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6.第一回ドキドキ闇鍋パーティー! ゲーミングカラーの怪しい薬瓶もあるよスペシャル!

 現在、いろいろと問題が山積みなわけなのだが、それはさておいて。


 今朝、目を覚ますと、ベッドの横の小さいテーブルになにやらゲーミングカラーの怪しい薬瓶が置かれていた。


 なんだこれは。いかにも危険物です、って感じの見た目をしているじゃないか。


「……って、まずい! ぼうっとしている場合じゃなかった! 今日は、ギルド仲間(元)と闇鍋パーティーの約束をしているんだった!」


 ……ウケ狙いでこの薬瓶でも持っていくか?


 でも、得体の知れないものを持っていくのもな。闇鍋パーティーとは言っても、さすがに食べられるものを持っていきたいところである。

 用意していたロースハムとホタテ、それからカブをクーラーボックスに詰めてから、考えるとするか。


 シュンッ、シュンッ、シュンッ(爆速で用意する音)! 


 よし、準備は終わった。

 で、どうする? 持っていくか?


 しかし、見るからに危険物を闇鍋パーティーに持ち込むのはな……。


 現実世界だったら、さすがに問題になっているだろう。

 ここがギャグとかコメディとかそっち系の世界だから、「チャッ、チャン!」という合いの手的な効果音をつけ加えてオチをつくることも可能なところが、俺を悩ませてくるのだ。


 ううううん……? 持っていくべきか……?


 いや、しかし、まともな倫理観をしているのであれば、これは持っていくべきではないし、しかるべき機関に届けて処分してもらうのが妥当なところだろう。


 困るな。誰だよ、こんな薬瓶を俺の自宅に置いていった人間は。


 まあ、容疑者はアリーシアかドグウェンのどちらかでしかないんだが。


 と、考えると、これはどう考えてもアリーシアが置き忘れていったものにちがいない。


 今日はなぜかアリーシアもドグウェンもいないし、勝手に持っていって使うのも倫理観という観点で考えたら、アウトなところだろうか。


 でも、こんな、ご自由にお使いくださいみたいな状態でゲーミングカラーの薬瓶を置き忘れていってしまうのも倫理観的にどうなんだ……?


「まあ、いいか。もしかしたら途中でアリーシアに出会うかもしれないし、それにこのままウチに置いておくのも何かあったときに困る。とりあえず、持っておこう」


 薬瓶をズボンのポケットにしまい、闇鍋パーティーの会場(元ギルド仲間の家)に向かうのだった。




 ◇




 トントントン、とノックをする。


「お、来たか。遅かったじゃないか、幸太郎」


 眼鏡をかけたノッポな黒髪の男が俺にそう言う。


 こいつはゴロウ。異世界に来て、はじめてできた友だちである。


「ちゃんとブツは持ってきたでやんすか?」


 ゴロウの背後から、茶髪で太っちょなわんぱくボウヤ感の強い男が現れた。


 こいつはウメスケ。ゴロウの友だちで、俺の友だちでもある。


「ハハッ。ちゃんとあるみたいだね」


 ウメスケの背後から、青髪のキザっぽいけどどこか憎めないような人柄を感じる男が現れた。


 こいつはレウィン。俺の友だち……友だち? か、ちょっとわからないが、謎多き男である。でも、悪いヤツではない。


「もう、闇鍋パーティーは始まっているんだぜ。とりあえず、なか入れよ!」


 ゴロウに促されて部屋の奥まで進む。


 しかし、俺はここで、びっくり仰天なローリングズッコケ、を披露してしまった。


「遅いですよ幸太郎。もう食材入れちゃっていますからね?」


 なぜ、アリーシアがここに……。

 ゴロウ、ウメスケ、レウィン。このなかの誰かと知り合いだったのか……?


 しかし、普段のあのウサギの着ぐるみ姿ではなく、白のワンピース姿というのがなかなか新鮮だな。うん、バッチリグー、似合っている。


 ……って、それはいいんだけども、どうしてアリーシアがここにいるんだ。せっかく、野郎だけのドキドキ(ポロリはない)闇鍋パーティー大会が開催されると思って、ウキウキしていたのに。


 女子会というのがあるように、たまには男……いや、漢だけで楽しむイベント、というのもあるわけよ。


 しかし、アリーシアがいたら、目的が潰えてしまう。


 というか、これあれじゃん。オタサーの姫みたいになっているのではないだろうか。完全にオタサーの姫ポジションじゃん。


 たしかに、ビジュアル……ヴィジュアル的には姫と言われても納得ではあるのだが、しかし、男四人にたいしてアリーシアって。こんなの、和気あいあいと闇鍋パーティーを楽しもうとしていたのに、男たちの醜い姫へのアピール合戦と化してしまうに決まっているじゃないか……!


「幸太郎、どうしたでやんすか? そんなぼうっとしちゃって」


「あのさ……この女の子とお前ら知り合いだったのか……?」


 聞いてみる。


「幸太郎」


「どうした、ゴロウ」


「おれたちは飢えているんだ。愛、というやつに。おれたちが、なぜ、非モテ三人衆(レウィンを除く)と呼ばれているのかはわからないが、こんなにもステキな人間だというのに、そんなぞんざいな扱いはあまりにもひどいじゃないか……」


「そうでやんす……オイラだって、美人な彼女をつくって、イチャイチャして、メロメロして、ハフハフして……そういう恋愛――いや、欲ッッッ! を、解き放ったっていいじゃないか、と思うときがあるでやんす……」


「今が!」


「そのときって!」


「ことで!」


「やんす!」


 なるほど、まったくわからん。


 このメンツのなかじゃ、まだ常識人枠のレウィンに聞いたほうが早いか。


 というわけでレウィンに聞いてみた。


「ボクたちもアリーシアさんのこと、よく知らないんだ。でも、誰かの知り合いぽかったからさ、とりあえず上げたの。『人を待っている』、って言われたから」


 なるほど、事情をようやく把握した。


 でも、だからといって、見ず知らずの女の子を家のなかに入れさせるのもどうなのよ、これ(俺が言えたことではない)。

 いや、俺はアリーシアのこと、知っているけども。


 というか、『人を待っている』って、それ、俺のこと……?


 はて。アリーシアに、闇鍋パーティーのことなんて話していたっけか。


 ううん。言っていなかったような気がするが。


 まあ、だが実に都合がいい。ちょうどアリーシアにこのゲーミングカラーの薬瓶について聞きたかったしな。


「なあ、アリーシア――」


「とりあえず、持ってきた食材入れてくださいよ」


「お、おう……」


 えっと、ロースハムとホタテとカブをポチャン、と。


 この薬はどうする? 入れてみる? 入れるのはやめておく?


 ……ええい、ままよ。入れてしまえ。


 ボヂャボヂャボヂャー。


 見事に鍋がゲーミングカラーに様変わり。


 食材がゲーミングカラーになっている鍋って、なんだ……?


 えっ、やっぱ、怖くね? 大丈夫? 本当に大丈夫そう?


 ま、まあいいか。アメリカのお菓子みたいで、色彩豊かで寂しくはないだろう。

 食べられるかわからない、という一点を覗けば、ほぼアメリカのお菓子と同じなんだから、美味しいにちがいない。うん、きっとそうだ。そう思っておくとしよう。


 あとはグツグツと煮込んでおけば、もしかしたらゲーミングカラーの成分が抜けるかもしれないし、それに期待しておくしかない。これはもう賭けだ。




 約十分後。

 いい具合に鍋もグツグツし始めたので、皿に取り分け、ジュースも用意し、パーティーの準備は整った。


「えー、本日は、幸太郎、ギルド脱退お疲れ会ということで、本日のメインの幸太郎を労おうというわけで云々かんぬんかくかくしかじかうまうままるまるで、つーわけで、乾杯!」


「乾杯!」


 後半、ゴロウが何を言っているのかわからなかったが、どうやら労うために闇鍋パーティーを開いてくれたらしい。


 ジーン。なんていいヤツらなんだ。


 ゲーミングカラーに染まったロースハムを頬張りながら、そんなことを思う俺。


 ……うん! まっずい! まっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっずい! ゲロゲロまずい!


 なんか、この世の妬みと嫉みと怒りと憎しみと怠惰な心と浅はかな考えを煮詰めて凝縮させた塊みたいな、世紀末な味をしている。


 いわば、これはブラックホール。食べるだけで人間をぶっ壊せる、小さなブラックホールが、今、ここに誕生してしまった。


 とてもじゃないが、食えたものではない。


 これ、健康的にも大丈夫なのか……? どう考えても、有害指定されかねないそれである。


「なあ、みんな。無事、か……?」


 ゴロウはゲロを吐きながら、部屋の隅っこでうずくまっている。


 ウメスケは、賢者タイム中、みたいな顔をしたまま時が止まってしまっている。


 レウィンはめちゃめちゃ顔を真っ青にしていて、しばらく何か話せる状況ではなさそうだ。


 そうだ! アリーシアは!?


 ブンッ、とアリーシアのいるほうを振り向く。


「ふにゃ? りょーしたんれぇすかこうたろぅしゃん。しょんなに胸を揉んでもぉぅ、大きぃくなぁーりましぇんよぅ」


 支離滅裂だ! なぜか、酔っぱらってしまっている! ダメだこりゃ! なんだこれ!?


 あれ、俺たちが飲んでいるのは、ジュースで合っているよな?


 確認してみる。


 いや、たしかにジュースだ。ちゃんとリンゴジュースだぞ。


 ……まさか。


 ここで、ゲーミングカラーの薬瓶の存在に気がつく俺。


「アリーシア、これ! これ、何!? これ、アリーシアのだよな!?」


「はへ? これがこうたろぅしゃんのアレ?」


 アレ、って何……?


「ほらぁ、もっとぅ、愛の包容してくだしゃいよぉぅ……。じゃなゃいと、叫びますよぉ、叫んじゃひまぁすからぬぇ……うっぷ」


 ダメだ。理性が飛んでしまっている。


 というか今、『うっぷ』とか言ったか?


「オロロロロロロロロロロロロロロロゲロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロオゲエエエエ……」


 友だちの家の床に美少女のゲロがぶち撒かれてしまう徹底的瞬間を、俺は目撃してしまう。


「……はっ!? 私は何を!?」


 ようやく正気に戻ったのか、アリーシアの顔が赤く染まっていく。


「幸太郎」


「どうした、アリーシア」


「私は何も言っていないし、あなたにも何もしていない」


「……ん?」


「だから、今からアンタの記憶が消えるまでアンタの頭をぶん殴る!」


「……えっ?」


 そ、そんな!? 暴力はやめよう!


 こうして、闇鍋パーティー編の幕が閉じた。


 これはあとでわかったことなのだが、あのゲーミングカラーの薬瓶は本音薬とアリーシアは呼んでいるそうで、飲んでも危険性はないらしいが、飲んだ人は強制的に本音を話したり支離滅裂なことを話したりしてしまうし、副作用として下剤的な効果や催眠効果などもあるようだ。


 本音……本音……?

【あとがき】

0pt作者の執筆ライフ ~読者がいなくて閑古鳥状態だが、それでもいつかは日の目を見られると信じて書き続けたい~

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