第12話 改良テスト
旧準備室。
机の上には、昨日改良した“足幅が広くなったロボット”が置かれている。
蒼
「よし! 今日は“倒れないロボット”のテストだね!」
理人
「いや、倒れないとは言ってない。
“倒れにくいかもしれないロボット”だよ」
真
「……倒れない。たぶん」
蒼
「毒島くんの“たぶん”は希望」
理人
「いや、希望じゃなくてフラグだろ」
蒼はロボットの足を触りながら言う。
蒼
「でもさ、昨日より安定してる気がするんだよね。
なんか“どっしり感”あるし」
理人
「まあ、足幅広げたし、重心も下げたし。
理論上は安定してるはず」
真
「……理論、好き」
蒼
「毒島くん、理論好きなの意外」
理人
「いや、毒島は“好き”が多すぎるだけだよ」
蒼
「そういえば今日の数学の先生さ、
“人生は関数だ”って言ってたよね」
理人
「言ってたな。
“上がる時もあれば下がる時もある”って」
真
「……俺の人生、直線」
蒼
「毒島くん、それはそれで心配」
理人
「いや、毒島は直線でいいんだよ。
ブレないってことだから」
真
「……ブレない、好き」
蒼
「毒島くんの“好き”は今日も安定してる」
理人は配線を確認しながら言う。
理人
「じゃあ、いよいよテストするぞ。
久保田、スイッチ頼む」
蒼
「任せろ!」
カチッ。
ウィィィィィン……!
ロボットの車輪がゆっくり回り、
前へ――
蒼
「おおおおお! まっすぐ進んでる!」
理人
「進んでる……!
昨日は右に曲がってたのに!」
真
「……かわいい」
蒼
「毒島くん!?」
理人
「いや、でも気持ちはわかる。
なんかペットみたいだよな」
蒼
「ロボットの赤ちゃんだよ!」
真
「……赤ちゃん、成長した」
蒼
「うん、成長したね!」
ロボットはまっすぐ進み――
そのまま机の脚にぶつかりそうになる。
蒼
「やばい! 止まれ止まれ止まれ!」
理人
「止まれって言って止まるわけないだろ!」
真
「……止まらないね」
ガンッ!
ロボットは机の脚にぶつかり、
そのまま横に倒れた。
蒼
「倒れたぁぁぁぁ!!」
理人
「いや、でも……
“まっすぐ進んだ”んだよ。
これは大進歩だろ」
真
「……進んだ。すごい」
蒼
「毒島くんの“すごい”は本当にすごい」
理人は倒れたロボットを起こしながら言う。
理人
「でも、次は“止まる”をやらないとダメだな。
制御に“停止”を入れないと」
蒼
「停止ってどうやるの?」
理人
「プログラムで“速度ゼロ”にするだけ。
でもタイミングが難しい」
真
「……タイミング、大事」
蒼
「毒島くん、今日の家庭科の授業でも“タイミング大事”って言ってたよね」
理人
「何の話?」
蒼
「卵焼きの返すタイミング」
真
「……俺、失敗した」
蒼
「毒島くん、卵焼き焦がしたの?」
真
「……黒かった」
理人
「毒島の料理スキルはロボット寄りだからな」
蒼
「ロボット寄りって何」
理人
「正確だけど、融通が効かないってこと」
真
「……否定できない」
蒼
「じゃあ次は“止まるロボット”を作ろう!」
理人
「そうだな。
“進む”ができたんだから、
次は“止まる”だ」
真
「……止める」
蒼
「止めよう!」
理人
「止めるか……!」
三人の声が、
倒れたロボットの横で響いた。
その音は、
“次の課題”へ向かう音だった。




