宣戦布告
ある寒い朝のことだった。
サチとカイトは、小さなログハウスの中に並んで座って、1台のパソコンをじっと見つめていた。
部屋の中ではクワロボたちがストーブの前で丸くなり、静かに待っている。
「……本当に送るのね?」
サチが、わずかに緊張した声でつぶやいた。
「ああ。ここまで来たら、もう引き返せないさ。さあ、ポチッと」
カイトはカーソルを動かし、画面のボタンをクリックした。
その瞬間――
電子書簡 送信完了。
淡々としたシステム音が響く。内容はこうだった。
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『この土地は独立国家として、サンブック国とは別の主権を持つことを宣言する。
今後、サンブック政府からの政治的・経済的な干渉は、一切受け入れない。
また、本国への無断侵入に対しては、当国家の防衛システムによって対応する。』
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「ふふん。これで、いよいよ“国家デビュー”ね!」
サチがにやっと笑った。
すると、その翌朝――。
サンブック全体がザワついた!
新聞社などに送った国家サチの日常写真付きの独立宣言により、
SNSはもちろん、ニュース番組、ネット掲示板、動画サイト、ありとあらゆる場所で《サチ》の話題が爆発的に広がった。
《ニュース速報》:「山奥に“独立国家”?謎の夫婦、国家を名乗る」
《トレンド1位》:「#国つくった」
《YoTeku急上昇》:「ロボットと田んぼで国家建設!?」
《XXXXX》:「クワロボ、かわいすぎwww」
《コメント欄》:
「この人たち、マジで言ってるの!?」
「夢ありすぎて逆に応援したくなるw」
「てか、なんでバリアとか作れちゃうの……」
「この国、入国方法あるの?観光したいんだけど!」
「正直、サンブック政府の反応よりクワロボのグッズ販売が気になる」
「元科学者?映画かよ!」
「……で、防衛システムってマジであるの?」
「攻めたらロボが田んぼから飛び出してくるのかなw」
一方で、まじめなニュース番組では、専門家たちが眉をひそめていた。
ニュースキャスターA(スーツ姿):「これは法的に無効です。国家の成立には、国際的な承認が必要であり……」
コメンテーターB(メガネの学者):「ですが、あの透明バリア技術は無視できません。軍事転用も可能では……」
レポーターC:「現地に向かおうとしましたが、謎のバリアに阻まれ、ドローンも弾き返されました」
政府のコメントはというと――
「現在、状況を精査中であり、関係機関と連携して対応を検討しています(サンブック官房)」
と、いつものお役所言葉だったが、国民の多くはニュースよりネットの方に夢中だった。
山奥では……
一方そのころ、国家では――
「クワロボ、ほら! ネットですごい人気になってるよ!」
「ブイ!? ほ、本当ですか? わたし、芸能人デビューですか!? ……ブイブイ!」
「ちがうけど、なんか……そういうノリでいい気がしてきた!」
ロボットたちもそわそわと騒ぎ出し、《キャリロボ》は自分の車輪を磨き、《ドリルロボ》は「サインペン」をくわえて「ファンにサインの準備を……」と勝手に訓練を始めていた。
サチはバリアの外から届くドローンをにらみつけるように見上げた。
「さあ来なさい、サンブック国。こっちは本気よ。バリアとロボたちと、わたしの理想がつまってるんだから!」
その目は、どこまでもまっすぐで、どこまでも自由だった。




