オークション
明日は収穫祭最終日である。
夕刻には中央広場に出店された売店は全て片付けられ、広いスペースが作られる。
次にそこに背もたれのない長椅子が、ところ狭しと並べられていく。
長椅子が向く先には特設ステージが見える。
そう、明日は収穫祭最大のイベント『オークション』が開催されるのである。
「『抵抗のプレートアーマー』はいくらくらいになるかしら?」
夕食にフラウお手製のビーフストロガノフをかっこみながら、エリスが皆に話題を振った。
「商人ギルドでは『10億』は下らないだろうと話題になっていたな」
これはレーヴェからの情報である。
「そうなれば私たちの取り分は半分の5億リルになるから、分け前は1人1億リルは固いわね。レーヴェ、実家の借金は気にしなくて良さそうよ」
「ああ。恥ずかしい話ですまん」
レーヴェの実家はウィートグレイスにある。
そこはワーランから南に馬車で五日の街であり、領主はダークフィナンス家が務めている。
レーヴェの実家も、元はウィートグレイス領でNo.2の規模を誇っていた貴族だったが、祖父が領地やら財産やらを売り飛ばして趣味に走ったおかげで、レーヴェの父親はお家存続にかなり苦労したらしい。
「とりあえず、あのレイクという無礼なガキからは、落とし前をつけないとね」
これはエリスーエージの独り言である。
「それじゃ、今日は早く寝ましょう」
風呂あがりの四人ははそれぞれの部屋に戻っていった。
しかし明日に大イベントを控えた彼女たちがおとなしく眠れるはずもない。
さて、今日はどこからにしようかしら。
「エリス、私は皆でお揃いのティーカップセットを落札したいわ」
あん……。
「エリス、ボクは東方のからくり人形が欲しいんだ」
あん……。
「お嬢さま、明日は飛燕のグレートソードも高く売れるといいな」
あん……。
「エリス、私はオークションに興味ないにゃ」
にゃん……。
可愛いやつらめ。
ちなみに、ここのところブラック企業並みに働かされたぴーたんは、代わる代わる響く四人の喘ぎ声を子守唄がわりに熟睡を堪能したのである。
ということで、お金を使う朝が来た。
充分に睡眠をとってお肌つやつやの五人は、フラウがさっと用意したハムと野菜のオープンサンドを食むと、マルスフィールドで買い揃えたお揃いのドレスに着替えていく。
なお『オークション』は『参加席』と『観客席』が明確に分けられており、参加席は『ドレスコード』が求められる。
全員の準備ができたところで、会場にはいつもの魔導馬や徒歩でなく、あえて御者の正装を身につけさせたケンが操る、彼女たちオリジナルの馬車で向かうことにする。
こうして会場前に馬車を乗り付けた五人は、順番に参加席へと優雅に降り立っていった。
ほう。
参加席と観客席のあちこちからため息が漏れ聞こえる。
彼女たちはこの場を高貴な空気で制圧したのである。
実はこれ、オークション主催者の商人ギルドマスターであるマリアが五人に指示した『仕込み』である。
マルスフィールドのレストランで五人が持つ華やかさを宣伝に利用したマリアは、オークションでは彼女たちの優雅さに場を染めてしまうことを画策した。
その目的は『華やかな異空間効果で参加者が持つ財布のヒモを最大限に緩めさせる』というものである。
ちなみにエリスたちには一人五万リルのお駄賃がマリアのポケットマネーから支払われることになっている。
「おう、派手な登場じゃな」
早速姿を現したフリントがエリスとクレアの間に強引に尻をねじ込んでくる。
「目論見は成功だわ」
などと満足そうな表情でマリアがキャティとレーヴェの間へと当然のように座ってくる。
「おう、お前ら早いな」
いつの間にか現れたバルティスがクレアとフラウの間に当然のように割り込んでくる。
「娘の隣しか空いていなかったらだったらどうしようかと思ったぜ」
などと言いながらも、テセウスがエリスとキャティの間に残念そうに陣取る。
なんだこいつら。
こいつらのお陰で、エリスたちの席はオークション中の注目を再び集めたのである。
さて、他の席にも他都市のお金持ち本人もしくは代理人のような者達が次々と集まってきた。
どうやらギルドマスターたちの知り合いも多く参加しているらしく、代わる代わるマスターたちの元に挨拶に訪れる。
「なんだいフリント爺さん。今日は可愛らしい孫娘とご同伴かい」
「おう。羨ましいじゃろ」
「まあマリアさまったら。レーヴェさまを独占だなんて……」
「いえいえ、たまたまですわ。おーっほほほ」
「なんだバルティス。仮装はやめたのか?」
「このお嬢さんたちに不評だったんでな」
「テセウスもやっと子離れできたか」
「うるせえ……」
おっさんおばはんどもは言いたい放題である。
そんなこんなで参加席は漆黒の正装を身につけた男性と色とりどりドレスを纏った女性により埋められていった。
そして定刻。
「収穫祭最終日『オークション』をこれより開催いたします!」
オークションを取り仕切るのは商人ギルドである。
バックヤードの管理は盗賊ギルドが担い、会場警備はは冒険者ギルドが当たる。
「まずは東方の茶を運ぶからくり人形から!開始価格10万リル」
「20万リル!」
クレアが待ち構えていたように手を挙げ叫んだ。
しかし他の誰も反応しない。
というか、そんなもんどうするんだという目線をクレアに送っている。
クレアの隣に陣取るフリントも「ちいっと考えれば、あんな人形の構造なんぞ、すぐに思いつくじゃろ」などと呆れた様子でクレアに囁くも、クレアは構わない。
どうやら仕掛けよりも人形の変わった表情が気に入ったらしい。
「20万リルでハンマープライス」
すると、すぐさま集金人が落札者であるクレアの元に向かい、20万リルを回収する。
「現金になさいますか?為替になさいますか?」
「現金で!」
クレアは興奮した様子で現金20万リルを集金人に手渡した。
「支払確認いたしました。お嬢さま、品物の受け取りは今すぐとオークション終了後のどちらになさいますか?」
「最後でお願いするよ」
受け取りを最後にしても、品物は商人ギルドが責任を持って預かってくれるので、引き続きオークションに参加するのも安心である。
「次はこちらの絵画です」
オークションは進んでいく。
フラウはこだわっていた五組の茶器を50万リルで落札する事ができた。
落札結果にホクホク顔のフラウ。
「これでティータイムが、より優雅になりますわ」
オークションは更に進み、エリスが出品した飛燕のグレートソードの順番がやってくる。
「開始価格は2200万リルです」
「3000万」
「3500万」
「3800万」
「これはすごいね」と間にフリントを挟んだエリスとクレアが感心していると、フリントも「これは5000万まで行くかもしれんな」と腕を組みながら予想している。
が、ここで予想を上回る声が飛んだ。
「1億!」
叫んだのはダムズである。
横では突然のコールにグレイが慌てている。
「おい!何を勝手にコールしているんだ!どこにそんな金があるんだよ!」
しかし能天気にダムズはこう言い放った。
「王から賜った金がまだまだあるだろ?」
当然場は静まり返る。
確かに珍しいが、たかが『飛燕』に一億リルだと?という半ばあきれた雰囲気で。
「1億リルでハンマープライス」
『飛燕のグレートソード』は一億リルで落札された。
当然のことながら集金人がダムズのところに向かう。
「1億リルのお支払いは現金になさいますか?為替になさいますか?」
「ほらグレイ、集金が来たぜ。まさか勇者が払わないなんてことはないよなあ」
ダムズの行動に舌打ちしながらも、グレイは冒険者のかばんから1億リルの現金を取り出すと集金人に渡した。
すると現金がそろっていることを確認した集金人は、それを受け取る前にこうダムズに伝えた。
「『飛燕』の効果をこの場で確認なさいますか?」
これはあくまでも『儀礼的な』集金人の確認である。
なぜならば品物の能力は『ワーラン商人ギルド』が保証しているのだから。
なのでここは『問題ない』と回答するのがオークションの儀礼である。
が、ダムズはこう言い放った。
「ステージ上で頼む」
「かしこまりました」
集金人は目の前の野蛮人のオーダーを事務的に受けると、念のために用意してある鎧人形をステージ上に用意させた。
「よっしゃ、ちょっと行ってくるぜ」
ダムズは脳天気に会場ステージに向かう。
続けてコマンドワードを唱えグレートソードを振ると、目の前の鎧が両断された。
「よろしゅうございますか?」
集金人の確認に「ああ、間違いないな」と答えるダムズ。
ということで『飛燕のグレートソード』は勇者の資金によって『一億リル』で落札された。
エリスたちはウハウハである。
「おいエリスにクレア。今晩は一杯おごれや」
そうつぶやくフリントのあきれ顔にエリスとクレアは「当然よおじさま」と答えたのである。
そして最後に登場したのは目玉商品である『抵抗のプレートアーマー』
「開始価格は『3億』からです」
するとすぐに参加席のあちこちで声が上がる。
「4億」
「5億」
「6億」
「6億5千万」
明らかにこれまでの品物よりも多くの人が参加している。
どうやら今回の参加者はこの品物をガチで落としに来ているようだ。
「7億」
「7億5千万」
「8億」
「8億1千万」
「8億2千万」
「10億」
桁が変わったところで場内の空気が一旦静まった。
10億は巷で予想されていた落札額である。
これで決まるのか。それとも誰かがさらに乗せてくるのか?
ちなみに10億の宣言をしたのはグレイである。
彼は神の啓示を実現するために一気に桁を上げたのである。
が、それは甘かった。
「12億」
静まる会場。
慌てて冒険者のかばんをさらう勇者。
「おいお前ら、持っている金を全部よこせ!」
グレイの悲鳴にも似た叫びにギースだけが慌て始めた。
「おい、まさか種切れか?」
頷くグレイにギースも真っ青になる。
「ダムズ、ピーチ、クリフ、とにかくありったけの金を出してみろ!」
しかし三人はギースの慌てっぷりも気にしない。
「おらあ財布を無くしちまったし」
「なんで私が身銭を切らなきゃならないのよ」
「それより今晩の飲み代を下さい」
グレイとギースは顔面蒼白となった。
グレイがもつ袋の中には11億とちょっとしかない。
12億には足りないのだ。
そこに司会の無情な宣言が響く。
「12億リルでハンマープライス」
勇者グレイはオークションで敗北した。
「はっはっは、それでは『抵抗』を試させてもらおうかな」
『抵抗のプレートアーマー』を落札したのは、レイク・ダークフィナンスである。
レイクは12億リル分の商人ギルド為替を集金人に渡すと、ダムズと同様に儀礼を無視し、ステージに上がった。
しかし『飛燕』と異なり『抵抗』の能力は誰も見たことがない。
なので当然のことながら観客席は盛り上がる。
『抵抗のプレートアーマー』を身につけるレイク。
「ところで誰が試しに俺を攻撃してくれるんだい?」
するとあらかじめ呼ばれていた老齢の魔術師が姿を現し『ファイアバレット』を唱えますと宣言した。
ところがレイクはこう言い放った。
「そんなジジイじゃあつまらん。あそこにいる黒髪の娘は魔術師だろ。なあお嬢ちゃん。試しに俺を魔法で攻撃してみてはくれないか?」
あろうことかレイクはクレアを指名したのである。
これにはさらに会場が盛り上がる。
なぜなら壇上の若者はレーヴェ、フラウに続いてクレアまでもおちょくるようなことをしでかしたからである。
これで工房ギルドも完全にレイクの敵に回った。
しかしそんなことに気づかないレイクは、さらにクレアにこう続けたのである。
「せっかくの『抵抗のプレートアーマー』のお披露目だ。華やかに行こうぜ」
余裕のお坊ちゃんである。
するとクレアはエリスからの耳打ちに頷いてからその場で立ち上がり「ボクが得意とする攻撃魔法を撃てばいいのかい?」とレイクに微笑みながら尋ねた。
ふん。
レイクは鼻で笑う。
「『ファイアバレット』でも『アイスフォッグ』でも『ライトニング』でも『アースジャベリン』でも構わないよ。でも地味なのは勘弁してくれよな」
「わかった」
クレアはもう一度頷くとステージ上に立った。
「それじゃ行くよ」
「かかってきなさい」
レイクの余裕に甘え、クレアはゆっくりと呪文を練っていく。
「ちょっと待てえ!」
「やめろクレア!」
クレアが唱える呪文を耳にしたテセウスとフリントが慌てて制止に入ろうとするが、エリスたちに止められてしまう。
「おじさまみっともないわよ」
「まあ見ていろ」
「クレアも大人になりましたからね」
「にゃあ」
クレアの呪文は完成した。
「行くよ!エクスプロージョン!」
エクスプロージョンは、基本ダメージ20 必要精神力9の、クレア最強の単体攻撃魔法である。
クレアはこれを魔導の指輪と己の親和力によって精神力5で撃つことができる。
呪文を練るのに時間がかかるのと、射程距離の制限があるため、巻物を見つけた後は基本ダメージ10の範囲魔法である『ライトニングシャワー』を愛用してはいるが、攻撃力だけならばこちらのほうがえぐい。
ちなみに幼いクレアが性的暴行を働こうとした叔父の頭を吹っ飛ばしたのがこの魔法である。
だからそれがクレアのトラウマになってしまったという事情を知るテセウスとフリントは止めに入ろうとしたのである。
実はそのトラウマは既にエリスによって解放されていたのであるが。
すさまじい爆音とともに、レイクの全身が爆発に包まれた。
『抵抗のプレートアーマー』は確かに魔法ダメージをきっちりと10だけ止めた。
が、残りのダメージ10がお坊ちゃんを襲う。
ぶすぶすぶす。
「おお。生きてるなあ」
「馬鹿じゃねえの」
「クレアちゃん最高!」
「すげえ、爆発をくらってまだ立ってるよあいつ」
「すげえのはあいつじゃなくてプレートアーマーの方だろ」
「違いない」
「ざまあ!」
などと観客席では怒声と笑い声が飛び交った。
体力のほとんどを爆発のダメージで削られたお坊ちゃんは、ふらふらしながらも最後の見得を切る。
「『抵抗』を確認した……」
そう言い残して意識を失ってしまったレイクに司会者達が慌てて駆け寄り介抱を始める。
「あれ?」
司会者たちは気づいた。レイクの身体的ダメージがそれほどでもないことに。
どちらかというと爆音によるショックで気絶した様子である。
しかしクレアはしらを切るようにステージを後にしてしまう。
「もう知らないっと」
クレアがステージ上から立ち去ることによってオークションは無事終了した。
ちなみにクレアはエリスに耳打ちされたとおり『エクスプロージョン』の効果をあえて半減させることにより、ちょっとだけレイクを殺さないようにダメージを通して脅かしたのである。
「畜生! 抵抗の装備がこれで揃わなくなった!」
オークション会場で珍しくグレイが激高している。
「あの貴族からの買戻しをまずは考えよう」とギースが慰める。
しかしダムズに「金を持っていないお前が悪いんだ」と言われたグレイはさすがにブチ切れた。
「お前がグレートソードを落札しなければ何とかなったのかもしれないんだ!」
「知るか。十分な金を王から受け取っていないお前が悪いんだろ」
ダムズからのあまりにも無責任な暴言にグレイは文句を言う気力も失せ、肩を落としてしまう。
『抵抗の装備』とは『鎧』と『篭手』と『長靴』で構成される伝説の神具である。
これら三つの装備が揃うと、身に着けた本人を含むパーティ全員に『物理ダメージ減少10』の効果を与えるという。
グレイたちはこれまでの探索で『抵抗の漆黒のガントレット』と『抵抗の漆黒のメタルブーツ』は手に入れていた。
後は『抵抗の漆黒のプレートアーマー』だけだったのだ。
ところがまさかこんな形でその入手を妨害されるとは思っていなかった。
「畜生……」
路地裏の壁に向かいグレイはいつもの癖で膝を抱えてしまう。
「またかい」と吐き捨てるように呟くピーチ。
「グレイしっかりしろ」とおろおろするギース。
ダムズとクリフはグレイの悩みなんか知ったこっちゃないとばかりに夕食の算段を始める。
するとそこに、坊主頭の男が現れた。
「ちょっとそこの盗賊の兄さん。ちいっとあっしの話を聞いてもらえやせんかね」
「なんだ?」
「損になる話じゃないと思いますぜ」
ギースは警戒しながらもワーラン盗賊ギルド関連かと身構えながら坊主頭のもとに向かった。
すると坊主頭はこう切り出した。
「兄さんたちは『抵抗の鎧』が必要だってさっき言ってましたよね」
「ああ、貴様もオークション会場にいたのか」
「そうなんすよ。でね、ちょっと見てもらいたいもんがあるんですよ」
坊主頭の男は肩にしょった袋からトゲトゲしたものを取り出した。
それは『ヒャッハーアーマー』である。
本体にも肩パットにもトゲトゲ付きの、とってもお下品な鎧である。
「何の冗談だ?」
眉をひそめるギースに坊主頭はまあまあととりなしながら話を続ける。
「そちらさんにも鑑定できる方はいるっしょ?ちょいちょいっとこいつを見てくんなせえ」
そう促されたギースは、いぶかしながらもクリフを呼び、ヒャッハーアーマーを鑑定させる。
すると見る見るうちにクリフの表情は驚愕に染まっていく。
「どうしたクリフ?」
「ギース。これは『抵抗のヒャッハーアーマー』です……」
それにはギースもたまげた。
「何だと!」
「間違いありません!」
ギースはとっさに坊主頭の胸ぐらをつかんだ。
「貴様!これをどこで入手した!」
しかし坊主頭は落ち着いた様相でこう続けた。
「実は俺、魔王軍からの逃亡兵なんすよ。魔王のところから逃げてくるときに路銀の足しになればと思って、ちょいとね。で、これをさっきの『10億リル』で買っていただけたらありがたいと思いやしてね」
ギースは落ち込んで壁を見つめているグレイを引きずってくると、ヒャッハーアーマーを装着するように促した。
「なんだそのみっともない鎧は」
「いいから黙って着てみろ」
グレイはしぶしぶヒャッハーアーマーを装着する。
するとグレイ本人と他の四人の周りを一瞬光が包んだ。
『パーティ全員に物理ダメージ10減少』の効果が確かに発動している。
ギースは考える。
この坊主頭をここで始末すれば、この装備は俺達のものだ。
しかしここには『バカ』がつく正直者が一人いる。
「ありがとう!これが代金の10億リルだ!」
グレイは素直に代金が入ったズタ袋を坊主頭に渡してしまった。
「まいど」
男は袋を担ぐと闇に姿を消してしまった。
こうして勇者は『両手両足が漆黒』で『鎧だけヒャッハー』という、とてもみっともない格好で旅を続けることになった。
これでも一応『伝説の三武具』なので本人は構わないらしい。
さてこちらはエリスたちの屋敷前。
「よくやったわね。ケン」
シナリオ通りに動いたケンを褒めるエリス。
そう。『坊主頭』とはケンであり、ケンが抱えていた『抵抗のヒャッハーアーマー』はエリス謹製の一品である。
これでエリスたちは10億リルを現金で丸儲け。
素直に現金が入った袋を渡すケンを笑顔で迎えながらエリス-エージは心の中でつぶやいた。
「ハンナとケンにはこれからも働いてもらいましょう」と。