表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

南雲艦隊異世界より帰還す

真珠湾に向かう南雲艦隊が異世界転移した架空戦記です。

 あー、うーむ、ふーむ。


 ああ、すまん、すまん。


 君から一気に大量の話を聞いたから少し混乱してしまった。


 じゃあ、話を整理するために質問をいくつかさせてもらうぞ。


 君たちは異世界とやらに10年いてから、こちらに戻ってきたのだね?


 こちらでは、1日しか経っていない。


 今日は、昭和16年の11月27日だよ。


 昨日、ここ択捉島単冠湾から出撃するはずの君たちの艦隊が突然消滅したとの択捉島からの報告があり、私自身が飛行艇で調査に来たのだよ。


 異世界にいたなど普通は信じられんが、あれを見れば信じるしかない。


 単冠湾に突然出現したあの巨大な「門」、そこから「赤城」が現れた時には驚いたよ。


 残念ながら、異世界で「霧島」「加賀」を喪失したのか……


 いや、君を責めているわけではない。


 10年間、異世界での戦争に巻き込まれて、多くの艦船や将兵を失いながらも、日本に帰還したのだろう?


 我々にとっては1日に過ぎないが、君たちは10年かけて帰って来たのだな。


 本当に、ご苦労だった。


 異世界での戦争のことについて尋ねるが、異世界の「大帝国」という国の皇帝の召喚魔法により、君たちは異世界にさらわれたのだったな。


 大帝国は、異世界にある最大の大陸を軍事力で支配していて、侵略戦争により、大陸を征服した。


 大帝国は自らを至高の民族としていて、他民族は二等民族や奴隷としてあつかっていた。


 大陸周辺の島々の国も征服しようとしていたが、海軍力に劣る大帝国は海戦では連敗していた。


 それで大帝国は、手っ取り早い海軍の獲得方法として、異世界から海軍を魔法で召喚することにしたのか。


 召喚魔法は無作為に標的を選ぶので、君たちが召喚されたのはたまたまだった。


 本来ならば、召喚されると君たちは魔法で奴隷化されて、皇帝の命令には逆らえないようになるはずだった。


 しかし、君たちには、いや、「日本人」「地球人」には、奴隷化魔法は効果は無かった。


 召喚された当時は、分からなかったが、今は理由は分かっているんだったね。


 異世界の生物はすべて「魔核」が体内にあり、魔核に精神操作魔法が作用して、精神が操られる。


 しかし、「地球人」には、魔核が無い。


 だから、奴隷化魔法が効かなかった。


 君たちは大帝国の手から逃れて、大帝国と戦争中の島々、「多種族諸島連合」と協力して、大帝国と戦ったのだね。


 5年かけて大帝国の打倒に成功して、帝都の宮殿にあった召喚魔法についての資料を更に5年かけて研究して、こちらに帰還する魔法を開発したのだね。


 異世界では10年たったのに、こちらでは、1日しかたってないのは、君たちの「一刻も早く日本に帰りたい」という願いが帰還魔法に影響したと考えられると。


 今はあの異世界と行き来できる「門」は固定されて、1度に通れるのは1隻だけだが、こちらの世界と異世界は常に往来が可能になったのだな。


 しかし、この「赤城」の艦橋から見ると、「赤城」その物はさほど変わらんが、載せている飛行機はずいぶんと変わってしまったね。


 零戦などは戦いで、失われた物が多いし、10年たてば機体が劣化して飛行不能になってしまったか。


 代わりに飛行甲板にあるひと昔前の複葉機のような機体は、さっき会った髭が濃く、背は低いが、鍛えた肉体をした種族、「ドワーフ」と言ったか?


 彼らに航空技術を提供して、あの複葉機を造ってもらったのだったな?


 複葉機はまだ分かるが、あの羽の生えた巨大なトカゲのような生き物、「ドラゴン」「竜」だったな?


 馬のように背に鞍を置いて、人が乗って飛ぶのを見た時は驚いたぞ。


 君たちが飛行機を持ち込むまでは、異世界ではあれが最強の航空戦力だったそうだな。


 パイロットたちが全員、金髪碧眼の美形ぞろいで耳の長い種族、「エルフ」と言ったか?


 彼らは種族として「風を読む」のが得意なので、パイロットとして最適だそうだな。


 さて、これからが、最も重要な話だ。


 大帝国を打倒して、君たちは賠償として皇帝の私有地を手に入れたそうだね。


 その土地は日本政府の国有地にすると。


 地図などの資料を読むと、満州より広大で農地に向いているのに人はほとんど住んでいない。


 皇帝が狩猟などの保養地にするための管理人しか住むのを許さなかったから、ほとんど無人なのか。


 大帝国の皇帝は贅沢で傲慢な男だったようだな。


 先住民がいないから、日本人の移民先には最適だな。


 豊富に石油・鉱石が産出する土地でもある。


 産出量を見れば、アメリカに対抗できる……いや、アメリカと戦争する必要が無いのではないか!?


 君!南雲くん!私と一緒に飛行艇ですぐに東京に戻ろう!


 ドワーフとエルフの代表者も一緒にな!


 この異世界の情報で、対米戦を止めるのだ!


 この私、山本五十六連合艦隊司令長官がなんとしても政府と大本営を説得する!




 はい、ここは択捉島にある「南雲艦隊記念博物館」です。


 昭和16年11月、日本帝国はアメリカ合衆国との開戦寸前の状態でした。


 択捉島単冠湾から南雲忠一提督率いる空母機動部隊は、アメリカ合衆国ハワイ準州オアフ島真珠湾のアメリカ海軍太平洋艦隊と基地を攻撃するため出撃する予定でした。


 しかし、南雲艦隊が異世界に召喚され、その結果、新たな領土を異世界に得て、石油・鉱物資源の自給自足が可能になった日本は開戦を寸前で中止しました。


 山本五十六提督は、新設された異世界省の大臣となり、南雲提督が次官となり、異世界の新領土の開拓・移民を推し進めました。


 日本は、三国同盟を破棄し、中国大陸のほとんどから撤兵し、満州・朝鮮半島は日本本土の防衛に必要なだけの兵力を置くことにしました。


 日本は、第二次世界大戦には参戦せず、中立を維持しました。


 大戦後のアメリカとソ連の冷戦時代も中立でありましたが、異世界への唯一の通路である「門」がある択捉島を手に入れようと、アメリカとソ連が何度も手を伸ばしてきました。


 アメリカは択捉島に大規模な投資をして、経済的に支配しようとし、ソ連は直接的な武力侵攻をしようとしました。


 それらすべてを日本は撃退しました。


 令和7年の今も異世界への「門」は、日本の物です。


 南雲艦隊記念博物館では、南雲提督が異世界でエルフやドワーフと最初に遭遇した時の写真、ドワーフが初めて製造した飛行機、南雲艦隊の全艦艇の模型などが展示されています。


 博物館の外にある南雲提督の銅像は、この角度から撮ると、記念艦「赤城」と同じフレームに収められます。


 山本五十六提督が内閣総理大臣を勇退した後、後任に南雲提督を推す声もありましたが、異世界での戦いで健康を損なっていたため辞退しました。


 南雲提督は、異世界へ移民し、戦友だったエルフやドワーフと親交を深め、異世界に骨をうずめました。


 南雲提督は、異世界と日本の友好の架け橋となったのです。


 このように動画配信することで、私は南雲提督と供に戦ったエルフとして、南雲艦隊のことを数百年語り継ごうと思っています。

感想・いいね・評価をお待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
石油利権に関しては、一切他国の介入は許さないでしょうね 鉱物資源は、ある程度の妥協点(日本勢力(国家や日系財閥)が筆頭株主(51%以上)とする合同会社) ソ連の武力は、跳ねのけられたか まぁ、下手に行…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ