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宣戦布告

ある寒い朝のことだった。


サチとカイトは、小さなログハウスの中に並んで座って、1台のパソコンをじっと見つめていた。

部屋の中ではクワロボたちがストーブの前で丸くなり、静かに待っている。


「……本当に送るのね?」

 サチが、わずかに緊張した声でつぶやいた。


「ああ。ここまで来たら、もう引き返せないさ。さあ、ポチッと」

 カイトはカーソルを動かし、画面のボタンをクリックした。


 その瞬間――

 電子書簡 送信完了。


 淡々としたシステム音が響く。内容はこうだった。


*****************************************************************************************************

『この土地は独立国家(サチ)として、サンブック国とは別の主権(しゅけん)を持つことを宣言する。

今後、サンブック政府からの政治的・経済的な干渉(かんしょう)は、一切受け入れない。

また、本国への無断侵入に対しては、当国家の防衛システムによって対応する。』

******************************************************************************************************


「ふふん。これで、いよいよ“国家デビュー”ね!」

サチがにやっと笑った。


すると、その翌朝――。

サンブック全体がザワついた!


新聞社などに送った国家サチの日常写真付きの独立宣言により、

SNSはもちろん、ニュース番組、ネット掲示板、動画サイト、ありとあらゆる場所で《サチ》の話題が爆発的に広がった。


《ニュース速報》:「山奥に“独立国家”?謎の夫婦、国家を名乗る」

《トレンド1位》:「#国つくった」

《YoTeku急上昇》:「ロボットと田んぼで国家建設!?」

《XXXXX》:「クワロボ、かわいすぎwww」

《コメント欄》:

「この人たち、マジで言ってるの!?」

「夢ありすぎて逆に応援したくなるw」

「てか、なんでバリアとか作れちゃうの……」

「この国、入国方法あるの?観光したいんだけど!」

「正直、サンブック政府の反応よりクワロボのグッズ販売が気になる」

「元科学者?映画かよ!」

「……で、防衛システムってマジであるの?」

「攻めたらロボが田んぼから飛び出してくるのかなw」


一方で、まじめなニュース番組では、専門家たちが眉をひそめていた。


ニュースキャスターA(スーツ姿):「これは法的に無効です。国家の成立には、国際的な承認が必要であり……」

コメンテーターB(メガネの学者):「ですが、あの透明バリア技術は無視できません。軍事転用も可能では……」

レポーターC:「現地に向かおうとしましたが、謎のバリアに阻まれ、ドローンも弾き返されました」


政府のコメントはというと――

「現在、状況を精査中であり、関係機関と連携して対応を検討しています(サンブック官房)」

と、いつものお役所言葉だったが、国民の多くはニュースよりネットの方に夢中だった。


山奥では……


一方そのころ、国家(サチ)では――

「クワロボ、ほら! ネットですごい人気になってるよ!」

「ブイ!? ほ、本当ですか? わたし、芸能人デビューですか!? ……ブイブイ!」

「ちがうけど、なんか……そういうノリでいい気がしてきた!」


ロボットたちもそわそわと騒ぎ出し、《キャリロボ》は自分の車輪を磨き、《ドリルロボ》は「サインペン」をくわえて「ファンにサインの準備を……」と勝手に訓練を始めていた。

 

サチはバリアの外から届くドローンをにらみつけるように見上げた。

「さあ来なさい、サンブック国。こっちは本気よ。バリアとロボたちと、わたしの理想がつまってるんだから!」


その目は、どこまでもまっすぐで、どこまでも自由だった。



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