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7.壺売りのお姉さんと俺がクビになった理由

 アリーシアとドグウェンと三人でウィンドウショッピングをしていたその日。


「あっ、すみません!」


 銀髪の胸の大きいお姉さんとごっつんこした。


「いえいえ、こちらこそ申し訳ない。おケガはありませんか?」


「ええ」


「フッ。あなたのようなステキなレディーに傷をつけるわけにはいけませんからね。おケガがないようでよかったです」


 そう言って、クールに去ろうとする俺。


 しかし、お姉さんに服の裾を掴まれる。


「はい?」


「あの、すみません。わたし、あなたに一目惚れしてしまいました!」


「……は?」


 アリーシアが困惑混じりの声を出していた。




 ◇




 立ちながら話すのもアレだし、と近くのカフェに立ち寄る俺たち。


 ついに来たのか。俺のモテ期が。


 少しウキウキとしてしまう俺。

 アリーシアは俺をギロリと睨んでいる。俺、睨まれるようなことしたかな?


「わたしはリンネス・ル・シャルネと申します。リンネスとお呼びください」


「美人なあなたにふさわしい、ステキなお名前ですねぇ! 俺は来咲幸太郎です!」


 白い肌。ルビーみたいに紅色に輝く瞳。


 ……まさか、こんな美人に一目惚れされてしまうとは。フッ。モテ期、ってのはすばらしいな。実にすばらしい。


「幸太郎様、わたしと結婚してくださりますか?」


「はい(今まで以上に元気な声で)! 喜んで!」


 ガシッ、とアリーシアに思い切りすねを蹴られる俺。


 でも、痛くないぞ! 俺は、今日から愛にまみれた人生を送るのだ! だから、まったく痛くない!

 いちゃラブチュッチュ生活が待っていることだろう。ああ、楽しみだな。楽しみすぎて夜しか寝られなさそうだ。フフフフフフフ。フハハハハハハ。


 愛って、なんてすばらしいんだ。これが、愛だったのか。


 やはり、ラブアンドピースなのだよ。この世はラブとピースでできている。


 ラブラブカップル、目指してやるぜ。まわりの人間からドン引きされるくらいのバカップルってやつを目指してやる。


 思えば、異世界に来たというのに、こういう展開があまりにもなかった。無縁の生活をずっとしていた。


 そうだよなぁ!? 異世界に来たら、ハーレムを築くというのは男のロマン! これは、誰にも止められないぜ!


「幸太郎。舞い上がっているところ申し訳ないのですが、気をつけてくださいよ。この女、性格クソ悪いですよ」


 などと、唐突に小声でアリーシアから妄言をいただく。


 性格クソ悪い? ハハハ。まさか。こんなにも清楚な見た目をしていて、清楚な振る舞いもしているのに、まさか、まさか、そんな。


 ははーん。さては、俺がモテてしまっているから、嫉妬しているんだな? もしかしなくとも、嫉妬しているんだな?

 プープププ。アリーシアちゃん、かわいい。


「……蹴っ飛ばしますよ?」


 もう、蹴っとるがな……。


「私が他人の心の声を読めるのは周知の事実だと思いますが。さっき、この女は『何が悲しくて、こんないがぐり坊主に一目惚れするフリなんてしなきゃならないのか。ケッ。早く終わらせよ。こんないがぐり坊主よりもまだ隣にいる筋肉男のほうがいいわ』と、考えていたようです。結婚詐欺師か何かかもしれませんよ」


 むむ。たしかに、アリーシアの言うことは一理あるか。


 そもそも、俺に一目惚れした、という時点で少し怪しいところではある。


 見た目で言うなら、俺よりもドグウェンのほうがまだ『一目惚れした』というのであれば、納得感はあるだろう。


 ドグウェンはいかつい見た目をしているが、イケメンか、と聞かれればたしかにイケメンの部類に入る容姿ではある。


 ただ、あくまでこれは俺の主観だが、女性はホストっぽい見た目の男性やアイドルっぽい見た目の男性が好みの人が多いのではないか、と思うことがある。ドグウェンはどちらかといえば、男性から見たイケメン、って感じの容姿をしているので、『一目惚れするのか?』という問いに対しては、俺は『ドグウェンでも容易ではないのだろう』という結論ではある。

 イケメン以外だったら許されない行動でも、イケメンだったら許される行動というのはあるが……俺は、誰がどう見てもイケメンではないだろう。なんなら女性に「キッッッモ!」とか「ブッッッサ、鏡見ろや!」とかメンタルに突き刺さるような発言をされるくらいの容姿だと、内心は思っている。


 そのような要素から考えるに、たしかにリンネスは結婚詐欺師である可能性は高いのだろう。


 しかし、誰かを疑ってばかりの人生は疲れる。まずは、信じてみてもいいんじゃないだろうか。


「知りませんよ。忠告はしましたからね」


「ああ」


 問題ない。これは、俺が決めたことだ。


「幸太郎様。では、まずは、こちらをご覧ください」


 パサッ、とテーブルに小さい冊子が置かれる。


「ええと、リンネス。これは?」


「カタログです。お好きな壺はありますか?」


 前言撤回。リンネスはどう考えても結婚詐欺師とか、そういう類いの人間だ。


 やっべぇ。俺、騙されている。現在進行形で騙されている。


 これはアレだな。つまり、アレなんだな? 「しめしめ。騙しやすい男が来た来た。この芋男なら、わたしの可憐な見た目で、簡単に騙されてくれるわ。チョロい、チョロい」と思って、近づいてきたパターンだな?


 くぅ。悔しい。

 そりゃ、そうだよな。俺みたいなヤツに一目惚れする人間なんて、この世界にもあっちの世界にもいるわけなんてねえか。


「……一人くらいはいるんじゃないですか?」


「? なんか言った?」


「いえ」


 小声すぎて何を言われたのかはわからなかったが、たぶんアリーシアはいつもみたいに毒のある言葉をぶつけてきたにちがいない。


 うん。まあ、それでもいいや。

 それより、早くリンネスにカタログをしまわせて、ここから去ろう。近くに怖いお兄さんがいるかもしれないし。


「あの、申し訳ないがリンネス」


「? どうされました、幸太郎様」


「俺、今、結婚詐欺とか、壺売り詐欺とか、そういうの、されていたりする……?」


「! とんでもございません! 幸太郎様。幸太郎様はお優しいから、疑り深くなっていらっしゃるのですね。ステキ……」


「『チッ。バカだと思っていたのに、意外にこのいがぐり坊主、勘がいいぞ。キモい!』、と思っているようです」


「俺はいがぐり坊主なんかじゃねえよ、リンネスぅ……!」


 涙がホロリと出た。


「チィッ。クソ面倒だ。そろそろいいですよ! カモが釣れました」


 リンネスがそう言うと、店の窓がガシャン、と割れた。店内でも凄まじい勢いの風が吹き、グラス、皿、テーブル、照明、何もかもが一瞬で吹き飛んで粉々になってしまう。


 俺たちの前には黒服を着た男が三人ほど立っていた。


「アンタたち。お店の人と、他のお客さんには謝罪しやがれですよ。……それから、幸太郎のこと、甘く見すぎなのが誤りでしたね」


 アリーシアがボソッ、と呟いた。そして、ポンッ、と背中を押される。


「この不届き者たちに見せてやってくださいよ。『カード魔術』を」


 その瞬間、俺の服の胸ポケットに入れていたトランプが白く発光し始めた。


「……わかった。見せてやる」


 空中にトランプをばら撒くと、トランプのカードが一枚ずつ回転していく。


 そして、一枚のカードが吸い寄せられるように俺の手に握り締められる。


「スペードの七か。ラッキーだったな。俺と戦おうという意思表示をするお前らにとっては、好都合だろう。俺もこれで全力で戦える」


 その一枚のカードは衝撃波を放ち、次の瞬間――大きな黒い翼を生やした、禍々しいオーラを放つ三メートルほどの小型龍が姿を現した。

 それを受けてか、リンネスと男たちは腰を抜かしてしまっている。


「悪いが、俺は無職だ。俺からお金を集ろうとしたところで、困窮しているから、お金なんぞ出せねえんだ。そのかわりと言っちゃなんだ。俺はギルドをクビになってしまってな。だから俺は無職になってしまったのだが――俺が『どうしてクビになってしまったのか』、それを教えてやるとしよう」


 龍は鼓膜が破れるほどの爆音で咆哮し、ギョロリとリンネスと男たちを睨んだ。そして、口を大きく開ける。


「邪悪な心をも消し飛ばし、不届き者には地獄を味わわせろ。行け。消し炭にせよ、地獄より蘇った処刑龍――【インフェルノ・ナイトメア・エクスキューションドラゴン】」


 インフェルノ・ナイトメア・エクスキューションドラゴン(長くて言いにくい)は、男たちに向かって紫に輝く光線を発射した。


 決まった。ちょっと厨二病感あるが、やっぱ、俺の考えたこの口上、格好いいぜッッッ!


「いててててててててててててて……」


 アリーシアが隣で耳を塞ぎながら、そんな声を出していた。


 大丈夫か!? どこか痛むのか!?


「いや、痛いのは幸太郎だから、大丈夫です」


 ……どういう意味だ、それは。


「……ふぅ。ともかく、だ。俺がギルドをクビになってしまったのは、『この力が強大すぎるから』だ。いろいろと制約があって、この『カード魔術』の使用を制限されていたんだよ。でも、あるとき使用しちまったんだ。んで、契約違反となって、クビになってしまった、ってわけだ……って、もうこいつら聞いちゃいねえか」


 男たちがいた場所を眺めながら、ゆっくりとカードを服の胸ポケットにしまう。

 消し炭と化してしまったので、そこにはもう誰もいない。


「あの、格好つけているところ申し訳ないのですが」


「うん? どうした、アリーシア?」


「この惨状……誰が弁償するんですか……?」


 辺りを見てみる。


 怯えている店員、客。粉々になっているイス、テーブル。その他いろいろ。


 ……悪いヤツをやっつける、という気持ちが先走ってしまっていて、それ以外は何も考えていなかった。


 あれ。もしかして……俺も、悪いヤツと変わらない……?


 なんの事情も説明していないし、店員や客を避難させる、なんて頭になかった。その結果、きっと俺たちは、他の店員や客視点から考えるとあの黒服の男たちの仲間だと思われているにちがいない。


 窓を割ったり、店内を荒らしていったりしたのは黒服の男たちではあるが、俺の行いは正当防衛の範疇から逸脱してしまっている可能性が高いだろう。


 俺は、今日、最低なことをしてしまった。


「……ごめんなさい」


 こうして、俺ははじめて借金を抱えるのであった。

【あとがき】

 読者がほぼいないなら、何を書いてもバレないんじゃね? という、考えが思い浮かんだので――


 み な さ ま の ために~


 作者が好きな寿司ネタランキングTOP5を発表


【第1位】サーモン

【第2位】マグロ

【第3位】ねぎとろ

【第4位】エビ

【第5位】ブリ


 みんなの寿司な……好きな寿司ネタは何位にランクインしていたかな?

 ……というわけで6話で闇鍋パーティー回にするか、寿司ネタ回にするか迷いましたが、闇鍋のほうがなんとなくいい気がしたので闇鍋パーティー回としました。そもそも主人公以外、「寿司って何……?」ってなるわけなので、主人公が他のキャラに対して説明する描写を入れなきゃいけないな~、という考えがあり、ボツになりました。

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