荒廃
「僕のおじいさんはスゴいんだ。
歴史にスゴく詳しいんだ。
天才なんだよ、僕のおじいさん。
その天才の孫だから僕も天才。
それでね〜(以下省略)〜」
立て続けに、5割ぐらい自慢話を織り交ぜながら、リオンは自分の知っていること全てを話した。
要約すると以下の通り。
・東京オリンピックは開催出来なかった。
・何度か通貨危機もあったが、2020年代後半までは現在に比べれば、まだ安定していた。
・若者のガン患者が増えた。
・培養臓器交換が可能になり、死なない老人たち、という言葉が流行った。
・脳波でコンピュータを操作できるようになった。
・映像処理が発達し、ネットと現実の見分けがつかなくなった多くの老人達が、ネットに夢中になり餓死して問題になった。
・リニアモーターカーは液漏れの問題があって、2034年を過ぎても走っていない。
・中東と中国の原発でレベル4の事故が複数発生し、日本に賠償請求があった。
・日本海側の海洋採掘施設で大きな事故があり、それが原因か定かではないが、地震と津波が起きた。
・地震と津波は、中国の上海に大きな被害を与えた。
・中国は津波が発生した原因は、日本の深海採掘方法に問題があったと断定した。
・人道支援という名目で、中国軍が日本に上陸し、その際に上海の難民が大量に日本に送り込まれた。
・海外からの流入が止まらず、治安が著しく悪化して、日本経済が崩壊した。
「よく覚えたのう、リオン。ホントにお前はワシの自慢の孫じゃよ。」
リオンの祖父、タカシンは全身ガンで侵されていたが、薬で末期症状の激痛を抑え、会話は出来る状態にあった。
痩せ細った身体を、心配するリオンには見せないよう、入院患者用の薄っぺらな布団で隙間無く隠し、まだかろうじて動く顔の筋肉を使って、リオンに微笑みを見せた。
「おじいちゃん!起きてたんだね!」
リオンは満面の笑みを浮かべて、祖父のベッド脇に走り寄り、祖父の左手を握り締めた。祖父の手は思いのほか冷たかったため、リオンは慌てて両手で包み込むように握り直し、祖父の手を暖めた。
優しい孫を見つめながら、優しく手を握り返し、祖父のタカシンは言った。
「リオンよ、ワシはもうすぐ死ぬ。」
唐突な言葉に驚いたリオンに、続けて祖父は言った。
「その前にお前にワシの秘密を教えよう。」




