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盗賊少女に転生した俺の使命は勇者と魔王に×××なの!  作者: halsan
エンジョイ デーモンズライフ編
147/186

おかまとおなべとクソジジイ

 茶売鰻ティーセラーイール。これはウィートグレイス領主レオパルド・ローレンベルク公の父であるフェルディナンド先公の異名。茶売ティーセラーはローレンベルク茶を世に広めた功績に対して、イールは「掴みどころのないクソジジイ」という博打スタイルに対してつけられている。さらに口の悪い者たちは「ウナギのジジイ」とストレートに呼ぶ。

 フェルディナンド公はウィートグレイス在住なのだが、ワーラン商人ギルド経営ライブハウス顧問の身分も持つ。ワーラン・ウィートグレイス間、通称「野菜の街道(ベジタブルロード)」を楽に移動したくなった彼は、それまで定期便でも2日必要だった同都市間の宿場を再整備してしまった。これまでは12刻で1回の馬車乗り換え、計4回つまり2日が移動に必要な日数であったが、彼はワーランとウィートグレイスの商人ギルドを説得し、3刻の距離ごとに宿場を建設してしまった。そして馬車も3刻ごとに乗換るようにする。この方法ならば、馬はより高速に馬車を引くことができる。こうして彼は1日半で同都市間を移動できるようにしてしまった。 なお、宿場の簡易休息施設や食堂は近隣農村の長たちに業務委託を行った。彼らは宿場において自らの作物直売も許されたので、農民たちにとってはちょっとした小遣い稼ぎの場になっている。

 また、この爺さまはフラウを丸めこみ、帰りは鳳凰竜ふぇーりんに送ってもらったりもしている。こうして、茶売鰻ティーセラーイールはワーラン・ウィートグレイス間を自由に移動できるようにしてしまった。

 さて、つい先日まで彼を「フェル爺さま」と慕っていた孫娘も、最近は彼のことを影で「ジジイ」呼ばわりするようになった。反抗期の少女は残酷である。

 さらにその孫娘は、ジジイに高価で強い酒を飲ませ、身ぐるみを剥いでしまおうと画策した。このジジイにして、この孫娘ありである。

 ここはカジノ「リルラッシュ」。エリスたちの打ち合わせから解放されたレーヴェは、勝利を確信しながら店に入った。

 そこでは期待通り、フェル爺さまがゲームアシスタントたちをからかいながらゲームに興じていた。他のメンバーは観光客中心であるためか、ジジイもおとなしい張り方で遊んでいる。

 レーヴェは一旦カウンターに座り、タイミングを見計らった。彼女の目的はジジイのケツの毛をむしること。ならば他のメンバーもベテランでなければならない。

「ウナギジジイ! 今日こそ泣かせてやる!」と、ベテランたちも徐々に集まってきた。 

「ほほほ、泣かせてほしいもんじゃの」と、ジジイはアシスタントの尻をひと撫でしてから彼女にチップをはじくと、席を1000リルテーブルに移した。それに合わせてレーヴェも席をカウンターからゲームテーブルに移す。そして孫娘の笑顔でジジイに近付いた。「フェル爺さま、先日スカイキャッスルを訪問したので、爺さまにお土産を買ってきたんだ」と、レーヴェはかばんから陶器製のボトルを数本取り出した。

「ほう、これはお前が選んだのか? レー坊」

「ああ、フラウと相談しながら決めた。爺さまが好きそうだと思ってな」

「さすがわしの孫娘じゃ、良い選択をしおる。この酒どもはスカイキャッスルでも通が好む逸品じゃよ。高かったじゃろ」

「ああ、でも大好きな爺さまのためだからな。奮発した。今日はこれを飲みながらゲームとしゃれこもう」 

 ここでフェルディナンド先公の目が光った。

「そうじゃな、よし、レー坊、お前はわしの隣に座れ。おーいマシェリさん、グラスを2つじゃ」 

「あ、いや、私は……」うろたえるレーヴェに気付かないそぶりでフェルディナンド先公は楽しそうに笑う。

「まあまあ、たまには可愛い孫娘と一杯やりながらゲームを堪能というのを楽しませておくれ。ジジイの頼みじゃ」 

 こうしてレーヴェの思惑は外れ、ジジイのペースでゲームが始まってしまった。

 ジジイはレーヴェのグラスが空くまでは自分のグラスに酒を注ごうとしない。一方レーヴェもこれ以上飲むとやばいと意識が警鐘を鳴らし続けている。策士策に溺れる。レーヴェは詰んでしまった。

 と、そこにベルルナルが魔王の腕を引っ張りながら、カジノにやってきた。

「ご主人さま、私はゲームをしたいです」

「じゃ、俺は予約を入れに行ってくる」

 相変わらずセクシーな衣装でニコニコしながら歩いてくるベルルナルさん。

「よう、薔薇色姫ローゼンプリンセス、久しぶりだな」と、カジノのあちらこちらから彼女に声がかかる。主におっさんからだが。そんな声を聞こえているのか聞こえていないかもしれず、彼女は見知った女性のところに歩を進めていった。

 そこには今日は勝負をあきらめた碧の麗人レディ・ブルーグリーンの姿。

「お姉さま、今日も遊んでください」

 どう見てもベルルナルの方が年上なのだが、彼女はレーヴェをこう呼ぶ。そしてレーヴェが返事をする前に、くんくんと可愛らしく鼻を鳴らした。 

「おいしそうな香りですね」彼女が目ざとく見つけたのは蒸留葡萄酒のグラス。するとその様子に気づいたフェル爺さまがアシスタントにグラスの追加を頼んだ。 

「薔薇色姫や、一杯飲むかの?」と言いながらベルルナルにグラスを持たせるジジイ。

 グラスを受け取り、そこに注がれる琥珀の液体を幸せそうに眺めるベルルナル。彼女は満たされたグラスをゆっくりと口に運び、味わうように酒を口の中で転がした。

「茶売鰻さま、おいしいです」両手でグラスを包み持ったベルルナルさんが嬉しそうな笑顔でジジイに返事をした。 

「おい、レー坊、どうせお前も酔いが回って勝負どころじゃないじゃろ? ここは場所を変えて遊ばんか?」

 ジジイがレーヴェの方を向いて声をかけた。続けてベルルナルも誘う。

「姫さんも、今日は博打じゃなくて違う遊びを楽しまんか? 旨い酒もたらふく飲めるぞ」

「おいしいお酒を飲みながら、おいしいクッキーを食べたいです」

「よっしゃ決まりじゃ、マシェリさん、チップの清算じゃ」

 ジジイはアシスタントマスターのマシェリに手元チップの両替を依頼すると、酒瓶を背嚢にしまい、右腕に嫌がる孫娘を無理やり、左腕に上機嫌の薔薇色姫を掴まらせ、悠々と店を出て行った。残されたベテランたちも「何か面白いことが起きる」との予感に、いそいそとチップの清算を始め、ジジイの後を追っていった。

 ジジイが訪れたのは「トランスハッピー」

「よう、マロンちゃん、マコトちゃん、今日はレー坊が良い酒を土産にくれたから皆で飲もう。ちょっとケーキショップに行って焼き菓子を買ってきてくれるかの」

「このクソジジイ、明らかに遊び慣れていやがる」と、レーヴェはいつの間にか店に馴染んでいるフェル爺に対してあきれた。すると、 

「あらいらっしゃいフェルディナンドさま。今日も楽しませてくださいね」と、マロンさんが美しい笑顔で返した。

「楽しませてくださいね?」レーヴェに嫌な予感が走る。普通は「楽しんでいってくださいね」だろう。マロンさんは何を言っているのだ? と。

「まあまあ、まずは乾杯じゃ」と、ジジイは背嚢から酒を取り出し、1本を店へのお土産とし、残りをテーブルの上に並べる。続けてウィートグレイスの名産の一つである様々なドライフルーツも取り出した。その酒瓶とドライフルーツをマロンさんとマコトさんも珍しそうに見つめた。

「酒はレー坊のスカイキャッスル土産じゃ。まもなくわしの孫婿どのがワーランと取引を開始するはずじゃからの、まずは味に慣れておかんとな。この強い酒にはドライフルーツや焼き菓子が合うぞい」

「ちょっと待てフェル爺、それは何の話だ?」

「ん? グリレの婿どのが試験的に荷馬車を仕立ててグリレとともにワーランに向かっているぞ。 ビゾンの婿どのからマルスフィールド、ワーラン経由でウィートグレイスにも連絡が来ておる。知らんかったのか?」

 実はエリスたちが提案したスカイキャッスル・ワーラン定期便に興味を持ったスチュアート卿が、実際の運搬経路や時間、コストなどを算出するため、本人自らワーランに向かっており、間もなく到着するとのこと。この情報はマリアからエリスたちにも既に通知されており、エリスも打ち合わせの時に4人に話をしていた。と、そこまではレーヴェも聞いていた。しかし彼女は恐怖の次姉も同行しているとは聞いていなかった。

 一気に酔いがさめるレーヴェ。

「なあ爺さま、もし私がこんなところで酒を飲んでいるとグリレ姉さまに知れたら、私はどうなってしまうのだろう」

「知らん、その時はその時じゃ」

 無責任なジジイの返事にレーヴェは悩む。と、そこでベルルナルがレーヴェの口に焼き菓子を差しこんできた。

「お姉さま、おいしいですよ」そしてベルルナルも幸せそうに焼き菓子をカリカリと食む。

「そうだな、その時に考えればいいか」と、レーヴェも考えるのをやめた。すると胸から暴風竜すーちゃんがレーヴェに声をかけてくる。

「レーヴェちゃん、僕も飲みたい」 

「竜は酒を飲むのか?」

「必要ではないけどたしなむことはできるよ。面倒だからこの恰好のままでいいや」と、すーちゃんはテーブルの上に舞い降りた。そしてここにグラスを置けと、翼でぺちぺちとテーブルを叩く。 

 ちょっと驚いたマロンさんだがそこはプロ。浅目のグラスを用意し、酒を注ぐ。するとそこに頭を突っ込み、酒を口に含むと、頭を持ち上げて飲み込むすーちゃん。その姿はウッドペッカーのように愛らしい。 

 彼らはしばらくすーちゃんの愛らしい姿を肴にしながら、上質の酒とつまみを楽しんだ。と、当然強い酒。それぞれの気分も良くなる。ステージ上ではおかまちゃんたちが豪奢な衣装で歌い踊り、皆の気分はパラダイス。

「場も温まったことだし、そろそろじゃの」

 爺さんの一言に敏感に反応したおかまのマロンちゃんとおなべのマコトちゃん。

「そろそろ行きましょうか?」

「オレもいつでもオーケーだぜ」 

「さいでは準備に入るかの」

 そう言い残し、フェルディナンドとマロン、マコトはステージの奥に消えていった。後に残されたのはレーヴェとベルルナル、そしてすーちゃん。ベルルナルは相変わらずニコニコしながら焼き菓子やドライフルーツと蒸留酒を交互に口に運び、すーちゃんはレーヴェにお願いして今は人型レーヴァテインとなり、ベルルナルと乾杯を繰り返している。一人さびしいレーヴェさん。

 すると店内の灯りが暗くなり、ステージが照らされた。そして司会者の声がこだまする。

「それでは会場の皆さま、当『トランスハッピー』名物をご堪能くださいませ!」

 司会者の紹介が終わると同時に、店内は原始的な打楽器の音色に染められた。素朴ながらも躍動的な打楽器のリズム。 

 続いて同時にステージ上に3名のダンサーが現れた。それはマロンちゃん、マコトちゃん、そして……、茶売鰻のジジイ。

 問題は3人の恰好。3人は色違いのブラジャーをまとい、股間には各々お気に入りデザインのコテカと呼ばれる長さ10ビートほどの筒を掲げている。それはいわゆるペニス・ケース。それが肌色の下着に据え付けられている。コテカの先には細い紐が輪に結わえられており、それを首にかけてコテカがそそり立つようにしている。そして他は布一つ身につけていない。3人はその姿で踊り狂う。これがジジイの持ちネタ「エレファント・フィーバー」という熱狂的なダンス。

 おっぱいを隠し、ちんこを隠した3人に、おかまとおなべの区別はつかない。まさに何でもありのこの踊りは、フェルディナンドが店で踊って見せた後、「トランスハッピー」の名物ショーとなった。ブラジャーとコテカはブティックマスカレードが緊急で用意し販売開始。そして今に至る。

 ステージには次々と常連たちが、店にキープしてあるマイブラジャーとマイコテカを身につけ、ステージに上がっていった。それは狂乱の舞台。

 いつの間にか薔薇色姫もその豊満な肉体にマロンさんがあてがった薔薇色のブラと薔薇色のコテカを身につけてステージに上がっていた。その横ではすーちゃんがレーヴェそっくりだが、おっぱいもちんこもない姿で全裸で踊っている。

 まさに悪夢。乗り遅れたレーヴェはこの日、1人異空間に残されてしまったのである。

 そしてもう1人。

「何してんだあいつは……」

 順調にマルゲリータさんの予約を取り、ベルルナルを迎えに来た魔王も、店の入り口で立ち尽くすこととなる。


 ワーランには2つの幸運が存在する。

 1つは、百合の庭園(リリーズガーデン)のレストランで、碧の麗人レディ・ブルーグリーンの歌に出会える幸運。

 もう1つは、自由の街道フリーダムプロムナードのトランスハッピーで、薔薇色姫ローゼンプリンセスの踊りに出会える幸運。

 

 後にそう呼ばれるきっかけとなった一夜を終えた一行は、それぞれ帰宅の途についた。

 ブラにコテカという頭のおかしい装いを、店の人たちに手伝ってもらって何とか着替えさせ、店員たちに礼を言ってから、魔王はすっかり気持ち良くなってふわふわしているベルルナルを抱えて城に帰った。どうもこの状態のベルルナルに魔王は弱い。そう、幸せそうにだらしなく酔っぱらっている彼女を見ると、無性にいじめたくなってしまうのだ。

「自重しなければならんな」そう呟きながらも、今宵も魔王さまはベルルナルさんの衣装を引き裂き、ベルルナルさんは悲鳴を上げるのであった。 

 

「今日はお楽しみだったようね」

「お嬢さま、私は酒臭くないか?」

「臭いわよ」

「すまない」

「いいわよ。体中からお酒を抜いてあげるから覚悟なさい」

 ほんのりと紅に染まったレーヴェさんはエリスの嗜虐心を刺激した。そして今宵はレーヴェさんもいつも以上の悲鳴を上げるのであった。

 


 「ガチホモと云ふ品格」というタイトルのショートエッセイ集を投稿しました。完結しています。マッスルブラザースファンの方にはオススメですが、それ以外の方は読まない方がいいと思います。

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