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ひきこもり暴風竜

本日3発目。そして100話目であります。

桃尻さん 桃尻さん お腰につけた 黒パンティ 一つわたしに 下さいな

ヤりましょう ヤりましょう これから鬼との あうあうに 参加するなら ヤりましょう

イきましょう イきましょう あなたについて 何処までも 家来になって イきましょう


 エリスが全裸仁王立ちで右手を掲げて熱唱するのは、今日のライブで覚えた「桃尻さん」

「ギャハハハハ!」キャティが浴場の床を両手でバンバン叩きながら笑い転げる。

「やっぱりコミックシンガーさんは最高ね。今度プライベートコンサートをお願いしようかしら」

……。

「エリスちん、周り見ろ」

 桶の湯の中にお茶を入れてもらって、ほんのり香りを楽しんでいるらーちんが、エリスにツッコミを入れる。そこには、あまりの歌詞の醜さにどう反応していいかわからず、唖然としているフラウとクレア。

「なんだお嬢、歌い終わったか。では次は私が……」

 相変わらず他人の歌を聞いていないレーヴェ。そして彼女の熱唱をBGMに改めて風呂を楽しむ4人と2匹。


「ということで、暴風竜の探索に出かけます」

 風呂からあがったエリスが全員に宣言する。

 どうも、ワーランの守護竜の話が各地に飛び火してしまい、色々と騒ぎになっているらしい。今はまだ何もないが、そのうち各地からの使者やら何やらが到着すれば、当然らーちんとエリスは出向かねばならなくなる。ならばその前に出かけてしまえというのがエリスの考え。

「で、らーちん、お留守番してる? それとも一緒に行く?」

 エリスは割と真面目にらーちんに確認する。一応ワーランの守護竜なので。

「エリスちん、俺に放置プレイは通用しないよ。行きます。行きますとも」

 と、訳の分からない理屈で一緒にいくことを明言するらーちん。

「エリス、ルートはどうするんだい?」

 とのクレアの質問にレーヴェが重ねる。

「守護竜さまを連れて実家には帰りたくはないな」

 そう、南のウィートグレイスは、現在はレーヴェの父が領主として治める都市。

「なら、漁村経由でまいりましょうか」

「そうだねフラウ、せっかくだから海沿いを伝っていきましょう」

 西の漁村経由で、ウィートグレイスの漁村にはよらずにそのまま南端まで。これが今回の旅程となる。


 翌朝。

 念のためエリスは評議会議長でもあるマリアにしばらく留守にすることを告げに行く。これは間もなく訪れるであろう各都市からの守護竜調査員への言い訳をこしらえておくため。

「大地竜が生活していた場所の後片付けに行ってまいります」

 これが今回エリスが用意した言い訳。そう言われてしまえば、マリアも気が楽。使者たちにそう伝えればいいのだから。

 同じ頃、クレアは馬車を工房ギルドに持込み、調整を行っていた。これまでの旅で、馬車内のリビングは不要だと判断。エリスとクレアの2人が打ち合わせを行うスペースだけを残し、余剰スペースを改造に回す。今回付け加えたのは、らーちんとぴーたん用の湯桶ゆおけ。それから各ベッドを布で目隠しし、他のベッドから見えないようにする。これもこれまでの旅の成果。エリスとの夜は2人だけで心ゆくまで楽しみたい。

 フラウは食材、レーヴェは衛生用品を買い込んでくる。

 こうして整う旅の支度。


 そして今日もブヒヒヒヒ


 衛生用品を馬車にしまうのが遅い、何グズグズしているのよと責められ、泣かされるレーヴェ。

 夕食で私の気を引こうと思っても、見え見えなのよ豚女と、意地悪をされて泣かされるフラウ。

 ほら、見えちゃうでしょ?と、桜色が首元から見えてしまうのを指摘されて泣かされるクレア。

 喉をなでられ、ごろごろにゃんを連呼させられた挙句にお腹もなでられて泣かされるキャティ。


 ということで出発の朝が来た。


 フラウがさっと仕上げたクレープとフルーツで軽く朝食を摂り、5人と2匹はまず西の漁村に向かう。

 そしてそこで改めて老婆から暴風竜の話を聞き、海沿いに南下していった。

 馬車が走ることができるところは魔導馬に馬車を引かせ、荒れ地や松林は馬車を飽食のかばんにしまい、各々が魔導馬に跨って進む。このときは、らーちんは人型になってエリスと同乗。ぴーたんはクレアが背中に紐で縛ると、ちょうどぴーたんが魔導馬の背に座る位置に来るので、クレアが面倒を見る。

 2日後に漁村が見えるも、彼らには気付かれないように通り過ぎる。そこはウィートグレイスの漁村だから。

 そこからさらに2日。エリスたちは岬の先に到着した。

「お、近くにいるかな」

 大地竜ランドドラゴンのらーちんが何かに反応する。

 彼は元の大きさに戻り、岬周辺を巨体を操り、調べていく。

 そして発見したのは洞窟。

 高さは100ビートもあろうか、周辺は苔むしており、少なくとも人の手が入った形跡は全くない。

「らーちん、中に連れて行ってもらえる?」

 エリスは大地竜に依頼するも、彼は何かを思案しているように見える。

「エリスちん、試しにそこから、暴風竜に呼びかけてみてくれるかい。あ、俺の影に隠れてな」

 大地竜に言われたとおりにエリスは彼の影に身を隠してから、呼びかけてみる。

「暴風竜さん、いらっしゃいますかー!」

 同時に乾いた音を響かせる大地竜の鱗。彼に襲いかかったのは、無数の風刃だった。

「やっぱりな」

 大地竜は溜息をつくような仕草で5人に意識を送る。

「今度は5人で呼びかけてみ」

 言われるがままに、洞窟の中に声を張り上げる5人。その度に洞窟内から発せられる風刃。それをひたすら繰り返す。すると、洞窟内から声が響いた。

「魔王なのか? 勇者なのか? どっちにしろ、我は貴様らには協力しない。部下を殺されたくなければ、さっさと帰れ」

「諦めずにしつこく呼びかけて、エリスちんたち」

 5人は洞窟の奥から意識に直接届いた声を無視し、ひたすら「暴風竜さーん」と呼びかける。するとまた声が飛んできた。

「あのね君ら、俺はここで引きこもっていたいの。うるさいから呼ぶのやめてもらえる?」

 それでも続ける5人。

「ねえ、いい加減にしてくれない? ぼくに構わないで欲しいの。いいから放っておいてよ!」

 でもやめない5人。

「あーうざい、いい加減にしないと、ぼく、舌噛んで死んじゃうよ。いいの? ぼくが死んでも?」

 らーちんが5人に伝える。いい具合に暴風竜が錯乱してきたと。よくよく考えれば、暴風竜が舌を噛んで死んでも、エリスたちには関係ない。が、そういう思考をするのが引きこもり。それがエリス-エージにはよーくわかった。

「らーちん、次はリア充ね」

「さすがだエリスちん」

 一旦洞窟の入口まで引き、そこでおもむろに宴会を始める5人と2匹。

「1番レーヴェ。宵闇のドラゴンを歌います!」

 こういう時に頼りになる彼女。洞窟内に響き渡るような声で、勇壮な竜を讃えた曲を歌い出す。これは引きこもりにはきつい。暴風竜は洞窟の奥で耳をふさぐ。なんでそんな歌を聞かされにゃならんのだと。

 続けて大地竜の声。暴風竜は大地竜の存在に気づいていた。で、そいつがこんな声を発する。

「ほれ、エリスちん、近う寄れ」

「お許しください大地竜さま」

「何をもったいぶるのだ、俺とお前の関係だろう」

「まあ、大地竜さまったら、雰囲気も大事ですよ、ふ・ん・い・き・も」

 暴風竜はおもいっきりムカつく。

 なんで自宅でそんなのを聞かされにゃならんのだと。

 壁ドンするぞ畜生! うお、壁がねえよ畜生!

「エリスちん、気持ちええか?」

「大地竜さま、それ以上なされると、私との盟約が失われてしまいますわ……。あ……」


 殺す。


 暴風竜はいきり立って洞窟から飛び出した。

 ところが、そんな彼を狙うように放たれたのが火山召喚サモンボルケーノ

 そう、らーちんとエリスは、小芝居をうちながら、洞窟入口をロックオンしていたのだ。

 こうして暴風竜は、マグマの濁流と洞窟に挟まれ、大ダメージを受けた後、冷えたマグマに身体を拘束されることになる。


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