若者たちの衝撃と共鳴
「え、なにこれ……マジで? 新しい国、作った人いるんだけど……」
東京にある高校の教室で、タクト(16歳)はスマホを見つめながらぽつりとつぶやいた。
その声に、隣の席のミナミが反応した。
「また変な陰謀論でしょ? 宇宙人がサンブックをのっとったとか、地下で恐竜が生きてるとか、そういう系?」
「違うってば。これ、ちゃんとニュースになってるやつ。映像もあるし、すごいよマジで。ほら!」
タクトはミナミにスマホの画面を向けた。
そこには、山奥に設置されたカメラの映像が映っていた。
青白い光に包まれる小さな山の拠点。
そのまわりに飛んでくるドローンが、ピシッとはじき返されていた。
「なにこれ……光の壁? これってほんとに軍隊のドローン?」
「らしいよ。しかも、作ったのは夫婦ふたりだけ。しかも元科学者! 田んぼとかも自作ロボットで耕してんだって!」
「え、ちょっと……それ、アニメじゃん!」
「いや、現実なのがヤバいとこ!」
SNSはお祭り騒ぎ!
そのころ、全国の若者たちのスマホ画面にも、《独立国家サチ》の映像が次々と流れ込んでいた。
#国つくった
#バリアすごすぎ
#クワロボに会いたい
#サチって本名らしいぞ
#さちに行きたい若者の会(非公式)
「まじで行きたい。てか、今のサンブック国より絶対楽しそう」
「“さち”っていう響きがもう平和。なごむ」
「政治のニュース見てるより希望わく」
「ねえ、誰か“さち”までの登山ルートまとめて!」
「え、ほんとに山に登るの?w」
「ていうか……この国、なんでこっちの政府より信頼できそうなのw」
「ぼくもクワロボと畑仕事したいです(17歳男子)」
「“バリアで守られてる理想の国”ってなんか…中二心くすぐられすぎる……」
若者たちの胸の奥には……
タクトは画面を見ながら、ふと真剣な顔になった。
「なんかさ……俺、こんな気持ちになったの初めてかも」
「どんな気持ち?」
「今のサンブックって、なにを言ってもムダみたいな空気あるじゃん。政治とか、大人とか、いろいろ……でも“さち”はさ、本気で“今を変えよう”としてる気がするんだよ」
ミナミも静かにうなずいた。
「わかる。“逃げ”かもしれないけど、でも正直……こういう逃げ道、欲しかった」
その感情は、彼らだけのものではなかった。全国各地で、学校や家庭、バイト先やSNSで――若者たちが“さち”に心を引き寄せられていた。
ある者は、「もうすぐ就職だけど、このまま社会に出るのが怖い」と感じていた。
ある者は、「いじめられても先生は何もしてくれなかった」と怒りをかかえていた。
ある者は、「このままの人生に希望が見えない」と真っ暗なトンネルの中にいた。
そんな心の隙間に、突然あらわれた《独立国家サチ》。
そこには、自由があった。希望があった。そして――居場所があるような気がした。
山へ、山へ、若者たちが集まる!
「なあ、タクト、行こうよ。“さち”に」
「えっ、本気?」
「うん。どうせ何も変わらないって言って家にいても、何も始まらないし……だったら、バカみたいでも動いたほうがマシじゃない?」
「……じゃあ、俺、テント持ってくわ」
「私はクワロボに会ったらサインもらうから!」
そのような会話が、サンブック全国あちこちで交わされはじめていた。
高校生、大学生、浪人生、バイト中の若者、夢をあきらめかけていた人――
彼らはリュックを背負い、スマホで登山ルートを調べ、笑ったり不安そうにしたりしながら、それぞれの足で山へ向かっていった。
こうして、“サチ”はただの山奥の国ではなく、
希望を求める若者たちの希望(目的地)になっていったのだった。




