表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/186

新記録更新

 この家に男性が訪れるのは、ワーランギルドマスター連中、具体的にはバルティス、テセウス、フリント以外では初めてのこと。

 訪れたのはレオパルド、フェルディナンド、ヒュンメルのローレンベルク家男性3名。

 それにルクス母さまとアイフル、クレディアの女性3名。

「父さまとフェル爺さまの宿は街にとったので、そちらを利用して欲しい」

 家族にもそっけないレーヴェ。

「ああ、わかってる。本来ここは男性厳禁なんだろ?」レオパルド父さまがちょっと緊張しながらレーヴェに返事をする。

「トイレの仕組みを見たいのう」これはフェル爺さん。

「トイレはご主人様の隠れ家マスターズハイダウェイでも同じ仕組を取り入れているから、それを見るといい」

 レーヴェは続ける。

「父さま、爺さま、メイドは禁止で頼むな」

 何を言われているのかわからないレオパルドと、落ち込むフェルディナンド。

 この辺が性格の違いか。


 夕食を街中のレストランにて11人で摂り、レオ父さまとフェル爺さまを宿に送り届け、エリスたちは家に戻る。

「で、この子はどうするにゃ?」

 キャティが指摘したのはヒュンメル。

 予定ではレオパルドと一緒にいるはずが、ルクス母さまについてきてしまった。

 年はエリスより2歳上。しかし貫禄は圧倒的にエリスのほうが上。ヒュンメルはルクス母さまの後ろでおどおどしている。

 その姿はショタ垂涎。残念なことに、ここにはショタに反応するメンツがいないのだが。

「まだ子供なのでいじめないで欲しい」

 レーヴェの言葉に、エリスはレーヴェの元に向かい囁く。

「私は子供じゃないの?」

 黙りこむレーヴェ。


 そして帰宅後のリビング。

 エリスはヒュンメルの前に座る。

 何事かという表情のヒュンメル。

 エリスはヒュンメルの右の頬を張る。

 バチン!

 慌てたのはレーヴェ、フラウ、クレア、キャティの4人。

 何をされたかわからない表情のヒュンメルの左頬をエリスが叩く。

 バチン!

 突然の痛みで泣き出すヒュンメル。何事かとかばうルクス母さま。

「エリスさん、突然何をなさるのですか!」

 ヒュンメルを胸に抱き、抗議するルクス母さま。

 そのヒュンメルを無理やり母さまから引き剥がし、ビンタを入れるエリス。

 バチン!

「やめろお嬢、やめてくれ!」レーヴェが身体を差し入れて止めに入る。

「何ですか、これは何なのですか?」パニックのルクス母さま。

 ルクス母さまの胸で泣くヒュンメル。


「男一人でここにいる意味がわかってるの?」

 エリスが声を発した。

「それとも、男じゃないの?」

 エリスの問いにヒュンメルは答えられない。

 ルクス母さまは更にパニック。

「エリスさん、何をおっしゃるのですか、何をおっしゃるのですか!」

 ふん。と鼻で笑うエリス。

「ヒュンメルとやら、今からルクス母さまを案内して、街の宿にお戻りなさい」

 硬直する全員。

「頼むお嬢、無茶を言わないでくれ!」

 レーヴェが懇願する。

「レーヴェ、なんでこの子がここにいるのを許したの?」

「ヒュンメルはまだ子供なんだ、勘弁してくれ!」

 何が起きたかわからないルクス母さまは、ヒュンメルを胸に抱きガタガタ震えている。

 アイフルとクレディアも何が起きているのか把握できない。

 が、フラウ、クレア、キャティはなぜエリスが腹を立てているのか、なんとなく理解できた。

 だから止めない。

「ふん、子供ならそういう扱いでいいわ。お風呂に行くわよレーヴェ。ぴーたんの桶を忘れないでね」


 そしてお風呂。

 ルクス母さま、アイフル、クレディアは正直驚いた。その贅沢さに。

 そしてレーヴェたちも驚いた。エリスの冷酷さに。

 ヒュンメルはぴーたんの桶の横に立たされた。

「子供なんでしょ? ならそれで十分」

 執拗にヒュンメルをいびるエリス。

「頼む、勘弁してやってくれ!」

「黙れレーヴェ!」

 珍しく激高するエリス。

「みっともないちんこをぶら下げて、そこに立たされている気分はどう?」

 エリスのいじめは止まらない。

 が、フラウとクレアとキャティは、いつものポジションから動かない。

 どうしていいかわからないルクス母さま。見守るしかないアイフルとクレディア。オロオロするだけのレーヴェ。


 ヒュンメルは泣いた。

 恥ずかしくて泣いた。

 辛くて泣いた。

 泣いて泣いて、そしてやっと、なぜ自分がここに立っているのかを考える余裕ができた。

 僕は嫌われているのか?

 違う。

 僕は疎まれているのか?

 違う。

 僕は何をしたいんだ?

 畜生

 畜生

 畜生

「ペチャパイ女がなにを威張ってるんだ!」

 言ってやった。

 スッキリした。

 さあ、かかってこい。


 エリスは微笑む。

「正解」

 そして続ける。

「干すわよ」


 ヒュンメルは最年少緋色の洗濯物スカーレットランドリーズ記録を更新。

 真っ赤に染められ、形式的に吊るされた後、すぐにフラウが直々に冒険者ギルドに魔導馬でしょっぴく。ルクス母さまはキャティが一緒に連れて行く。

 そこでテセウスたちに笑われながら冒険者ギルドの軒に吊るされるヒュンメル。

「おう、最年少記録更新かい!」バズさん。

「元気があってよろしい!」ダグさん。

 そして、ヒュンメルはレーヴェが呼びに行ったレオパルドとフェルディナンドに引き取られる。

「決まりでな、麻のシャツは10000リルだ」

 テセウスの声に、レオパルドは答える。

「ああ、安いもんだ、学ばせてもらった」

 ヒュンメルは10歳にして、ちんこに金黒紅白4色のリボンを巻かれ、真っ赤に染められ、吊るされた。

 それは一人前の男だと扱われた証。

「よし、ヒュンメル、風呂に行くぞ」

 フェル爺さんが調子に乗る。

「ああ、それもいいかもな」

 堅実なレオパルドさんも調子に乗る。

 そしてローレンベルクの男3人、水入らずでワーランの夜を過ごす。


「エリスは優しいね」

 リビングでのクレアの言葉。

 今日はアイフルとクレディアを客間に宿泊させるため、クレアがエリスの部屋で寝る。

「ふん、つまらないことしちゃったわ」

 つい本音を出すヒキニート。

 ヒキニートは、ヒュンメルの姿に幼いころの自分を重ねてしまったのだ。

 いつもびくびくして、周りの目を気にしていた自分を。

「ふん」

 すると、横にクレアが座り直した。

「エリス、大好き」

 突然のキス。

 びびるエリス。

 これは再び受け身の回かと身構える。

 と、ぴーたんが突然泣きだした。

 きゅう、きゅう

 ぴーたんは2つの珠を吐き出した。

 それは

鴻鵠こうこくの魔結晶」と「破魔はまの魔結晶」


 エリスは改めてびびる。

「鴻鵠の魔結晶 ダメージ3倍。25%の確率で相手に束縛効果。必要精神力3。コマンドワードは【天空の牙よ来たれ】」

「破魔の魔結晶 アンデッドおよび悪魔にダメージ2倍 相手の存在エネルギーを体力として吸収する。必要精神力0 自律型」

 クレアに説明すると、クレアもビビる。

 聞いたことのない魔道具の名前だと。

 そして気がつく。2つの魔道具の効果は、ぴーたんが食べた魔道具の効果が増幅されていることに。

 鴻鵠=飛燕+昏倒+α

 破魔=吸精+浄化+α

「これでこないだのハイデーモンとも戦えるかも」

 クレアのつぶやきにエリスも同意する。

「皆の武器を、これで強化しなきゃ」

 そしてエリスとクレアは共に頷く。

 これからもぴーたんの実験を続けなければ。

 横ではぴーたんが、「おやつないの?」という目線を2人に送っている


 そんなこんなで、レーヴェとフラウ、キャティとルクス母さまも帰ってきた。

 ルクス母さまはレーヴェの部屋で寝る。


 お休み。明日も忙しいわよ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ