカも手だけはかけたが、よじ登るのは無理だと判断したらしく、ステージ横の階段へとまわり込む。

ステージのふちに腰かけたマサキのそばに、サヤカも座った。


「あそこの木、ぜんぶ桜」

「へえ……」

「一八日じゃ、まだ咲かないかな」

「……満開は、むずかしいかも」

「そうだな。ちぇー、咲いてたら、見晴らしいいだろうに」


マサキは、ステージの上に仰向けになる。

両腕は、頭の上に投げ出して。

そそぐ日差しは、春めいてやわらかい。

アンプを通した爆音も、三千人の歓声も、考えられないほどに静かな、午後の公園。

とくに、話しかけてくる声もない……

とろとろとまぶたが重くなるのを、マサキは止められなかった。



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