博徒です
「ふっふっふ。また私の総取りね」
「うーむ、これは奥が深いな」
「一攫千金はもう諦めますわ」
「おかしいなあ、6分の1の確率のはずなのになあ」
「ふぎゃー! 次も1にするにゃ!」
エリスが4人に教えているのは、、究極の賭博といわれる「手本引」を簡略化したもの。
簡単に言うと、親が選んだ数字を子が当てるゲーム。
ルールは次の通り。
・それぞれが、1から6までの数字が書かれた手板を持つ。
・親は、それとは別に「見せ板」を持つ。これにも1から6までの数字が書かれている。
・親は、まず自分の前に、見せ板を1から6の順番で並べる。
・親は、総賭金を宣言し、所定の場所に置く。
これで準備完了。
・親は、自分の手板から1枚選び、自分の前に伏せ、専用のハンカチーフで隠す。ハンカチーフで隠すのは、いわゆるガンつけ(目印)対策。
・子は、自分の手板から3枚までを選び、やはり伏せて自分の前に賭金と場所代と共に置く。1枚なら6倍、2枚なら3倍、3枚なら2倍の配当となる。
・親は見せ板から自分の選んだ数字を取り、見せ板のいちばん右側に詰めて置く。続けて、自分の手板を開き、見せ板と手板の数字が一致していることを示す。これは、親が無作為で数字を選ぶ行為を防止するため。親は必ず自分で考えて数字を選ばなければならない。見せ板は親の選択履歴表示も兼ねる。見せ板と手板の数字が一致しなかった時は、親の一人負け。
・親の見せ板と一致する数字があるときだけ、子はその数字のみ手板を広げる。他は隠したままでよい。
・当たりがあった場合、親は子に配当を支払い、当たりのない子は、親に賭金を没収される。
※賭場では、子当たりの配当に対してのみ10%のゲーム料を賭場に納める。親勝ちの場合は不要。これにより、親の有利さを高める。
・親は原則6ゲーム1セット。これを繰り返す。2セットめ以降は、親は各セット開始時に、これで親を降りるどうか宣言しなければならない。これは、親の勝ち逃げ防止。このルールのため、大勝の親が下りると宣言したセット(6ゲーム)は、大荒れになることが多い。ただし、最初に宣言した総賭金がなくなった場合、途中でも親は終了となる。
このゲームのポイントは、子が親の癖を読むことにある。そして読んでくるであろう子の予想を外しに行く親。
親は同じ数字を2回3回と続けて選んでも構わない。このときは見せ板の移動をしないだけ。
このゲームで親が有利なのは「場所代」の存在。
これは予め決められた金額を、賭金とは別に子が置いておくもの。
普段は置きっぱなしだが、次の場合に親が場所代を回収できる。
1つめは「全はずれ」
これは、子の誰もが親の目を当てられなかったとき。このとき親は、賭金と共に場所代も回収できる。
2つめは「悪友」
これは、1枚賭けで誰も当たっておらず、2枚賭け、3枚賭けで当たりが出た場合に発生する。
2枚賭けが3人以上、3枚賭けが2人以上いた場合、本来はずれならば公開しなくてもいい子の手札を、該当者は公開しなければならない。そして、当たった者と補完する組み合わせの子がいた場合、当たりは無効となり、親は該当者の場代を回収できる。例えば、親の目が「1」で、当たった子の目が「1・2・3」のとき、他に「4・5・6」という組み合わせの子がいた場合、当たりは無効となり、「1・2・3」と「4・5・6」の子は、賭金と場所代を回収される。
これは「全はずれ」妨害に対する措置。
このルールのおかげで、子の間にも牽制が発生する。これも醍醐味。
エリスはこのゲームを、「ワーランナンバーズ」と名づけた。
もう1つは、紅白2色のサイコロ2つを使った、「賽本引」と「ルーレット」を合わせたようなゲーム。
このゲームでは親子はなく、ディーラーを店が務める。
・ディーラーが赤と白の2つのサイコロを伏せた壺の中で、客に見えないように振る。
・客は、まず赤のサイコロの数字が何か、3つまでを選ぶことができる。1つなら6倍、2つなら3倍、3つなら2倍の配当。
・さらに、白のサイコロで、赤の目と同じ枚数だけの数字を選ぶことができる。・赤1つ、白1つで36倍、赤2つ、白1つで18倍など。赤3つ、白3つなら4倍。
・最後にディーラーは壺を開け、目を公開し、客が当たった分の配当を支払い、外れ分は回収する。
・子の当たり分10%は、ゲーム料として賭場に納める。
エリスはこのゲームを、「ワーランダイス」と名づけた。
こうしてエリス-エージは、客同士対戦型のゲームと、ディーラー型のゲーム2つを用意する。
ディーラー型の「ダイス」は運がほとんどなので、とっつきやすく、客も遊びやすい。
ディープなのは対戦型の「ナンバーズ」の方。これは必ずはまるやつが出てくる。エリスはゲーム料からどれだけのマージンをいただくか考え、ほくそ笑む。
「ナンバーズ」の親では、見事に4人の癖が出た。
レーヴェはさすがというべきか、次の手を読ませない。
フラウは徐々に数字を大きくする癖がある。
クレアは偶数から奇数、奇数から偶数に飛ぶ癖がある。また、2回連続同目が決まると、次のセットにもそれを仕掛ける傾向がある。
キャティは問題外。自分が張る手を事前に口走るなど、全身からヒントを噴き出してしまっている。
一通りゲームを行った後、それぞれにエリスは癖を教えてやる。
なぜなら、これから冒険者ギルドや工房ギルドの連中にゲームを教え、彼らのケツの毛を抜かなければならないから。
さすがというべきか、才能を見せたのは山師フェル爺の孫娘レーヴェ、次は負けない張り方ができるクレア。
フラウはそもそも大賭をしないので、冷やかし要員。才能の片鱗もないキャティにはサイコロを振る役目をやらせることにする。
「それじゃあ、早速かっぱぎに行くわよ」
エリス、フラウ、キャティで冒険者ギルド、レーヴェ、クレアは工房ギルドに、「ワーランナンバーズ」を教えに行く。
工房ギルドでは、ナイトクラブ用の豪奢な手板とサイコロも発注しておく。
盗賊ギルドの連中は放っておいても覚えるだろうし、商人ギルドの連中は、エリスたちがケツの毛を抜いた冒険者ギルドや工房ギルドのエサにするため、ゲームを教えず大事に取っておく。
夕食時には、5人でホクホクになって家に集合となり、冒険者ギルドでは慌てて迷宮に飛び込むものが続出、工房ギルドでは給金の前借りが大量に発生した。
一方、能力確認も一段落した。
結論として、武器、防具以外はぴーたんが食べないため実験不可。
鴻鵠と破魔に、各々飛燕と昏倒、吸精と浄化を加えても変化しないこと。
コマンド型と自律型では、どちらかしか出てこないこと。
今回の実験での副次成果として、「胴防具」「腕防具」「足防具」が、同じ魔能力で別の効果を発すると判明したこと。
例えば、勇者の持つ「抵抗」は、腕防具と足防具にも付与されている。
これをエリスがまねてみた。
抵抗のガントレット 束縛無効 必要精神力0 自律型。
抵抗のメタルブーツ 毒無効 必要精神力0 自律型。
抵抗のハーフプレートアーマー 魔法ダメージ10減少 必要精神力0 自律型。
大地のガントレット 物理ダメージ2減少 相手に攻撃をはじかれなくなる 必要精神力0 自律型。
大地のメタルブーツ 物理ダメージ2減少 相手の攻撃で転倒しなくなる 必要精神力0 自律型。
大地のハーフプレートアーマー 物理ダメージ2減少 相手の攻撃を25%の確率で無効化する 必要精神力0 自律型。
そして本日の目玉商品。なんと、抵抗と大地のぴーたん合成が成功した。
魔能力の名称は「迎撃」
迎撃のガントレット:物理ダメージ3減少 束縛無効 相手に攻撃をはじかれなくなる 必要精神力0 自律型。
迎撃のメタルブーツ:物理ダメージ3減少 毒無効 相手の攻撃で転倒しなくなる 必要精神力0 自律型。
迎撃のハーフプレートアーマー:物理ダメージ4減少 魔法ダメージ10減少。 相手の攻撃を25%の確率で無効化する 必要精神力0 自律型。
そしてフル装備で味方パーティへの物理攻撃10減少も発動。はっきり言ってとんでもない装備となる。
残念ながら爪は武器扱いらしく、迎撃を貼ることはできなかった。
また、革製品も迎撃は不可。
結果、迎撃はフラウ専用装備となる。
単体で物理攻撃20減少、魔法攻撃10減少、しかも25%の確率で物理攻撃を無効化する。
このグラマラスビューティを殴り倒すのは、ほぼ不可能になってきた模様。
もう1つの目玉というか、無茶苦茶なのが狂戦士+鴻鵠
魔能力の名称は「狂神」
狂神のニードルダガー:一定時間、攻撃力10倍かつ25%の確率で即死。 必要精神力は攻撃が当たった時点で20 コマンドワードは【ルナティック】
当たればほぼ間違いなく相手死にます。
使用者もエリス以外だと確実に死にます。
子どもの手の届かないところに保管してください。