第5話 フレーム
旧準備室。
床にはアルミフレームの棒が何本も転がり、
机の上には真が持ってきた工具が並んでいる。
蒼
「うわ……なんか本格的になってきたね」
理人
「いや、まだ棒だよ。棒の集合体だよ」
真
「……棒でも、組めばフレームになる」
蒼
「毒島くんの“組めばなる”って言葉、なんか魔法みたいだよね」
理人
「いや、魔法じゃなくて技術だから」
真は無言でアルミフレームを手に取り、
長さを測り、印をつけ、カットし始める。
キィィィィン……!
蒼
「おお……音がもう職人」
理人
「てか毒島、なんでそんなに慣れてるの?」
真
「……プラモ。家でずっと作ってる」
蒼
「プラモでここまでできるの?」
理人
「いや、普通はできない。
毒島が異常に上手いだけ」
真
「異常じゃない。普通」
蒼
「いや普通じゃないよ!」
真は淡々と作業を続ける。
その手つきは迷いがなく、速いのに正確。
理人
「で、フレームは“直方体”を基本にする。
四角い箱を積み上げるイメージ。
これが一番強い」
蒼
「へえ……なんかロボットって丸いイメージあったけど」
理人
「丸いのは外装。
中身は四角い方が強いし、作りやすい」
真
「……四角い方が、好き」
蒼
「毒島くん、意外と四角派なんだ」
理人
「いや、四角派って何だよ」
真はカットしたフレームを組み合わせ、
仮止めしていく。
カチッ、カチッ。
蒼
「うわ……もうロボットの“胴体”っぽい!」
理人
「いや、まだ箱だよ」
真
「……箱でも、ロボットの一部」
蒼
「毒島くんの言葉って、なんか詩的だよね」
理人
「いや、詩的じゃなくて事実だろ」
蒼はフレームを覗き込みながら言う。
蒼
「でもさ、こうやって形になってくると……
なんか、本当に作れる気がしてくるね」
理人
「まあ、フレームができれば半分は進んだようなもんだし」
真
「……半分は言いすぎ」
理人
「毒島の“言いすぎ”は信用できるな……」
蒼
「じゃあ三人で持ち上げてみようよ。
どれくらい重いか知りたいし」
三人でフレームを持ち上げる。
蒼
「おお、意外と軽い!」
理人
「アルミだからな。
でも、これにモータとバッテリー乗せたら重くなる」
真
「……でも、持てる」
蒼
「毒島くん、君の“持てる”は信用できる」
理人
「いや、毒島の腕力基準にするのやめろ」
蒼
「でもさ、これ……
なんか“ロボットの赤ちゃん”みたいじゃない?」
真
「……赤ちゃん?」
理人
「いや、赤ちゃんって何だよ」
蒼
「だって、まだ歩けないし、しゃべれないし、
でも“これから育つ”って感じがするじゃん」
真
「……わかる」
理人
「毒島まで!?」
蒼はフレームをそっと床に置き、
スケッチブックを開く。
蒼
「じゃあ次は“足”だね。
ロボットの足って、どう作るの?」
理人
「足は難しい。
二足歩行は無理。
まずは“台車型”でいこう」
蒼
「台車型……?」
真
「……車輪。動く」
蒼
「なるほど!
まずは車輪で動かして、
そのあと二足に挑戦するってこと?」
理人
「そう。段階を踏まないと絶対に失敗する」
蒼
「段階……大事だね」
真
「……大事」
理人
「じゃあ今日はフレーム完成で終わり。
次は“足”を作る」
蒼
「よし、ロボ研、今日も進化したね!」
真
「進化」
理人
「進化……なのか?」
蒼
「進化だよ!」
三人の声が、
組み上がったばかりのフレームに反響した。




