バリア一時解除
ある静かな夕暮れ時のことだった。
サチは山小屋のテラスに立ち、ゆっくりと空を見上げた。
たくさんの星がきらきらと瞬いている。
そして、深いため息をつきながら、カイトに向かって静かに言った。
「……カイト。バリアを開けましょう。今だけ、ほんの少しだけ」
カイトは驚いた顔で振り返った。
「サチ、それは危険だよ。向こうは政府だけじゃない。軍も動かしているんだ。バリアを開けたら、一気に侵入されるかもしれない」
「でも、カイト。私は思うの。国をつくるって、そういうことだと思うの。誰かを救いたいなら、壁の中に閉じこもっていても何も始まらない」
カイトは黙ってサチの目を見つめた。
そこにはいつもの強い意志があった。
「……わかった。じゃあ、短い時間だけだ。でも気をつけよう」
バリアの一時解除
サチは装置に向かい、慎重に操作ボタンを押した。
――シュオオオオ……
いつもあった青白い光のバリアが、少しずつ薄くなっていき、ついに10分間だけ、完全に消えた。
すでに山中で野営して待機していた若者たちが、一斉に駆け込んだ
若者たちは、その知らせを瞬時にSNSで広めた。
若者たちの熱狂
「バリア、開いたって! 急げー!」
「よっしゃ、ついに入国のチャンスだ!」
「みんな、登山ルートはこれだよ、急いで!」
「クワロボに会うんだ! その前に、サチに会わなきゃ!」
小学生から大学生まで、あらゆる年齢の若者たちがリュックを背負い、息を切らしながら山道を駆け上がった。
道の途中で知らない同士が励まし合い、時には大声で笑い合う姿もあった。
バリアの内側、サチとカイトの姿
二人は門の前に立ち、緊張した顔で若者たちを迎えた。
「みんな、ようこそ。ここが、独立国家だよ」
「わあああああ!」
歓声があがり、若者たちは笑顔で走り込んだ。
SNSやテレビの反応も大変なことに!
《速報》:「さち国、バリアを一時解除! 若者たちが雪崩れ込む!」
《トレンド1位》:「#さちバリア解放」「#さち行きたい」
《コメント欄》:
「リアルに冒険してるみたいでワクワクする!」
「私も行きたい! 東京からでも間に合うかな?」
「バリアの中でロボットと一緒に暮らせるとか、夢みたい」
「でも10分だけって短すぎるw」
「政府はまた怒りそうw」
「“さち”行きのバスとかできないかな?」
山道を駆け上がったユウタ(18歳)は、バリアの向こうに入ると深呼吸をした。
「やっと来れた……。ここには未来がある気がする」
友だちのミカ(17歳)もにっこり笑った。
「誰かに笑われてもいい。私、ここで新しい自分を見つけたい」
彼らの顔は生き生きとしていた。疲れも忘れて、希望に満ちていた。
サチはそんな若者たちを見ながら、そっとつぶやいた。
「やっぱり、壁の向こうにも光は必要なのよね……」
カイトは隣でうなずいた。
「俺たちの国はまだ始まったばかりだ。これからもっと強く、優しくなっていこう」
こうして、10分間だけの奇跡は訪れた。
若者たちは走り、笑い、叫び、そしてまた未来へと歩きだしたのだった。




