第3話 最初の設計図
旧準備室。
机の上には蒼のスケッチブック、理人のノート、真の工具が散乱している。
蒼
「じゃあさ、まずはロボットの全体像を決めようよ。
180センチで、腕がこう伸びて、肩がガッて開いて――」
理人
「肩の“ガッ”が物理的に無理なんだよ。
この角度、関節が逆方向に折れるって」
蒼
「いや、ロボットだからいいんだよ。
アニメだと普通に動くし」
理人
「アニメは物理法則を守ってないんだよ!」
真
「……守ってない」
蒼
「毒島くん、そこは味方してよ」
真
「アニメは好き。でも物理は守ってない」
蒼
「正論やめて」
理人は蒼のスケッチを指差す。
理人
「まずさ、ここ。肩幅広すぎ。
この幅だと重心が外に寄りすぎて倒れる。
モーメントがデカすぎる」
蒼
「モーメントって、あれでしょ?
“倒れそうな力”みたいなやつ」
理人
「まあ、ざっくり言えばそう。
で、これは“倒れる力MAX”って感じ」
蒼
「MAXはやばいね」
真
「……やばい」
蒼
「毒島くん、語彙がシンプルすぎて逆に説得力ある」
理人はノートを開き、簡単な図を描く。
理人
「ほら、重心がここだと倒れる。
だから肩幅はもっと狭くして、
腕は軽くして、関節は――」
蒼
「ちょっと待って。
それだと“ロボット感”が薄れるんだけど」
理人
「いや、ロボット感って何だよ」
蒼
「ロボット感はロボット感だよ。
肩がデカくて、腕が太くて、
“ドンッ”って感じのやつ」
理人
「抽象的すぎる!」
真
「……でも、わかる」
理人
「毒島まで!?」
蒼はスケッチブックを閉じ、少しだけ真剣な顔になる。
蒼
「俺さ、ただのアニメオタクだけど……
“こういうロボットが動いたらいいな”って思って描いてるんだよね。
現実に寄せすぎると、なんか違う気がして」
理人は少し黙る。
理人
「……まあ、気持ちはわかるよ。
でも現実を無視すると、絶対に倒れる」
真
「倒れるのは嫌」
蒼
「俺も嫌」
理人
「じゃあ、こうしよう。
“ロボット感”を残しつつ、
“倒れない現実”も守る。
その中間を探す」
蒼
「中間……?」
真
「……合体」
蒼
「そう! 合体!
デザインと理論の合体!」
理人
「いや、合体って言い方やめろって……
でもまあ、やるしかないか」
蒼は新しいページを開き、ペンを走らせる。
蒼
「じゃあ、肩幅はちょっと狭くして……
でも形は残す。
腕は軽くするけど、見た目は太く見えるように外装で調整して……」
理人
「お、それなら重心もいける。
関節はこの角度なら壊れないし」
真
「……作れる」
蒼
「よし、三人で“最初の設計図”完成させよう!」
理人
「倒れないロボットを」
真
「かっこいいロボットを」
蒼
「夢のロボットを!」
三人は机を囲み、
ペンとノートと工具が同時に動き始めた。
旧準備室に、
“何かが始まる音”が静かに響いた。




