第6話 モータが焼ける
旧準備室。
机の上には台車型の足ユニット、配線、モータードライバ、そして理人のノートが広がっている。
蒼
「よし、今日はついに“動かす”日だね!」
理人
「いや、まだ動くとは言ってない。
“動くかもしれない日”だよ」
真
「……動く。たぶん」
蒼
「毒島くんの“たぶん”は信用できる」
理人
「いや、毒島の“たぶん”は逆に危険なんだよ……」
蒼は配線を見て首をかしげる。
蒼
「これ、赤がプラスで黒がマイナスだよね?」
理人
「そう。逆につないだら即死する」
蒼
「即死って言い方やめて」
真
「……即死はやだ」
蒼
「毒島くんの“やだ”かわいいな」
理人
「いや、かわいいとか言うなよ」
蒼
「だって毒島くん、昨日の美術の時間もずっとプラモの話してたし」
真
「……先生が“またか”って言ってた」
理人
「美術の先生、毒島のこと絶対覚えてるよな」
蒼
「てかさ、あの先生、アイドル好きなんだよね。
黒板の端に推しの名前書いてあったし」
理人
「授業中に推し語りする先生は珍しいよ」
真
「……俺も推し語りしたい」
蒼
「毒島くんの推しって誰?」
真
「……ガンダム」
理人
「人じゃないんかい!」
蒼
「いや、毒島くんらしくて好きだけどね」
理人はモータードライバを確認しながら言う。
理人
「じゃあ、電源入れるよ。
久保田、スイッチ押して」
蒼
「任せろ!」
カチッ。
次の瞬間――
ブシュッ……!
白い煙がふわっと上がる。
蒼
「えっ、煙出た!」
理人
「うわっ、やばいやばいやばい!」
真
「……焼けたね」
蒼
「毒島くん、実況しないで!」
理人は慌てて電源を切る。
理人
「モータ……焼けた……完全に焼けた……」
蒼
「なんで!? 俺、スイッチ押しただけだよ!?」
理人
「いや、原因はスイッチじゃない!
たぶん負荷がデカすぎた……
モーメントが……いや、トルクが……」
蒼
「落ち着け理人! 物理の授業みたいになってる!」
真は焼けたモータを手に取り、
じっと観察する。
真
「……焼けた匂い、嫌いじゃない」
蒼
「毒島くん!?」
理人
「いや、毒島の感性どうなってんだよ!」
蒼
「でもさ、これ……
なんか“青春の失敗”って感じしない?」
理人
「いや、青春にモータ焼損は含まれないだろ」
真
「……含まれる」
蒼
「毒島くんの世界観、好きだわ」
理人は深呼吸して、焼けたモータを机に置く。
理人
「……まあ、失敗はデータだし。
原因わかったし。
次はもっと強いモータ使えばいい」
蒼
「お、前向き!」
真
「……強いの、買う?」
蒼
「買うって言っても金ないよね。
俺、今月アイドルのCD買っちゃったし」
理人
「俺も漫画の新刊買った」
真
「……俺、プラモ買った」
蒼
「全員金ないじゃん!」
理人
「でもまあ、なんとかなるだろ。
バイトするか、先生に相談するか……」
蒼
「美術の先生に“推しのCD買ってあげるからモータ買って”って言ったらいけるかな?」
理人
「絶対無理だろ!」
真
「……でも、言うだけ言ってみてほしい」
蒼
「毒島くん、意外と攻めるね」
理人は笑いながら言う。
理人
「まあ、モータ焼けたくらいで止まる俺らじゃないしな」
蒼
「そうだね。
ロボ研は……まだまだこれからだよ!」
真
「……次は、焼かない」
蒼
「うん、焼かない!」
理人
「焼かない……はず!」
三人の声が、
少し焦げ臭い旧準備室に響いた。




