6歳幼女VS8歳少女
私はメベット・チャーフィーです。今日は朝から、お父さまとお母さまと一緒に貿易都市ワーランに来ています。
今日は色々と驚きました。
私達を助けてくださった竜騎士さまが私のおばさまだったこと。ワーランには5匹の竜がいること。
そして……。私には竜戦乙女の資格がなかったこと。ちょっと悲しいです。
私の試験が終わった後、竜戦乙女の方々は竜2匹でどこかに飛んでいってしまいました。
竜戦乙女は皆さまステキでした。
レーヴェお姉さま、あ、「お姉さま」と呼ぶことをお許しいただいたんです。嬉しいな。っと、お姉さまの美しさは一番。次に見惚れてしまったのはすらっとして全身真っ白なキャティさま。灰色の射抜くような眼に憧れちゃいます。でも、お手本にしたいのはフラウさま。優しそうで、物腰が優雅で、……胸も大きくて、憧れちゃいます。クレアさまはどちらかと言うと本当のお姉さまみたいな感じです。なんでも気軽にお話できそう。
もう一人の金髪の娘は知らない。何か威張り散らしちゃって、マルスフィールドさまとも直接お話をしたりとか、レーヴェお姉さまに命令したりとか、色々気に食わないです。何であんな嫌な子に竜戦乙女の資格があって、里芋娘の私に資格がないのかしら。世の中って不公平です。
「メベットや、マリアさまがワーランの街を案内してくださるそうだよ」
お父さまに呼ばれた私は、お母さまと手をつなぎ、お外に出ました。
「マルスフィールドさま、チャーフィーさま、残念ですが百合の庭園は男子禁制、緋色の洗濯物となりたくなければ近寄らないでくださいまし。その代わりと言っては恐縮ですが、紳士の街に新たなホテルを開業いたしましたので、今晩はそちらにご案内いたします。そしてビゾンさま、メベットさまは、宝石箱が自宅に部屋を用意しておりますので、そちらにご案内いたしますね」
マリアさまがお泊りの説明をしてくれました。ベッドで眠るのは久しぶりです。楽しみだな。
「それでは交わる町から参りましょう」
マリア様の先導で、護衛のおじさまたちに囲まれながら、私達は大きな建物から南に出発しました。
しばらく歩くと、お腹が空くような良い匂いがしてきました。
「ここからが交わる町となります。右手に見えてきましたのが、ワーランの新名物『蒸し料理』の店『スチームキッチン』です。まずはこちらで昼食をご案内いたしますね」
マリアさまはおじさんの一人に何か耳打ちすると、おじさんは南の方に走って行きました。その後私たち4人と、マリアさま、護衛のおじさん2人でお店に入りました。お店の中もいい匂いです。
「ミャティさん、お願いしていたものをよろしくね」
マリアさんがお店の人に声をかけると、奥から
「かしこまりましたにゃ」
と、猫獣人訛りの返事が聞こえました。そしてすぐに小さなウサギ娘さんが料理を運んできてくれます。
「大量の蒸気で調理するので、余計な油が落ちてヘルシーですよ」
ヘルシーという言葉に敏感に反応するビゾンお母さま。お母さまはそういう言葉が大好きです。
料理はお魚と鶏肉をお野菜と一緒に頂きました。一緒に運ばれたクレープで巻いて食べると美味しかったです。
「護衛のおじさんたちのお昼はどうしたのかな」
「メベットさまはお優しいですね。ご心配なく。もう一軒の蒸し料理店からお仕事をしながら食べることのできるパンをお届けしてありますよ」
マリアさまにほめられちゃいました。
食事が終わって一休みしたら、再び外をお散歩です。
「左手は現在エリスファイナンスが大規模施設を建設中です。まもなく完成するでしょうから、その際は改めてお越しください」
するとマルスフィールド公が、どんな施設ができるのかマリアさまに質問なさいました。するとマリアさまは私の方をチラッと見てから、マルスフィールド様に耳打ちをなさいました。それは楽しみだとゴキゲンのマルスフィールドさま。いったい何ができるのだろう。
次に左手にブティック、右手にカフェがありました。どちらも王都に比べると小さいですが、おしゃれな感じです。すると次に右手に広そうな建物が見えてきました。
「あちらはライブハウスです。城塞都市のオペラハウスを参考にいたしました。規模こそオペラハウスの三分の一程度ですが、300人は入ることができます」
ライブハウスってなんだろ? でも、今は何もやっていないみたいです。
すると今度はお茶の良い香りがしてきました。
「あちらがウィートグレイス産のローレンベルク茶を販売しております「宝石箱のティールーム」でございます。守護竜さまのお気に入りの場所ですよ」
すると思い出したようにマルスフィールド公が笑い出しました。
「よくよく考えれば大地竜さまのあの姿は平和の証なのかもしれぬな」と。
私にはどういうことなのかわかりません。
右手には先ほどマリアさまが仰っていたパン屋さんがありました。名前は「ワーラン名物スチームブレッド店」だそうです。すると今度は甘い香りがしてきました。
「あちらがクロスタウン営業第一号の『宝石箱のケーキショップ』です。5色の蒸しケーキが名物ですわ」
そうしたら、おじさんの一人が私にかごを渡してくださいました。
「メベットさま、そちらにケーキが入っておりますから、おやつの時間にお召し上がりくださいね」
かごを覗いてみると、ナプキンの下にきれいな5色の柔らかそうなお菓子が並んでいました。楽しみだなあ。
「クロスタウンはここまでです。この先は百合の庭園となりますので、殿方はご遠慮くださいね」
そう私たちに説明くださいながら、マリアさまは空を見上げます。
「ああ、帰ってきましたね。あちらをご覧くださいませ」
マリアさまが南の空を指差すので、皆が釣られてその方向を見ました。すると最初は小さな黒い点だったものがどんどん大きくなります。
それは大地竜を両足に抱えた暴風竜と、その横を飛ぶ鳳凰竜でした。驚いている私達の前に、大地竜がゆっくりと降りてきました。そして中から声がします。
「これはこれはマルスフィールド公、それにチャーフィー卿、ようこそいらっしゃいました」
大地竜から降りてきたのはレオパルドお爺さまとルクスお祖母さまでした。お二人は王都にいらっしゃったことがあるので覚えています。あとはキャティさま、クレアさまと金髪娘の3人。
次に鳳凰竜が舞い降りました。
「よう、マルスフィールド公にチャーフィー卿、お元気だったかの?」
「義兄さま、姉さま、お元気でしたか?」
何と鳳凰龍の背中からフェルディナンドひいお爺さまとヒュンメルさまが降りてらっしゃいました。なぜ二人は竜に乗れるのかしら。続けて降りてきたのはフラウさま。竜から降りる姿も優雅でお美しいです。
そして最後に暴風竜が着地し、レーヴェお姉さまが颯爽と竜から降りられました。もう、ステキ過ぎて私は死んじゃいそうです。
「待たせたなメベット、フェル爺さまたちを迎えに行っていたのだ」
レーヴェお姉さまが私の頭をなでてくださいました。今日は髪を洗うのをやめようかしら。
「それでは皆さま、こちらで一休みくださいな」
と、金髪の娘がお姉さまたちを差し置いて私たちに言いました。癪だわ。でも、ここで嫌な顔をするのはレディではないので、私は我慢して皆さんと一軒の町屋敷に通されました。
「それでは今晩は男性陣は紳士街で夕食と宿泊、女性陣はリリーズガーデンで食事をしてからこちらに宿泊ということでよろしいですね。ヒュンメルさまはどちらにいたします?」
「いじめるなよエリス、当然俺もジェントルメンストリートに決まっているだろ!」
あれ? 以前お会いした時のヒュンメルさまはどことなく頼りなさ気でしたけど、今のヒュンメルさまは自信たっぷりでちょっとかっこいいです。あの小娘にも敬語を使わずにお話しされていますし。ちょっとどきどきしちゃいました。
夕方、私達はお父様たちと別れ、宝石箱の皆さま、ルクスお祖母さま、ビゾン母さま、そしてマリアさまの9人で、南にある女性専用のレストランに行きました。そこはたくさんのおばさまやお姉さま方で賑わっていました。
「レーヴェ、特別サービスで皆さんに披露してあげたら?」
また小娘がお姉さまに威張っています。本当に腹が立つ。でも、マリアさまも小娘に同調しました。
「レーヴェさま、ぜひともお願いしますわ」
するとまんざらでもないような表情をして、お姉さまが席を立ち、お店から出て行かれました。
そうしているうちに料理が運ばれてきます。お姉さまの分はありません。なので少し心配になっちゃいました。
あ、突然お店の中が薄暗くなりました。だけど、一箇所だけ明るいままです。私もお母さまもそちらに目を向けました。そこに立ってらしたのは……。
マリアおばさまが店のお客様に紹介されました。
「本日は王都からお客様を迎えておりますゆえ、特別にレーヴェさまに歌を披露していただくことになりました! 皆さまもお楽しみくださいませ!」
途端に店内が歓声に包まれました。色々なところから、ラッキーだわとか、こんな偶然に出会えるなんてとか、喜んでいる声が聞こえます。すると一際高い声が響き渡り、皆さまは静かになりました。
……。
涙が出ちゃいました。凛々しいお姿のレーヴェお姉さまが歌われている間、私は見惚れ聞き惚れました。頭のなかが真っ白です。
歌が終わり、華麗にお辞儀をなさったお姉さまは、そのままの凛々しいお姿で私たちの席に戻られました。ニコニコしているお祖母さまと、相変わらず歌だけは上手いわねと皮肉を言っているお母さま。そしてとても嬉しいことに、お姉さまは私に感想を聞いてくださいました。
「どうだったかな? メベット」
「ステキでしたお姉さま!」
私はそう伝えるしかできませんでした。もっと伝えたい気持ちはあるけど、他に言葉を知らないから。勉強しなきゃ。
食事の後、マリアさまと別れた私達はお姉さま方に部屋に案内していただきました。お祖母さまとお母さまと私。もともと別の建物だったのをつなげたそうです。
そしてその後、お風呂に案内されました。私とお母さまはびっくりしました。こんなお風呂、王都でも見たことがありません。きれいなお湯が流れ続け、ほのかに明るいお風呂場は幻想的です。お祖母さまは2回めということで、私たちにかけ湯と浸かり湯を教えて下さいました。
次に驚いたのは、お姉さま方が桶で竜を洗っていることです。私はお姉さまの後ろに立って様子を見てみました。お姉さまは群青の飛竜を両手で優しく洗っています。竜は気持ちよさそうな顔をしてアヘアヘしています。
「痒いところはないか? すーちゃん」
「大丈夫だよ、レーヴェちゃん」
すーちゃん? 私はお姉さまに尋ねました。
「ああ、暴風竜の名前だ。 メベット、お前も洗ってみるか?」
私はおずおずと手を差し伸べました。すると竜に睨みつけられましたが、怖いのを我慢して手を伸ばしました。
「へえ、さすがレーヴェちゃんの姪っ子。洗うの上手いな」
アヘアヘしてくれるすーちゃんさま。ちょっと嬉しいな。
一方で、金髪の娘がキャティさまと下品な歌を歌って喜んでいます。馬鹿みたい。何であんな人がお姉さまたちと一緒にいるんだろ。お金持ちの娘か何かなのかしら。
そして夜。竜たちの寝床を見せてもらってから、私たちは奥の部屋に戻りました。フラウさまが、私たちのために一部の明かりをつけたままにしてくださいました。トイレの場所も教えていただきました。このトイレにも驚いちゃいました。気持よくて癖になりそうです。何でもクレアさまが開発した据置型のものもあるということで、私達の家にシャワーと一緒にプレゼントしてくださるそうです。お母さまがとても喜んでいました。私も嬉しいです。
そしてお休みなさい。
お母さまは久しぶりのベッドに疲れたお体を横たえた後、すぐに眠りにつかれました。お祖母さまもすぐに寝息を立てられました。でも私は興奮して眠れません。今日は素晴らしい一日でした。ああ、お姉さま、まだ起きていらっしゃるかしら。ちょっと部屋をお尋ねしてみようかな。
明かりをつけてくださってあったので、私はそっと部屋から出て、お姉さまの部屋に忍び足で向かいました。それから、念のためドアの鍵穴からお姉さまの様子を覗きました。だって、すでにお休みでしたら申し訳ないんだもん。
そこには、ベッドの上に全裸でぺたんと女の子座りをしているお姉さまがいました。でも様子が変です。
お姉さまが切なそうに息を吐く音が聞こえました。お姉さまのお顔は、昼間の凛々しいお顔ではなく、儚くて、泣きそうで、弱々しくて、とても可愛らしいお顔でした。私は見惚れてしまいました。
すると、お姉さまの裸の両胸を小さな両手が覆いました。それが動く度にお姉さまが声を漏らします。お姉さまの後ろに誰かがいます。誰かはお姉さまの後ろから、片方の手をお姉さまの乳房から顎に移動させ、そっと顔だけを横に向かせました。お姉さまは恥ずかしそうに、でも求めるように、横を向かれます。
「ああ、お嬢さま……」
絞りだすような声の後、お姉さまは誰かと長い時間くちづけをしました。その誰かとは、あの憎らしい金髪の娘でした。そして私は金髪の娘と目が合いました。
……。
動けません。理由はわかりません。声も出せません。ただただ私は娘の目と娘とお姉さまの姿に囚われました。
お姉さまの胸を覆っていたものは、徐々にお姉さまの下に向かいます。お姉さまはくちづけを終え、再び切なそうに娘を見つめました。でも、娘は私から目を離さずに、お姉さまを娘の方に向かせ、お姉さまをいじめました。
美しかったのです。金髪の娘、エリスと、レーヴェお姉さまの抱き合う姿が美しかったのです。二人の交わす喘ぎ声が耳に心地よかったのです。私は動けませんでした。まもなくお姉さまが一際大きな悲鳴を上げてから、ぐったりとしました。それと同時に、私はとても眠くなり、そのまま眠ってしまいました。
「この子が覗いていたわよ」
「途中から気づいていた。すまん」
「いいのよ。この子には睡眠の指輪を使っておいたから、部屋に運んでおあげなさいな」
「そうする」
「ひと通り回ったら2回戦目よ。今日は気分がいいからもっと虐めてあげるわ」
「ああ、待っている、お嬢さま」
翌朝私はお母さまの隣で目を覚ましました。昨日のことは夢だったのかしら?
朝食に呼ばれた私たち、すると、金髪の娘が私に話しかけてきました。
「可愛いメベットさま、昨夜はよくお休みになられましたか?」
その笑顔を正面から見てしまった私は虜になってしまいました。なぜ私はエリスさまをあんなに嫌っていたのだろう。こんなにステキな人なのに。
エリスさまはその後も色々と優しくしてくださいました。大地竜の背にも乗せていただきました。ブティックできれいな街用のワンピースも買ってくださいました。私は嬉しくなって、エリス様にお願いをしました。
「エリスさま、ご迷惑でなければ、エリスお姉さまとお呼びしても構いませんか?」
「いいわよメベット、フラウもクレアもキャティもみんなあなたのお姉さまよ」
私は天にも昇る気持ちになりました。するとエリスお姉さまが突然私の唇にキスをしました。私の全身に電流が流れます。
「これは内緒ね」
エリスさまの全てを見透かしたような笑顔に、私は頬を熱くして頷くしかありませんでした。
お姉さま、大好き!




