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盗賊少女に転生した俺の使命は勇者と魔王に×××なの!  作者: halsan
エンジョイ デーモンズライフ編
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再度王都へ

 ここは王の寝所。相変わらずピーチ、ダムズ、クリフ、夜馬竜ナイトメアドラゴンが悪巧みをしている。

「なあピーチ、魔宴サバトの解禁はともかく『生贄は本人の承諾があればOK』というのはやりすぎじゃないのか? これでは王が生贄を命じたら、本人は承諾するか、王令にそむいた罪での二択になってしまうぞ」

 夜馬竜が疑問を口にすると、ピーチが鼻を鳴らしながら答えた。

「王令は極端な方がいいのよ。大体、王がホイホイ魔宴の生贄を指名するわけないでしょ。生贄の承諾は民に恐怖を与えるためのおまけみたいなものよ」

「なんだい、それじゃあ俺はいつまでたっても幼女の心臓にありつけないじゃねえか」

 不満そうなダムズにピーチが馬鹿にしたような眼で返した。

「悪魔の力を手に入れてもおつむは相変わらずだね。いいかい。別に王が魔宴を許可したからって、王自らが魔宴を開催する必要はないのさ。クリフ、お前は商人ギルドに行って、路地裏に『魔宴代行業』の看板をあげるように段取りしてきなさいな」

「それはいい。私自身が取りまとめてもいいですね」 

 ピーチの思惑に気付いたクリフは、にやにやしながらその足で自らが所属する商人ギルドへと向かっていった。


 そう、王は許可するだけでいいのだ。そして魔宴は別にダムズがこだわる幼女の心臓いただきますだけではない。民はまず恐れ、その後ゆがんだ趣味を持つ権力者たちがうごめき始める。しかし彼らも最初は互いにけん制しあうであろう。そこで登場するのが「魔宴代行業」。この看板のもと、クリフたちは権力者たちから匿名で彼らのご要望のテーマに沿った魔宴を開催する。それは当初は単なる乱交かもしれないし、プレイレベルのSMショーかもしれない。だが、最初はそれでいい。徐々に過激になっていけばいいのだ。徐々に腐っていけばいいのだ。

 そのうち「殺したくなるもの」「なぶりたくなるもの」「他者を落とし入れたくなるもの」が出てくる。そいつらは手近な弱者からいたぶり始めるだろう。政敵を狙い始めるだろう。そしてそこに現れるのは混乱の世。その時に堂々と好き勝手をやればよい。

「ダムズもしばらくは、よそ様の開催する魔宴で遊んでなさいな。ところで夜馬竜、戦力の方は大丈夫?」

「ああ、そっちはザクロマの一派が嬉々としながら畑仕事にいそしんでいる。いざとなったら戦力はいくらでもわらわらと湧いてくるだろうさ」

「いい感じね。どうせやるならそれくらいはやりたいわね」

「違いない」 

 こうして今日も悪巧みは進行して行く。


 さて、ここはスカイキャッスル南の郊外。

 打ち合わせ通り、エリスたちは予め決めておいた場所でマルスフィールド公一行と合流した。竜たちはそれぞれの乙女たちにへばりついている。

「さて、どうしたものかな」 

 マルスフィールド公が入都前にエリスたちに何気なく声をかけた。

魔宴サバトが公たちの仰るものでしたら、ほぼ間違いなく悪魔の仕業だと思います」

「ならば、そいつらを斬ればいいのではないか?」

「レーヴェ、そんなこと言ってるとまたエリスに叱られるわよ。でも、目的は何かしらね?」

「悪魔の目的は多分混乱だろうけど、魔王がらみかどうかも気になるね」

「勇者だろうと魔王だろうと悪いことは悪いことなんだにゃ。そうだにゃ?」

 エリス、レーヴェ、フラウ、クレア、キャティの意見を一回り聞いてから、マルスフィールド公は、更に彼女たちに質問を追加する。

「ならば、謁見の場ではどうしたらいいと思う?」

「王もしくは広報官に悪魔が憑依していたら、その場で引き剥がして大捕物と言うのはいかがですか?」 

 続けてエリスはアレスとイゼリナから「分離アイソレーションの指輪」を託されたこと、王もしくは広報官に悪魔が憑依していたら、その場で強制的に分離させることにより、彼らは正気を取り戻すはず。そこで改めて正気を取り戻した王もしくは報道官の命に従い、悪魔を駆逐すればいいのではないかと。

「そううまくいくかな」

 するとマルスフィールドの呟きには、大地竜らーちんがエリスの背中から答えた。 

「ダメもとだろうさ。要は心の準備だ。ダメなら一旦引き、改めて手を打てば良い」 

「それよりマルスフィールドさま、勇者一行を同席させる方が大事ですわ。ご手配お願いいたしますね」

「ああエリス、それは既にチャーフィー卿が招集をかけてくれている。奴らは既に城門前で待っているだろうよ」


 エリス-エージは苛ついていた。王に対しても悪魔に対しても勇者に対しても。なんでこいつらはそうやって私たちの生活に介入するのかと。

 試しにエリスは大地竜らーちんに念話で聞いてみる。

「スカイキャッスルの王城を消し炭にできる可能性は?」

するとらーちんも面白そうに答えた。

「勇者がいなければ100%。勇者がいたら0%だな」

「やっぱりそこまで実力差はあるのね」

「それは仕方がない。アイツと魔王には我らの攻撃が通用しないからな。あ、いや、一つだけ方法はあるか」

「それって?」

「俺たち5柱の竜が全力で勇者を押さえつけ、エリスちんたちはそれを精神力を以て全力でサポートする。その上で一撃でキャティの勇者を切り裂くもの(ブレイブリッパー)で勇者の心臓もしくは脳を一撃で破壊する。一撃で破壊できなければ再生されて終わり。破壊できても犠牲は俺たち全員だけどな」

「非現実的ね」

「そうだな」

「魔王は?」

「『魔王の魔符』というのは多分魔王の魔力を一定時間制限するものだろうな。それをエリスちんが使用している間に、俺たちが総出で魔王の結界を抜けるかどうかが勝負だな」

「可能性は?」

「勇者を倒せるくらいかな」

「それなら勇者と魔王には相打ちしてもらうしかないわね」

「エリスちんがそれを望むのならばな」

「ふん」

 エリスとらーちんの念話に誰も気づかないまま。公と少女たちは貴族用の門をくぐった。

 

「なにこれ!」

 これはエリス-エージたちの正直な感想。スカイキャッスルの街は活気づいていた。但し、破滅の方向へ。

 市場の物価は信じられない程のインフレーションを引き起こしている。単純に物価は前回スカイキャッスルを訪れた時の2倍近くになっている。一方、あちらこちらにいかがわしいチラシが貼られている。それは魔宴サバトのお誘いと、魔宴の生贄候補、といっても命をかけるものではなく、いわゆるステージダンサーを思わせるような募集。その報酬は女給1ヶ月分の賃金に匹敵する。

 マルスフィールド公もさすがに眉をひそめている。

「なあチャーフィー卿、なんなのだこの景色は?」

「ここ何日かで急速に広まったのですよ。まっとうな商売が停滞し、一方で消費をそそのかす空気が支配している。結果、このざまです」

「しかし、これでは貨幣がすぐに足りなくなるであろう」

 マルスフィールド公のシンプルな問いにチャーフィー卿は肩を落とした。

「ご想像の通りです。各貴族の私有領土からの年貢が瞬く間に高率になっています。あれでは農民たちは持ちますまい」

 マルスフィールド公はため息とともに肩を落とした。魔宴云々が経済をも侵食するとは考えていなかった己の甘さを痛感する。

「とにかく兄に会おう」

 公は己の立場も王の立場も忘れ、実の兄を問い詰めるために王城に向かった。

 

 王城前では勇者グレイ、盗賊ギース、魔術師マリオネッタの3人が公たちを待っていた。その姿を見つけるやいなや、公は彼らに向かい罵声を浴びせた。

「勇者グレイとやら、そしてそのパーティよ、スカイキャッスルの現状を見て貴様らは心が傷まぬか!」

 この言葉は心底3人に突き刺さった。なぜなら勇者と魔術師は普段はワーランで楽しく過ごしており、スカイキャッスルの街なぞ、気にしていなかったから。そして盗賊は盗賊ギルドの命により、面従腹背を貫いていたから。

 3人を代表してグレイが口を開く。

「マルスフィールド公よ、我らの気づきが遅かったのは素直に謝る。が、我らにもこの原因がわからないのだ」

「ならばこそついて来いと言っている。よいな!」

 マルスフィールド公の激高した言葉に勇者たちは素直に従った。

 するとエリスがするするっとマリオネッタに笑顔で近づく。

「マリオネッタ、お久しぶり。元気してた?」

 マルスフィールド公の怒りと比べ、余りにのんきなエリスの言葉に戸惑いながらも、マリオネッタも何とかエリスに笑顔を返す。

「ええ、エリスお嬢さま、毎日充実しています」

「そう、それはいいことね。それじゃいつもの口裏合わせよ」

 続けてエリスはマリオネッタの耳元でもごもごと囁いた。それを聞いてマリオネッタの表情が一瞬硬くなるも、エリスが続けた言葉に頷く。

「それじゃ、まずは兄弟げんかを拝見しましょう」

 エリスの一言でリラックスする宝石箱たち。さあ、改めての謁見です。

 

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