第8話 再設計
旧準備室。
昨日焼けたモータの匂いはもう消えているが、
机の上には焦げ跡がしっかり残っている。
蒼
「……この焦げ跡、なんか“歴史”って感じしない?」
理人
「いや、ただの失敗の跡だよ」
真
「……でも、嫌いじゃない」
蒼
「毒島くんの“嫌いじゃない”は褒め言葉だよね」
理人
「いや、褒めてるのかどうか微妙だろ」
蒼はスケッチブックを開き、
昨日描いた“軽量化版ロボット”を見せる。
蒼
「で、これが“軽くしたバージョン”。
腕の中身は細くして、外装で太く見せるやつ」
理人
「お、いいじゃん。
アニメの“見た目だけ強そう”構造だ」
蒼
「そうそう! それ!」
真
「……作れる」
理人
「毒島の“作れる”は信用できる」
蒼
「でしょ?」
理人はノートを開き、
昨日の計算を見返す。
理人
「でもさ、軽くしただけじゃダメなんだよ。
“どこを軽くするか”が大事」
蒼
「どこって……全部軽くすればいいんじゃないの?」
理人
「いや、全部軽くしたら強度が死ぬ。
“軽くしていい場所”と“軽くしちゃダメな場所”がある」
真
「……骨と肉みたいなもの」
蒼
「毒島くん、例えが急に生々しい」
理人
「でも正しい。
ロボットにも“骨”が必要なんだよ。
骨は強く、肉は軽く」
蒼
「なるほど……
じゃあ、この肩の部分は“骨”で、
この外側のパーツは“肉”ってこと?」
理人
「そうそう。
で、骨の部分はアルミの厚みを増やす。
肉の部分は薄くする」
真
「……削る」
蒼
「毒島くん、削りたいだけじゃない?」
真
「……ちょっとある」
理人
「正直でよろしい」
蒼はスケッチを描き直しながら言う。
蒼
「でもさ、こうやって三人で考えてると……
なんか“プロジェクト”って感じするよね」
理人
「いや、プロジェクトって言うほど大層なもんじゃないだろ」
真
「……でも、楽しい」
蒼
「わかる!」
理人
「まあ……楽しいのは否定しないけど」
蒼
「理人、ツンデレ度上がってるよ」
理人
「違うわ!」
真
「……ツンデレ、似合う」
理人
「毒島まで!?」
蒼は笑いながら、
ふと窓の外を見る。
蒼
「そういえば今日の英語の授業でさ、
先生が“夢は大きく持て”って言ってたよね」
理人
「言ってたな。
“夢は大きく、現実は厳しく”って」
真
「……現実、厳しい」
蒼
「でも夢は大きいよね、俺ら」
理人
「まあ、180センチのロボット作ろうとしてる時点でな」
真
「……大きい」
蒼
「でもさ、先生も言ってたじゃん。
“失敗は成功の母”って」
理人
「昨日のモータ焼損は母すぎるだろ」
真
「……母、強い」
蒼
「毒島くんの言葉って、なんか深いよね」
理人
「いや、深いのかどうか微妙だろ」
蒼は新しいページを開き、
“再設計版ロボット”を描き始める。
蒼
「じゃあ、今日の目標は“再設計”。
軽くて、強くて、倒れないロボット」
理人
「現実的で、壊れにくくて、モータが焼けないロボット」
真
「……作れるロボット」
蒼
「三人の意見、全部合体させよう!」
理人
「だから合体って言い方やめろって!」
真
「……合体、好き」
理人
「毒島の“好き”は強いんだよ!」
蒼
「じゃあ決まり。
今日のテーマは“合体再設計”!」
理人
「いや、名前がダサい!」
真
「……でも、いい」
蒼
「毒島くんの“いい”は正義」
理人
「もう何でもアリだな……」
三人は机を囲み、
スケッチ、計算、工具が同時に動き始める。
夕日の中で、
“本気の再設計”が静かに始まった。




