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盗賊少女に転生した俺の使命は勇者と魔王に×××なの!  作者: halsan
エンジョイ デーモンズライフ編
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カオスドラゴン制作秘話

 メベットが跨ってきた機械竜カオスドラゴンかーくんに、最初は驚いたビゾン&グリレの姉さまコンビだったが、さすがというか、すぐにその状況に慣れた。特にビゾンは娘が竜戦乙女ドラゴニックワルキュリアとならずに竜を手に入れたとあって、「良い嫁入り道具を作っていただいた」と喜んでいる。

 ワーラン市民もここで混沌竜ピカレスクドラゴンぴーたんよりもふた回りほど小さく、色も淡く輝く可愛らしい竜が追加されても、既にどうってことないという表情を見せている。せいぜいが「宝石箱に薄茶色ライトブラウンが加わった」程度の認識であった。

 機械竜に最も興味を持ったのは当然のことながら、フリントをはじめとする工房ギルドのメンバーである。

 クレアと混沌竜ぴーたんが10ビート(1m)四方ほどの淡く輝く石とも金属とも言えない不思議な素材を工房ギルドに持ち込んだ時、ギルドメンバーの誰一人としてそれが何なのか理解できなかった。とにかく軽いし硬い。その硬さは絶妙の弾力と剛性を備え、切る、叩く、削るなどの行為は全て無駄だった。

 クレアの許可をもらった鍛冶組が火炉に晒しても何の変化も見られず、金属を洗う酸に付けても同様。研磨剤も全く効果がなかった。

「そろそろ答えを教えてくれんか? クレア」

 さすがのフリントもこの物質が何かわからなかった。いや、可能性のひとつは思い浮かんだが、まさかと意識からかき消した。

 するとクレアが、もったいぶりながらもギルドのメンバーに答えを明かす。 

「これは大地竜ランドドラゴンが脱皮した鱗だよ。さて、ここまで言えばわかるかな?」

「まさか、ダークミスリルの原材か?」

「正解! さすがは親方」

 一旦意識からかき消した答えをうめいたフリントにクレアが笑顔で答えた。 

 一方声も出ないギルドメンバーたち。しばらくの沈黙をはさみ、再びフリントが若干震えた声で再度クレアに尋ねる。

「しかし、ダークミスリルは通常では加工不可のはず。それをどうするんじゃ?」

「じゃーん。ここでオレの出番だよ!」

 クレアに代わって、クレアの頭上に鎮座する混沌竜ぴーたんが胸を張って答えた。

「例えば鉄で剣を作るとき、熱で素材を一旦溶かす、大槌で鍛錬をする、小槌で型を整える、焼きを入れるという工程があるでしょ?」

 頷き、真剣に聞き入るギルドメンバーたちの表情に満足しながらぴーたんは続ける。

「ダークミスリルでは、溶かす代わりに弱い魔流まりゅうで一旦ダークミスリル原材を柔らかくするんだ。鍛錬は不要。柔らかくなった原材は打ち延ばしや切り出しが可能になるから、ここで型を整えるんだ。ここでのポイントは、作りたいサイズの半分くらいに留めること」

「それはどういうことだい?」と、たまらずクレアカーペンターズの1人が口を挟んだ。

「話は最後まで聞いてよ。ダークミスリル原材の焼入れは、強力な魔流で行うんだ。するとこのとき、原材は魔子ましを大量に取り込み、体積比にして8倍程度、つまり縦横高さそれぞれ2倍になるんだよ。これが大きさの割に非常に軽いとされるダークミスリル製武器の仕組みさ。あと、一回魔流による焼入れを行ったダークミスリルは二度と焼き入れを受け付けなくなるから、潰しは効かないよ。いいかな?」

 ぴーたんの話を聞いているうちにワクワクし始めた工房ギルドメンバーたち、特に若手で構成されるクレアカーペンターズの面々は今にも原材に飛びつきそうな表情を見せる。

 しかし、一人フリントだけが腕を組み、眉をひそめる。

「理屈は分かった。しかし、魔流は魔子を扱う技術。人間はそんなものを持ちあわせておらんぞ」

 フリントの疑問は当然だった。魔流は魔術の基礎でありながらその仕組が解明されていない。魔術師は過去から連綿と続く記録に基づき、様々な魔術を発動させる術式を編み出したが、それは全て積み重ねていくように過去の魔術から徐々に派生させていったもの。その根本である魔流については、何もわかっていないのだ。

 と、ここでクレアの頭の上で混沌竜ぴーたんが胸を張った。

「実はオレの身体は純粋な魔子で構成されているの。そしてオレの動作は魔流そのもの。わかるかな?」

 きょとんとするギルドメンバーたち。

「あのね、オレにとって魔流はごく自然に生み出せるものなの。試しにこの原材、端っこ1ビートだけ弱魔流を流してみるから、ちょっと切ってみなよ」

 クレアの頭から舞い降り、人間大のサイズになった混沌竜ぴーたんがダークミスリル原材の端っこを両手で掴む。

「よっと」

 ぴーたんが軽く声を上げると、ダークミスリル原材の端っこ1ビート四方の輝きが失せた。

「境目にそってのみを打ち込んでごらん。簡単に切り取れると思うよ」

 ぴーたんの言葉に従い、フリントがのみを打ち込んでみると、それはあたかも純金のごとく柔らかく切り取られた。

「純金ほどじゃないけど、打ち延ばしもできるから、このサイズの原材があれば、結構色々とできると思うよ」

 ぴーたんの言葉を受けるように、クレアが1枚の図面を広げた。それは竜型ゴーレムの図面。

「ダークミスリルのクリエイトゴーレム時の伸縮率がわからないから、まずはミニモゲモゲくんをこしらえてみる。その後こいつに取り組みたいんだ」

 クレアカーペンターズの面々は奪いあうように図面を見つめた。そして一斉にクレアに眼差しを移す。

「クレア、俺たちにもやらせてくれよ」

「当然だよみんな! 完成まで頑張ろう!」

 カーペンターズのリーダー格である少年の声にクレアも答えた。

 

 ミニモゲモゲくんを制作して判明したのが、ダークミスリルをゴーレムベースとしたときの伸縮率の異常な高さである。

 原材で組み立てたサイズのゴーレムベースにクリエイトゴーレムを施した場合、一般的な金属ならば伸縮率8倍、つまり非起動時に縦横高さ各々2分の1、起動時に各々2倍。つまり縦横長さ4倍ずつになるのが鉄などの金属で作成したゴーレムである。なので例えば一般的なゴルゴンゴーレムならば、長さ10ビート(1m)で作成されたゴーレムベースが非起動時は5ビート(50cm)ほどの置物のような人形になる。そして起動時には長さ20ビート(2m)の牛型まで大きくなる。

 ところがダークミスリル製ミニモゲモゲくんが見せた伸縮率は、なんと1000倍だった。これは縦横高さ各々10の値である。つまり、1ビート(10cm)の長さが非起動時は0.1ビート(1cm)となり、起動時には10ビート(1m)となったのだ。

 こうして機械竜のサイズは決められた。非起動時0.3ビート(3cm)四方、起動時30ビート四方(3m)として、クレアがゴーレムベースの図面に数値を書き込んでいく。

 ちなみにダークミスリル製ミニモゲモゲくんはとてもじゃないがミニではなくなったので、「TSくん3号プレミアム」として工房ギルドに寄贈された。


 「硬くて大きくて素敵な機械化竜ゴーレム」は、こうしてワーラン工房ギルドの総力を挙げて制作された。

 なお、クレアは自身が設計したクリエイトドラゴンゴーレムの術式を、モゲモゲくんのようにギルドに公開しなかった。なぜなら、複雑な制御系はもとより、クリエイトドラゴンゴーレムに要する精神力が並の人間の精神力をはるかに凌駕していたから。必要精神力はなんと40。クレアでも「覚醒の指輪」と「精神の指輪」から得られる合計30の精神力ボーナスがなければ行使できないもの。

「クレア、クリエイトドラゴンゴーレムの術式は販売しないのか?」

 ある意味当然なフリントの問いに、クレアは上手くごまかす。

「これ、混沌竜ぴーたんの助力がなければできないんだ」

「そうか、そうだな。こんなものがいくつもこの世に出回ってはたまらんな」

 納得の表情を見せるフリント。


「それより、これからみんなのボーナスタイムだよ!」

 ボーナスタイム、それは機械化竜ゴーレムの部品を打ち抜いたあとに残ったダークミスリル原材を工房ギルドのメンバーが分けあい、それぞれが何らかの製作を行う時間。ぴーたんも魔流による焼入れへの協力に同意してくれたので、メンバーそれぞれが自分自身のためのものを作成する。それぞれは熟考した後で、あるものはのみ、あるものは小槌、あるものはカンナの刃などを嬉々としてこしらえる。ダークミスリル製の大工道具など、これまでこの世に存在したことはない。

 それぞれの道具に魔流による焼入れを済ませた後、クレアカーペンターズのリーダーが、最後に1つぴーたんに焼入れを依頼した。「それをぴーたんからクレアに贈ってほしいんだ。皆の気持ちだよ」

 ぴーたんが受け取ったのは、黒金剛石カーボナートダイヤモンドがはめ込まれた繊細な細工の指輪。伸縮率を考慮しているのはさすがクレアカーペンターズ。

竜戦乙女ドラゴニックワルキュリアは竜のものなんだろ?」

 クレアカーペンターズを名乗る若い衆がぴーたんに確認する。

「クレアはオレのものじゃないよ。だけど代表してオレから贈らせてもらうね」

 竜の姿のまま、ギルドの皆にウインクする混沌竜ぴーたん

 ぴーたんは焼入れを済ますと、クレアの指に、皆からの指輪をはめた。

 同時に工房ギルドから歓声が上がる。


 指輪をはめた指をかざして、皆に嬉しいような恥ずかしいような表情を浮かべお礼を言うクレアの姿は、工房ギルドの面々にとっては、ワルキュリア(闘いの女神)ではなく、ブリギット(鍛冶の女神)として映ったのである。

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