表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/60

47話:予定変更2

 ドミニクが渡したキャンディでようやく落ち着いたウルリカ。

 ただ騒いでしまったので、人目を避けて用水路近くへと移動する。


「で? あたしを後回しにする言い訳、聞いてあげるわよ」

「いや、だから、申し訳ないがそうそう余人に話せるようなことではないんだ」


 俺はそれこそ言い訳を繰り返す。

 そもそも国の捕り物で、部外者に言えるわけがない。


 だがゾイフも引かない。


「それはあまりにも不誠実では?」


 圧をかけないでほしい。

 本当、魔人としての気配をここでだすのどうなんだ?

 狩猟大会で魔人倒されったって話なのに。


 いや、そう言えば知ってるのか?

 貴族の間では広められたが、そもそもが旅人で、立ち寄っただけの二人だ。

 狩猟大会のこと知らないかもしれない。


「…………王族が主催する狩猟大会があったことは知ってるか?」


 俺が口を開いたことに、ドミニクは驚く。

 けど核心ではないことから様子見するようだ。


 ウルリカはキャンディで頬を膨らませながら応じる。


「狩猟大会? はぁん、本当にこの国って腑抜けてるわね」


 皮肉げな様子から、知らないようだ。

 それか、まだ自分が魔人だと自覚がない可能性もあるのか?

 同じ魔人が倒されたと聞いたら、少なくとももっと取り繕う様子がある気がする。

 魔人のこと自体関知してないからこそ、その一番の話題が出ないのか。

 つまりはこの国に潜む魔人と協力関係にはない?

 ゲームでは連携してる魔人同士もいたが、最初のボスのウルリカの仲間はゾイフだけ。

 それが今も適応されてるなら悪い状況じゃない。


 俺が次の切り口を考えてると、ドミニクが軽く首を傾げた。


「我が国と、何処の国を比較しての言葉なんだ?」


 そうだ、故国へ帰るとしか言ってない。

 ダーリエフェルトに思うところがあるとは聞いてないんだ。


 ウルリカは隠す気もないようで、正直に答える。


「ダーリエフェルトよ。聞いたことがない? あの国が今、悪政に苦しんでること」

「いいのか、故郷をそんな風に言って?」


 ドミニクが思わず作ってくれた話題に乗って、俺も水を向ける。

 するとゾイフも、ダーリエフェルトに含むことがあると言葉にした。


「正しくないことを見ないふりは、自らの正しささえ曲げる行い。ウルリカは清く正しく美しい乙女だからこそ、言葉を迷う必要はないのです」


 なんか無駄なウルリカ上げが混じったけど、ダーリエフェルトの政治への反感は肯定するのか。

 それは復讐対象がダーリエフェルトの国王であること以外にも、故郷の現状に思うところがあるってことか?

 だからこそ反乱という、内部からの力を頼ることもしたのかもしれない。


 ただ、そうして思うところがあるとわかったからこそ、ドミニクが俺に目顔で問う。

 イェーデシュタン侯爵を捕まえる理由が、そもそもダーリエフェルトの汚職だ。

 今のダーリエフェルトに反感を持つ相手に、会えない理由を正直に話してもややこしいことにしかならない。

 それは俺でもわかる。

 だからこそ、話題を逸らすために狩猟大会から振ったんだ。


「まぁ、俺たちは他国の政治をどうこう言う権利もない。それに、今こっちもそう穏やかな状況じゃないんだ」

「何? この国の王族も汚いことしてるの?」

「違う違う違う」


 俺は慌てて否定した。

 何せこうして会ってることを王弟が把握してるんだ。

 つまり今の会話もどこかで監視されてる可能性がある。


 ドミニクも王族批判なんて話題から逸らすために、繋いでくれた。


「逆だ。狩猟大会で賊が出たんだよ。その対処で今、忙しくなってるんだ」

「はぁん? 根性座ってんじゃない」


 ウルリカ、賊視点になってるぞ。

 なんて俺はゲーム知識のほうに意識を持っていかれるが、それ以上に反応したのがドミニクだった。


「その賊のせいで、俺の兄は再起不能の重傷だ。あいつが根性座ってないとでも?」


 普段温厚で、俺がつるし上げられても静かだったドミニクが気色ばむ。

 確かにエドガーのことを思えば、賊を褒めるような言葉は肯定しがたい。


 それに同じ魔人であるウルリカが、同じような被害を出すかもしれないことを思えば容認できない。

 誤差で終わるかもしれないが、どうにかここで足止めしたい気持ちが強くなった。


「…………そ、それは、言い方が悪かったわ」


 ドミニクの本気の不快感に、ウルリカも賊との争いで重傷を負った身内への心ない言葉を撤回する。

 翻せばウルリカも襲われて逃げ延びた側で、身内が抵抗して犠牲になった側だ。


 だからか、その目に迷い浮かんだように見えた。

 俺に復讐をそそのかすようなことも言っていたけど、全面的に言い返せないような迷いも確かにあるらしい。

 狡いかもしれないが、そこを突かせてもらおう。


「自分が傷つくことを恐れずに行動に移すのは確かに根性あるんだろう。けどな、それで全く無関係の、人生変えられる必要なんてなかった奴が犠牲になるやり方なんて、褒められたことじゃない」

「あの狩猟大会には、認められる成績を残すために努力した学生が参加していたんだ。死者もいる中、根性のあるなしの話じゃない」

「ご、ごめん」


 静かだが、本気で怒る様子のドミニクに、ウルリカは声を小さくした。


「事情を知らずに軽率な発言ではあったことでしょう。謝罪を受け入れていただきたいものです」


 責められる側になったウルリカを庇って、ゾイフが話を先に進める。


「そのような理由があれば、慌ただしいのも理解しましょう。しかしそれと、無事な学生であるあなた方との関りは?」

「俺と、ドミニクの兄が学生枠で狩猟大会に参加してて、巻き込まれたんだよ。で、その時の関係で俺は何度か城に呼ばれてる」


 どういう理由とかは、なしだ。

 嘘は言ってないけど真実も言ってない感じに留める。

 この場合、学生身分の俺じゃ断れないっていう目上。

 そういう指示だってことを言えればいい。


 俺としては菓子で足止めし、できるだけ長くは留まらせたい。

 だからここは、ゲーム主人公の力を頼りたくもある。

 ユリウスが戻ってきた時に引き合わせるくらいには、時間を稼ぎたいんだ。

 それもゲームにはない展開で、不安はある。

 あわよくばダーリエフェルトへの復讐を諦めてほしいが、方策は見つからない。

 そんな中でユリウスを引き合わせるのは、苦肉の策でしかないのはわかってるんだけどな。


「あんた、そんな高位貴族だったの?」


 ウルリカの目の色が変わった。

 俺が城に出入りで来てるってことに何か引っかかりがあったようだ。

 値踏みするような雰囲気は、元ご令嬢だからか?


「いちおう伯爵家だよ」

「見えない」

「そちらもご令嬢の割に、市井になじんでるな」


 俺にウルリカが言うと、ドミニクが逆に指摘する。

 ばれてないと思ってたらしいウルリカは、目を瞠った。


「な、何言って…………」

「けっこう所作が綺麗だし、話してて教養が足りない様子もない」


 ドミニクが言うとおり、そもそも平民だと使う単語が違う。

 だからユリウスのように、それはどういうものかって疑問が出てこないとおかしい。

 だが、ウルリカは王族が催す狩猟大会が、示威行為も含んだ社交という面を理解して話していたんだ。


 そんな隙をゾイフも理解して、その上でこっちの思惑を探りに来た。


「ふむ、つまり最初からウルリカに謝罪を申し出たのは…………」

「いや、本気で申し訳ないとは思っている」


 俺は乗る形で、最初からウルリカがやんごとない令嬢と知っていて謝罪したことを明示した。

 実際ゲーム知識だが知ってたしな。


「だから適当に反故にしようってわけじゃない」


 改めて日取りを決めたい。

 そう思って言ったんだが、邪魔するようにドミニクが俺の袖を引っ張った。

 さっきまで協力的だったのに、いきなりどうした?


「なんだよ?」

「なぁ、あれって…………」


 何処か信じられないような口調で、ドミニクが一点を指す。

 瞬きも忘れて見つめる様子に、俺も視線の先を追った。


 そこには赤毛の青年と、頭からマントを被って顔を隠してはいるものの、体つきから少女とわかる二人組。


「え、あ! ユリウス。帰ってたのか」


 思わず声が出た。

 それが聞こえたらしく、ユリウスがこっちを見る。

 そして俺とドミニクを見つけると、笑みを浮かべて手を振った。


 そうすることで、こっちを見たマントの少女の顔が一部見える。

 マントの合間から零れる金髪に、暗い中ちらりと光を浴びて浮かび上がる碧眼。

 そして清楚そうな印象の顔立ちから形作られる、悪戯っぽい笑み。


「ル、お…………!? な、なぁ!?」


 俺が言葉に詰まると、ドミニクはそうだよなって確認するように何度も頷く。

 いや、そうだけど、なんで王女のルイーゼが目立たない服装で街にいるんだ。


 そんな俺たちの肩が、細い指からは想像できない強さで掴まれた。


「ちょっと、あたしを無視するとはいい度胸ね。誰よ、あれ?」


 ウルリカが、不満を隠しもせず問い詰める。

 至極真っ当な問いだが、王女殿下ですとも答えられず、俺は冷や汗を流すことになった。


定期更新

次回:予定変更3

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
勇者って言って良いのかも分からんし王女って言うのはあかんだろうし、そもそも会わせて良いのかも分からんし、どう事態を収拾できるのかも分からんという(笑)
 わーい修羅場だー(棒
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ