5人目の犠牲者
大チャンス。
前回メベットがエリス宅を訪れたときは母と祖母付き。しかも初日はエリスになじんでいなかったメベットだったが、今はエリスにベったり。
エリスはビゾンとグリレに「夜の自由の遊歩道もぜひお楽しみください」と申し出た。
昼にメベットからもそのように言われていた姉妹は、ちょっと羽根を伸ばしたくなってしまう。そしてそこにエリスは追撃を入れる。
「マスカレードとトランスハッピーはぜひお寄りください。よろしければ先に百合の庭園で夕食とお風呂を済ませてから訪れてくださいませ。あと、来客用玄関の鍵をお渡ししておきますから、お帰りになりましたら、直接お部屋までお戻りくださって構いませんわ。メベットは私たちが責任を持ってお預かりいたします」
ビゾンとグリレは、エリスからのこの攻撃に屈してしまった。
「メベット、母は妹と出かけてきますね」
「メベットさま、お母さまをお借りしますね」
「はい、お母さま、グリレ叔母さま、いってらっしゃいまし」
ということで2人は先に百合の庭園でお湯を楽しんだ後に自由の遊歩道に出かけていった。
2人が帰ってくるまでの間。そこまでが勝負だとエリス-エージはほくそ笑んだ。横には父親譲りであろうライトブラウンの髪を可愛くツーサイドアップに結び、同じくライトブラウンのくりっとした瞳を持った少女が立っている。
ここはダイニングテーブル。エリスの左隣にフラウ、右隣にキャティ、正面にレーヴェ、その左にクレア。
で、これまではレーヴェの右の席が空いていたのだが、今はメベットが当たり前のような表情で座っている。さらにメベットは6歳の幼女らしく、素朴に彼女たちの不文律に切り込んだ。
「席替はないのですか?」
これに食いついたのはキャティ。彼女は唯一自分の席に不満を持っていた。なぜなら、いつもエリスはフラウのほうばかり向いていて、自分はエリスの後頭部しか見れないから。
「そうだにゃ、定期的な席替えは必要だにゃ」
が、他の3人はそれぞれ自分の席に満足しているので席替なんぞとんでもない。特に現在メベットが座っている席はエリスから最も遠く、しかも顔も見えない最悪の席。あそこに座るのだけは避けたい。
「席替をしたいメンバーだけでしたらいいだろう」と、レーヴェが呟いた。
「そうだね。自由意思大事だよね」と、クレアが続く。そしてフラウが止めを刺す。
「キャティ、そんなに席替えしたいのなら、メベットと席を交換すればいいのよ」
「いや、それでは意味がないにゃ」
慌てて打ち消そうとするキャティだったが、ロリに猛っているエリス-エージにはナイスアイデア。
「そうね、メベット、こちらにいらっしゃい。キャティ、席を交代してあげて」
エリスの指示にだれも逆らえない。なのでキャティは渋々とメベットと席を交代した。それに安堵する3人。しかし、そのうちの2人は自らの言葉に後悔することになる。
エリスはひたすらメベットを可愛がる。その結果、これまでエリスの後頭部を眺める役割はキャティの担当だったが、それがフラウに移ってしまった。クレアはもっとひどいことになっている。一方、メベット効果でエリスの表情を楽しめるようになったキャティは、結果的にラッキーなのであった。
ということで、食事を終えた6人は竜たちを連れてのお風呂タイム。ここでもエリス-エージは猛った。
「メベット、服を脱がせてあげましょうか?」
「お姉さま、私は1人で着替えはできます。だけど脱がせてほしいです」
エリスの言葉に、お着替えはできるんだからねと自尊心を見せながらも、その身を委ねるメベットにエリスは止まらない。
ゆっくりと1枚ずつメベットの服を脱がせるエリス。可愛いブラウスのボタンを1つ1つ外し、袖を抜く。可愛らしいスカートをゆっくりと降ろす。純白のタンクトップを両手を上げさせて引き上げる。そして可愛らしいおパンツさんをゆっくりと脱がせる。
「エリスお姉さま、ちょっと恥ずかしいです」エリスの目線に気付き、メベットが頬を赤らめる。
エリス-エージはそこに天国を見た。と、一斉に響く咳払い。
「お嬢、メベットが風邪をひいてしまうぞ」
レーヴェの辛らつな言葉に我に返ったエリスは、慌てて右わきに大地竜を抱え、左手でメベットの右手を取り、浴場に入って行く。その後に続く4人は、今後のことを考えると少し憂鬱となる。一方、そんなことにお構いなしの竜たちは今日も相変わらず打たせ湯スポットの取り合いを始めるのであった。
エリスはお風呂でメベットとのお背中流しっこを楽しみ、全身をたっぷりの石鹸で洗ってあげた。無邪気にくすぐったがるメベットの姿にエリスの猛りはますます盛り上がる。
「早くベッドに連れ込もう」
エリスは誰にも聞こえないようにそう独り言を言うと、いつもよりも早く風呂を切り上げた。
「メベット、今日は私の部屋で一緒に寝ましょうか?」
「いいのですか! お姉さま!」
エリスは他の4人に先んじてメベットを連れ、自分の部屋に引きこもってしまう。
後には失意の4人が残されてしまった。
ベッドの中でメベットがもぞもぞと動く。そのこそばゆさが心地よい。すると、メベットがエリスに、意を決したような表情で囁いてきた。
「お姉さま……」
「何? メベット?」
「あの…… 私にも…… レーヴェお姉さまのようにしていただけませんか」
ありゃ。エリス-エージは困ってしまった。
エリス-エージがメベットに猛っているのは「愛で心」。ひたすら可愛い可愛いをして抱っこしたいのだ。
レーヴェたちのように性的なお楽しみをメベットに求めているわけではない。
「だめですか、お姉さま……」
「そうね、メベットが女の子の日を迎えたら、その時に考えましょう」
「女の子の日って?」
「子供が産めるようになることよ」
「わかった、お姉さま」
「今日は抱っこしてあげるから、ゆっくりお休みなさい」
エリスはメベットをやさしく抱き抱えた。メベットはエリスの小さな胸に顔を押し当て、エリスに掴まってくる。
しばらくすると、メベットは寝息を立て始めた。
「可愛い、可愛すぎる」
エリス-エージは自身がロリ道の真髄を極めたのではないかと自画自賛しつつ、この柔らかい湯たんぽのような娘の感触を一晩楽しもうと決意した。が……。
ふぎゃぁぁぁあん……
ふぎゃぁぁぁあん……
キャティが絞め殺されるような泣き声を上げ始めた。
次に枕元の人形から泣きそうな声が響く。
「お嬢さま、もう私は不要なのか……」
続けてドアをノックする音。そして蚊の鳴くような声がエリスに届く。
「エリス、今晩はお情けをいただけないのでしょうか?」
さらに大地竜からの念話が入った。
「おいエリスちん、クレアが混沌竜の桶の中で泣いているぞ。キャティもうるさくて構わんから何とかしてくれ」
うー。
エリスはメベットを起こさないようにベッドから離れた。そして人形に
「今晩も苛めてあげるから待っていなさい」
と声をかけ、ドアの外に
「豚女は部屋で餌を待っていなさい」
と辛らつにつぶやき、その後ぴーたんの桶を覗き込んで
「部屋で待っていなさいな」
と優しく囁いた。
「さてと、まずはバカ猫から黙らすか」
ということで、今晩も平常運転。
白は泣き叫び、碧は呻き、紅は悶え、黒は天に上った。
と、ちょうどそこでビゾンとグリレが帰宅した。エリスは別宅に行き、2人を出迎える。
「おかえりなさいませ、ビゾンさま、グリレさま。今日はメベットは私の部屋で休んでおりますので、ご安心くださいね」
2人はこんな遅い時間までこの娘は何をしていたのかしらと訝ったが、自分たちもトランスハッピーで、さんざんはっちゃけてきてしまったので、何も言わずに、エリスに笑顔であいさつをし、そのまま部屋に戻って行った。
「さてっと」
エリスは一言つぶやくと部屋に戻り、今度こそ小さくて柔らかな人間湯たんぽを一晩愛で続けた。そんなエリスにメベットが寝言を囁く。
「お姉さまたち、大好き」
エリスはもう一度メベットを抱きしめると、極上の眠りに落ちた。




