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フリーダムプロムナード 午前の部

「はい整列」

 エリスの指示に、宝石箱の4人と男性型となった5柱の竜がエリスの前に2列で並んだ。

 今日のために、女性陣と男性陣は、各々お揃いのユニセックスな衣装を仕立てた。

 エリスと大地竜エリソンは白のブラウスに茶褐色のベスト。同じく茶褐色のハーフパンツ。

 レーヴェと暴風竜レーヴァテインは、葡萄酒色のシャツに黒のジャケット、同じく黒のタイトパンツ。レーヴェは愛用のカタナ、レーヴァテインは薄青のサーベルを帯刀している。

 フラウと鳳凰竜ブラウズは、森林色のロングTシャツに白の七分丈パンツ。

 クレアと混沌竜クレストは、黄土色のネルシャツに青藍のオーバーオール。

 キャティと氷雪竜キャティスは、胸に宝石箱のフラッグが染められた白のTシャツに同じく白のショートパンツ。キャティは勇者を切り裂くもの(ブレイブリッパー)一式、キャティスは白銀色のガントレットクロウとレガースクロウを装備。

 ちなみに宝石箱のTシャツはブティック「仮面舞踏会マスカレード」で絶賛販売中。

 今日は新たな街のグランドオープンの日。セレモニーが大好きなおじさまおばさま共のために、ライブハウスで落成式を行うこととなったので、エリスたちは町のコンセプトを皆に理解してもらうために、わざわざこうした衣装を用意した。

 ライブハウスには続々とワーランの重鎮たちや市民、周辺の村からの観光客などが集まってきている。その中にはすっかり小奇麗になったキャティの父親、ギャティスたちの姿も見える。ギャティスは西の魚村(仮称)の村長として、来賓の一人としての出席。

 そして開会式。舞台にはラウドネスの魔法を纏ったエリスと、宝石箱の面々と竜の面々が交互に一列に並んだ。会場からはその姿に見惚れるもの、早速着こなしを真似しようと画策するものなどのため息や囁きが響く。

 そしてエリスの挨拶。

「みなさまお集まりいただきましてありがとうございます。本日はこの町が生まれ変わった日となります。この町のコンセプトは『気にしない』です。男だろうと女だろうと気にしない、子供だろうと年寄りだろうと気にしない。みんなが楽しければそれでいい。その意志を私たちの衣装に込めています」

 エリスのあいさつに皆が拍手をする中、レーヴェとフラウが白い布を掛けてある看板に向かった。そしてそれをエリスの合図で皆に公開する。

 看板に書かれた文字は「自由の遊歩道」

「本日、『交わる町(クロスタウン)』は、『自由の遊歩道フリーダムプロムナード』に生まれ変わりました!」

 こうして、新たな街「自由の遊歩道」は産声を上げた。

 

「おいおい、賑やかだな」

 昨日ワイトの迷宮入口喪失騒ぎで遅くなってしまった勇者グレイと盗賊ギースは、街で一泊していた。そして朝、朝食を食べに街に出てみると、普段よりも人が少ない。で、露店のあんちゃんに理由を聞いたところ、あんちゃんも今日は仕方がないなという諦めた表情でギースたちに理由を教えてくれた。「今日は新しい街のグランドオープンだよ」と。

 興味をもった2人は新しい街とやらに足を運んでみることにした。

「へえ、ずいぶんと賑やかになったもんだ」

 ギースは感心する。一方グレイは、この街を訪れるのは初めてだった。グレイにとってはワーランイコールマリリンさんだったから。

「この先に良いカフェがあるから、そこで朝飯を食ってから、午前のお茶としようぜ」

 ギースはグレイを誘い、街の奥にあるカフェに顔を出す。

「へえ、店名が変わったんだ。ポット&ケトルとは、こ洒落た名前だな」

 ギースを先頭にして2人が店内に入ると、そこは様々な人たちで賑わっていた。そこでギースは目ざとく意中の人を見つける。

「失礼、混んでいるので相席よろしいでしょうか?」

「どうぞどうぞ、あら、ギースさま、お珍しいですね」

 4人がけに並んで腰掛けていたのはアイフルさんとクレディアちゃん。今日はグランドオープンということで、ティールームをオープンする前に軽い朝食をポット&ケトルで楽しもうとやって来たのだった。

「勇者さま、ご無沙汰しております」

 クレディアの突然のあいさつにびびるグレイ。なぜこの娘は俺のことを知っている。するとギースがグレイに耳打ちした。

「ウィートグレイスのダークフィナンス家元夫人と娘さんだ。今はダークフィナンスの名を捨て、この街で店を開いている。騒ぐなよ、察してやれ」

 ところがグレイは2人の身の上よりも、自分がギースではなくてグレイだとばれているのではないかということに動揺した。グレイもギースの耳元で囁く。

「なあ、もしかしたら俺は勇者だって皆にバレているのか?」

「皆にはバレちゃいないだろ、この2人だって過去は忘れたいだろうし、お前のことをわざわざ言いふらすこともないさ。それより注文だ」

 ギースはアイフルにわざとらしくこの店のおすすめを尋ね、何とか会話に持って行こうと躍起になっている。

 と、ちょうどアイフルたちが注文したメニューが届いた。それは魚介のスープに生野菜、そして小さいパン。

「このスープがお店のおすすめだそうですよ」笑顔でギースにメニューを紹介した後、2人は上品に食事を始めた。ギースたちもそれに習って同じものを注文する。

 ギースは幸せだった。まさかこの女性の食事姿を目の当たりにすることができるとは。

 アイフルの食事が終わるのと、ギースたちの食事が届くのはほぼ同時だった。会釈をしながら席を立つアイフルたちにギースは慌てて声をかける。

「今日はティールームはお休みですか?」

「いえ、これから開店の準備を致しますわ」

「そうですか、それではまた寄らせていただきます」

「お待ちしておりますね」

 そして店を出るアイフルとクレディア。するとクレディアがアイフルをからかうように囁いた。

「あのギースというおじさま、お母さまのことをずっと見つめていましたわ。もしかしたらもしかしちゃうかも」

「あらあら、それは困りましたね」

「バスおじさまもいるし、困っちゃうわね、お母さま」

「まあ、この子ったら」

 平和なティールームである。

 

「ねえ、ご主人さま」

「なんだいベルルナルさん」

「今日はご予約されてますよね」

「ああ、夕刻だ」

「早く連れて行ってください。ゲームを楽しみに行きたいです」

「あのねベルルナルさん、そういう欲望を我慢するのも大事だぞ」

「それでは今からゲームをするのは我慢するので、抱いてください」

「ダメだ。今日の俺はマルゲリータさんとあうあうするのでとっておくんだ」

「それでは街にお買い物に連れて行ってください」

「お小遣いは100万リルまでだぞ」

「私は100万リルをゲームで使いたいので、私の服はご主人さまのお小遣いで買ってください」

「仕方がないな、10万リルまでだぞ」

「ご主人さま大好き」

 女性化の際にネジを何本か忘れた上に、ギャンブル大負けのショックと、魔王のベッドテクニックにより完全に脳がぶっ飛んでしまったベルルナルさん。悪魔の面倒を見ることもどこかに飛んでしまっている。ところがそういう事態に全く興味のない魔王さま。


「魔王とベルルデウスさま、今日も出かけるみたいだぜ」

「行き先を知りてえな」

「ベルルデウスさまの悪魔察知力は尋常じゃねえぞ」

「こいつなら大丈夫だろ。おい、影に潜む者(シャドウストーカ-)、ちょっとお前魔王たちを尾行してこい」

「なんだよその特攻隊は。嫌だよ」

「大丈夫だ、魔王やベルルデウスさまを襲うわけじゃないんだから、見つかっても散歩してたとか適当に言い訳しとけ」

「仕方ねえな。バレたらすぐに逃げ帰ってくるからな」

 こうしてベルルナル=ベルルデウス=ベルルエルの束縛から逃れた悪魔たちは、魔王とベルルナルを怒らせない程度に暴れるための準備を着々と進めていった。


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