8.元カード魔術師のフォンヌゥンポゥッッッ! ライフ ~いろいろと起こりすぎてアレだが、ハーレム回なので問題なしだと思いたい~
朝。玄関の扉が叩かれた。誰かが来たらしい。
眠いなあ、とか、もうちょっとだけ寝ていたいなあ、とか思いつつ、扉を開ける。
「はい、どちら様ですか?」
「妹が大っっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっ変失礼いたしましたァァぁぁぁぁぁ!」
朝から、銀髪美女の土下座姿を見る俺。
はて。夢でも見ているのだろうか。
ははーん。これはまだ夢なんだな。うん、夢にちがいない。
俺のまわりにいる美女……というか美少女といえば、アリーシアくらいしかいない。
そのアリーシアにも、普段、殴られたり蹴飛ばされたり罵られたりしているのだから、俺に土下座姿を披露する美女など、まずいないのだ。
……というか、誰かに土下座されると、むしろこっちが申し訳ない気持ちになってしまうし、こっちが悪いような気持ちにもなってしまうから、やめてほしいというのが本音ではあるが。
うーん? 俺はなぜ、土下座をしている美女の夢を見てしまっているのだろう?
土下座されるよりは、イチャイチャ甘々生活している夢が見たいところなのだが。
バニー姿もいいなあ。ナースの格好も最高だぜ。メイドさんになってもらって、ご奉仕されるのもいいかもしれん。
とか、考えていたのだが、どうやらこれは夢ではないのだと、ようやく理解する俺。
銀髪美女? 謝罪?
そう、心当たりがあったのだ。
今、この人は『妹』と言っていた。この人の妹さんということは、似ている容姿をしているだろう。そして、俺に迷惑をかけてきた人物といえば……おそらく、これらの情報をまとめると、この人はリンネスのお姉さんなのではないかと推測できる。
なるほど。ヒロインかと思ったらヒロインじゃありませんでした、という展開だったが、それにしてはなぜリンネスはネームドキャラなんだ? なんて疑問があった。でも、これなら納得だ。そう――リンネスではなくリンネスのお姉さんが、メインヒロインとなるのだろう……!
だが……また騙されるんじゃないだろうか。俺って、他人から見たらチョロい人間だと思われているみたいだし。
……まあ、いいか! 考えない!
「お顔を上げてください。えっと……」
「レーラ・ル・シャルネです」
「そうか。レーラさん……なんてステキなお名前なんだ……!」
ビシッ! と、突然、誰かに後頭部を叩かれた。
振り向くと、そこにアリーシアがいた。
アリーシアがいた。
よくわからないが、アリーシアがいた。
……アリーシア? いつからいたの?
「昨日からです」
えっ。怖ッ。俺の知らないところで、俺の家に亜空間とか実はつくられていたりする?
「幸太郎さん。妹が本当に本当に本当に、ご迷惑をおかけいたしました。これ、お詫びといってはなんですが、お茶菓子です」
高そうな袋を手渡されるのでそれを近くの棚の上に置く。
……あれ? というか、リンネスって、俺がインフェルノ~(長いので省略)を召喚して塵すらも残らぬような姿にしてしまったような……?
思い返してみる。
たしかに、黒服の男たちは木っ端微塵になっていたような記憶があるが、あのとき、リンネスはそもそも姿が見えなかった気がする。
なんとか、生き延びたのか。すごい生命力だ。
「こんなステキな殿方に危害を加えようなんて……最近の妹はちょっと頭がアレだったんです。わたしだったら、幸太郎さんをつまみ食……ごほん、真剣に幸太郎さんとお付き合いを考えたというのに……!」
「幸太郎。今、この女、『つまみ食い』って言いかけましたか?」
……どうやら、リンネスのお姉さんで間違いないようである。
「唐突かもしれませんが、わたしも一目惚れしてしまいました。妹がご迷惑をかけた罰として、どうかわたしに愛のムチを……! さあ、幸太郎さん。あんなことやこんなことをわたしにしてください……! 激しくてもわたしは幸太郎さんの愛なら受け止められる覚悟があります……!」
「……これ、一種の変態ですよ。それに、どうせまた騙されますよ、幸太郎」
たしかにアリーシアの言う通りだ。リンネスの例を考えると、信用してはいけない。
「……何!? この女、本気だ!? 本気で幸太郎に熱烈なアピールをしていやがる!? 変態ですよ、変態! 変態女!」
アリーシアがドン引きしている。どうやら、レーラの心の声を読んだらしい。
「幸太郎さん。子どもは何人欲しいですか? お好きなシチュエーションとかはありますか? ディープな愛から始めますか? お互い片思い、という初々しい設定がいいですか?」
レーラに押し倒されながら、「ああ、なんて最高なんだ……!」と幸せを感じる俺。
レーラの豊満な胸が俺の身体に当たっている。
フッ。どうやら、天使というのは実在したようだな。
フッ。これでもう、思い残すことはないと言っても、過言ではないだろう……。
「いや、まだ思い残すことはあるでしょう。いい加減にしてください」
パコンッ! と、アリーシアがメガホンで俺の額を叩いてきた。
というか、そのメガホン、どこから出してきたの。この世界、メガホンって概念ないでしょ……?
「これが本気なのであれば、つまり、アリーシアくん。ようやく来てしまったようだね。モテ期、ってやつがね……!」
「冗談言っていないで、早く、この暴走している女を帰らせましょう」
えー、冗談じゃないんだけどな。
パコンッ!
「早く帰らせてあげましょう」
「はひぃ……!」
俺は、アリーシアの尻に敷かれている。
「……というわけで、ごめん、レーラ。俺には心に決めた相手がいるから……」
「と、言いますと……?」
レーラがチラッとアリーシアを見た。
レーラは頬を膨らませる。アリーシアも頬を膨らませていて、お互いに仇敵に遭遇したみたいな顔をしている。
……フッ。美女と美少女が俺を取り合おうとしているこの光景は、俺が求めていた光景である。思わずハイになってしまいそうだ。
俺が鼻の下を伸ばしていると、レーラが俺の右腕を取って抱き締める。俺の右腕がレーラのナイスな胸に挟まる。
負けじとアリーシアが俺の左腕を取り、同じように挟もうとするのだが、全然挟めていない。
大丈夫だよ。俺は(明確にどことは言わないが)貧しくても、愛せる人間だからね。
鼻の下がさらに伸びる俺。
「幸太郎は今日は用事があるので帰ってください」
「用事? あら、でも、お嬢ちゃんとの用事ではないでしょう? ……ああ、わかりましたわ。くすくす。わたしに負けるのが怖いのですね」
(どことは言わないが)ある一点を見て、レーラは勝ち誇ったように笑みを溢した。
豊かに実っている自分のそれと、対戦相手のミニプリンを見比べて、お話にならないと思っているようである。
しかし、俺はミニプリンだろうが肉まんだろうがスイカだろうが特大メロンだろうが愛せる自信しかない。
その驕りは、ときに自分にとって危険物となり得てしまうだろう。
それに、小さいほうが伸び代はある、という前向きな考え方もある。
俺は、アリーシアがミニプリンだろうが、大事に大事に愛せる自信はあるので、そこだけで勝ち誇るのはまだ早い。
だから、大丈夫だ、アリーシア。自信を持っていこう!
「アンタもキショいわ!」
ペチン、と頬を叩かれた。アリーシアはそれくらい、ミニプリンなことを気にしているらしい。
「き、気にしていないわ!」
ペチン、ともう一発食らう。……フフッ。最高かな? 『元カード魔術師のハーレムライフ ~今日から俺はいちゃラブ生活だが、毎日が幸せすぎて最高だ~』に改題しよう。
……って、ハッ! また、何者かの手によって思考を操られてしまっていた。危ない、危ない。
「……って、うん?」
ふとレーラの頭上を見た。そこには、漢数字の『三』が表示されていた。
だから、いったいこれはなんなんだ!?
ここで最近発見した気づき、なのだが、この漢数字、なんと非表示にもできるのだ。やり方は簡単。意識をこう「フォンヌゥンポゥッッッ!」とする。すると、いい感じに「フォンヌゥンポゥッッッ!」が「フォンヌゥンポゥッッッ!」されるので、思考がクリアになっていく。それから五秒ほど待てば、ほら、この通り漢数字が消滅する。
しかし、欠点がある。俺がムフフな気持ちになってしまっていると、非表示モードが解除されてしまい、再び漢数字が表示されてしまうのだ。
というわけで、今、ムフフな気持ちになっている俺には、意味のない「フォンヌゥンポゥッッッ!」だったのである。
この通り、漢数字がまた表示されてしまった。
ちなみに、「フォンヌゥンポゥッッッ!」というのは、ただの俺的なかけ声みたいなものなので、「フォンヌゥンポゥッッッ!」は「フォンヌゥンポゥッッッ!」なんだなぁ、くらいの気持ちで考えておくといい。
「幸太郎さん!」
「どうした、レーラ」
「わたしは、その……キープでも構いませんからね!」
グ、グハアァッッッッッッッッッッッッッッ! そう言われると、本気で愛してみたくなるじゃないか……! これが、愛の試練、ってやつなのか……(自分でも何を言っているのかわかっていない)?
やはり、ハーレムというのは、最高だな。ハーレムイズゴッド。ゴッドイズハーレム。
方程式は成り立った。つまり、ハーレムが神で、神がハーレムで、レーラと俺がラブとピースなんだ……。
この世のすべてがわかってしまったぜ……!
「何を言っているのかわかりません! 幸太郎、頭を冷やしてください!」
アリーシアに股を思い切り蹴られる俺。
……お、おい。さすがに、それはひどい、だろ……ガクッ。
「そろそろお暇いたしましょうか。では、幸太郎さん。今度はちゃんと戦略を練って、再アタックいたしますね。それでは、また」
「あ、ああ……レーラ、また……」
……あれ。そもそも、レーラって俺にアタックしに来たんじゃなくて、謝罪しに来たんじゃなかったっけ?
……まあ、いいか! こんな美人なお姉さんとお近づきになれたわけだし!
その日、俺はアリーシアから一時間ごとに強烈なビンタをいただくのでありましたとさ。
あと、潮干狩り回のときに仲間になった貝……コタンちゃんにもなぜか漢数字の『四』が表示されていた。謎は深まるばかりである。
【あとがき】
0ptの今段階で人気投票やりまーす、って言うとやっぱり
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☆応募総数0票! 投票してくれた人ありがとう! みんなの好きなキャラは何位にランクインしていたかな?――
という風になるのでしょうか。
まだ0ptネタでいろいろといじれる余地あるなぁ、と。




