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宣伝はバッチリ

 あうあう

 あうあう

 あうっ


「マリリンさん、今日も素晴らしかったよ」 ギースの名をかたる勇者グレイがマリリンの胸に甘える。

 マリリンはグレイの頭を撫でながら声をかける。

「ギースさまもお元気になられたようですね」

「うん、マリリンさんのお陰だよ」

「ところでギースさま、男性街の改装が、明日から本格化致しますの。10日後にはナイトクラブでオープンイベントがございますから、よろしければ足をお運びくださいませ」

「そうしたイベントには、どんな服装で出向くべきなのだろう」

「一般的にはタキシードでよろしいのではないかと」

 困るグレイ。金はあるがタキシードとやらがどこで買えるのかがわからない。

「その、タキシードというのは、どこで買うことができるのかい?」

「よろしければ、この後ご案内いたしましょうか?」

「いいのかい」

「ええ、私もこれで今日はお仕事終了ですから」

 棚からボタモチのマリリンさんとのアフター。

 グレイはいそいそと着替え、待合室にてマリリンさんを待つ。

「お待たせしましたわ」

 今日のマリリンさんも、相変わらずエロス満開。なんで普通のブラウスとセミロングのフレアスカートでここまでエロくなれるのだろう。

 と、2回目の賢者タイムもすっ飛んでしまうグレイ。

「それじゃ、ギースさま、行きましょ」

 笑顔でグレイの左腕に自身の腕を絡め、胸を押し付けながらグレイを誘うマリリンさん。

 頭がぼーっとなってしまったグレイ。

 マリリンさんに押し出されるように、グレイは歩を進めた。

 マリリンさんが案内したのは、中央広場から男性街に移転してきた男性服の専門店。

「ご主人、この方がタキシード一式をお求めよ」

「これはこれはマリリンさん、いつもご贔屓ありがとうございます」

 するとマリリンは店の主人の耳元で囁いた。

「モヒカン価格、覚えてます? あれでお願いね」

 マリリンさんは妖艶なほほ笑みを浮かべ、ご主人も邪悪な笑顔を浮かべる。

「それじゃギースさま、私はこれで」

「ああ、マリリンさんありがとう。10日後は必ず顔を出すよ」

 こうして、グレイはタキシード一式を、相場の2倍の金額で手に入れた。


 あうあう

 あうあう

 あうっ


「マルゲリータ姐さん、今日も素晴らしかった」 ベルルデウスの名を騙る魔王が 床に突っ伏したまま、マルゲリータに話しかける。

「キャメルクラッチはお気に召したかい、ベルさん」

「ああ、最高だった」

「ところでベルさん、男性街の改装が、明日から本格化するんだよ。10日後にはナイトクラブでオープンイベントがあるから、ぜひとも来てくれないかな」

 マルゲリータは続ける。

「ベルさんがオススメしてくれた、黒のワンピースドレスが、ナイトクラブと新しくオープンする浴場の制服に採用されたんだよ」

「マジか」

 うつ伏せのまま賢者タイムを過ごしていた魔王は、その一言で仰向けになる。そうしないと下腹部が痛い。

「それでね、ベルさんにはこないだ助けてもらったから、プレゼントを用意したんだ。良かったら待合室で待っててくれるかい」

「わかった、すぐに着替える」

 魔王はいそいそと着替え、いつもの麦わら帽子をかぶって待合室でマルゲリータを待つ。

 今日のマルゲリータは、白のブラウスに黒のベスト、それに黒のタイトスカート。

「待たせたね、これはナイトクラブゲーム部門の制服さ、どうだい?」

 これはエロい、何だそのけしからん胸の谷間は、何だそのけしからんバックスリットは。

 魔王はリセットされる。

「姐さん、今日は延長できないかい?」

「ごめんよ、今日はこの後、仕事の打ち合わせなんだ。他の娘じゃ嫌だろ」

 3回目余裕の魔王。しかし魔王は既にマルゲリータ以外には考えられない。なので我慢することにする。

「ところで、プレゼントはこれなんだ。ベルさんに似合うと思うよ」

 それはブラックスーツ一式。

「いいのか、こんな高そうなもん」

「命を救ってもらったんだ、それくらい安いもんさ。良かったらそれを着て、オープンイベントに来てくれると嬉しい」

 最後の「嬉しい」で、ちょっと頬を赤らめてしまったマルゲリータ。だが、魔王は気づかない。

「わかった姐さん。10日後だな。かならず来るよ」

 そしてマルゲリータは魔王の左腕を取り、身体をピッタリと寄せながら入り口まで魔王を送る。

「またね、ベルさん」

 胸元で小さく手を振るマルゲリータ。

「ああ、また来る」

 それに返事を返し、町外れに歩いて行く魔王。

「あたしらしくもないね」

 独り言を言いながら、マルゲリータは盗賊ギルドに向かう。


「キャティ、よろしくにゃ」

「キャティ、よろしくお願いします」

 ミャティとラブラも無事にワーランに到着。冒険者ギルドでエリスたちの家を教えてもらい、挨拶に来た。

 2人を出迎える宝石箱の5人。

 あれ、1人多いかな。

 するとミャティが後ろに隠れていた、一回り小さい女の子の手を取り、前に押し出しながら紹介する。

「この子はラヴィ、獣人族うさぎ種の娘にゃ。給仕代わりに連れてきたにゃ」

「ラヴィなの、よろしくなの」

 長い耳をぴんと張りながら挨拶をするうさぎ種の娘。野うさぎっぽい褐色の毛が可愛らしい。

「料理屋だから、人手は多いほうがいいにゃ。利益が出るまでは人参でもかじっていればいいにゃ」

 酷いことを言うキャティ。

「それじゃ、案内がてら、お店にみんなで行きましょう」

 エリスの号令に従う5人。

 現在交わる町(クロスタウン)に出店している店舗は6店。

 百合の庭園側から近い側、街道を挟んだ北側にハンナとケンのケーキショップ。

 その隣は、オープンデッキを挟んでアイフルとクレディアのティーショップ。

 更に馬車数台分のスペースを開けて、女性用のブティックが既にエリスの融資で開店している。

 南側はシンとノンナの中華まんじゅう店がケーキショップの向かいに建設された。

 そしてライブハウス。ライブハウスはかなり大きく作られており、裏には馬車置き場も広く取られている。

 その隣では軽食もとれるカフェが建設されている。この店はエリス達がワーランで時々食事をしていたお気に入り。こちらもエリスの融資でオープン済。

 そしてその隣が蒸し料理店、ミャティたちの店となる。既に建設済みで、主たちを迎えている状態。

 キャティが入り口の鍵を開け、3人に入店を促した。

 中は6人ほど座れる丸テーブルが3つに、4人テーブルが2つ、2人テーブルが4つ。

 その奥には厨房。

 クレア-フリントブランドの蒸し器が6台並び、それ以外にコンロが3台、窯が1つ。調理台も広く取られている。

 フラウがそれぞれを説明する。

「蒸し料理は同時に餡やソースを作る必要がありますから、コンロも多めにしています。それに、窯ですぐ焼けるクレープを付け合わせにすれば、お客さんもお腹いっぱい食べられると思いますわ」

「メニューはフラウに相談してみるといいわ」

 エリスのアドバイスに頷くミャティ、ラブラ、ラヴィ。

 その奥は居住空間。

「ハンナとケンの部屋を参考にしたから、ちょうど良かったにゃ」

 キッチン、リビング、洗面所の他に、部屋が3部屋。1人1室ずつが確保された。

 まさか個室が手に入ると思っていなかった3人は驚きながらも喜ぶ。

「それじゃ、家具と制服を買いに行くにゃよ。フラウ、付き合ってほしいにゃ」

 キャティが全て面倒を見るらしい。このネコ娘も億を超える資産を持っているので、それくらいは余裕だろう。

 ここで5人は一旦解散となり、キャティとフラウはワーラン中心街へ買物、エリスは盗賊ギルド、レーヴェとクレアは、アイフルの店でケーキセットを楽しんでから、帰宅する。


「入場料収入は全て商人ギルドのものとし、盗賊ギルドは所属芸人達へ支払われるギャラの10%を天引き、これでどうですか?」

 エリスが交渉している相手はバルティス。横で話を聞いているのはマルゲリータ、マリリン、マシェリ。

「それじゃ少なくねえか、顧問さんよ」

 いつのまにか盗賊ギルドの顧問にされていたエリス。

「商人ギルドの収入に盗賊ギルドが手を出すのは正直まずいと思います。それに、盗賊ギルドは浴場2つとナイトクラブの経営権を握ったのよ、お忘れですか、おじさま」

 バルティスがくっくっくと笑いながらエリスに言う。

「そうだな、その通りだエリス、お前は盗賊ギルドにほんとに良くしてくれている。いっそのこと、このまま俺の娘になって、ここを継いでみるか?」

「お断りします」

「つれないな」

「おじさま、そんなことしたら冒険者ギルドと工房ギルドが敵に回りますわよ」

「いいんだよ、そっちもフラウとクレアが継げば問題なしだ」

「おじさま達が亡くなってから考えますね」

 話がそれてしまったのを、もう一度エリスは修正する。

「で、店名を決める必要がありますが、皆さん何かアイデアはありますか」

 するとマルゲリータが手を挙げた。

「浴場のイメージも変えたいので、いっその事ナイトクラブをご主人様の隠れ家マスターズハイダウェイにして、これまでのお風呂は一般向けに健康天国ヘルシーパラダイス、いいことの風呂を伊達者の楽園ダンディーズシャングリラ、そして男性街は紳士街ジェントルメンストリート、これでどうだい?」

 へえ、いいわね。

「私はいいと思うわ、他の皆は?」

 バルティスも感心している。他の2人はあらかじめアイデアを聞いていたようで、賛成を示すように頷いている。

「念のため商人ギルドのマリアには事前に報告しておくわね。OKだったら、その足でフリントおじさまに看板作成とチラシの準備をお願いしてくるわ」

「ああ、頼むわ、顧問殿」

「刺すわよおじさま」

「ああ、怖い怖い」

 両手を挙げて降参ポーズのバルティス。食えないオヤジである。

「それじゃ、行ってきますね」

 4人に見送られ、エリスは商人ギルドへと向かった。


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