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山奥の二人

「ここが……私たちの新しい“国”になるんだね」


 細野サチは、岩がゴロゴロと転がる山の斜面に立ち、目をキラキラと輝かせた。

そこは、深山地域の山奥――○ドーム10個分もある広大な土地だった。

まわりに人の姿はまったくなく、木々がうっそうと生い茂り、道なんてどこにもない。

でも、サチにとってはまるで宝物のような場所だった。


「ふむ、GPSも圏外か。こりゃあ、最高だな。サチ」

 隣にいた夫、細野カイトが目を細めて、満足そうにうなずいた。

ふたりはもともと、最先端の研究所で働いていた科学者だった。

けれど、今はもう国のしくみには頼らない。

ある意味、“逃げ出した”とも言えるけれど、本人たちはむしろ、“新しい国をつくる者”だと思っていた。


 カイト夫妻は、

 「 人間が人間らしく生きられる未来! 

   誰かが誰かを支配するのではなく、AIも自然も、人間と肩を並べて共に歩む社会を目指す!」

 そのために、理想の国家を創り上げる!とスローガンをかかげていた。


「文明の枠を超えて新しい形の社会を作る。ゼロからやり直すの。ここに、私たちの理想の国をつくるのよ!」

「もちろん、異議なし! じゃあまずは、あれの起動テストからだな」

 カイトはトラックの荷台を開け、中から直径30センチほどの銀色の丸い機械を取り出した。

それは、ふたりが力を合わせて開発した《Cocoon(コクーン)》という名前の装置だ。

“次世代エネルギーフィールド発生装置”――つまり、外部からの干渉を防ぐため、周囲を守るフィールドを展開するための装置だ。


「いくわよ……起動! コード:SACHI-01!」

 ――シュオオオオオ……

 まるで空気そのものがふるえるような低い音があたりに広がった。

すると、ふたりのまわりの空気が、ほんのり青白く光りはじめる。


その瞬間、無機質な声が響いた。

「バリア展開成功。外部干渉、完全遮断」

「よしっ、これで誰にも見つからない」

 カイトがニヤリと笑い、サチも勢いよくうなずいた。


「さあ、開国よ、カイト!」

 その日、誰にも知られずに――山奥の静かな土地に、**独立国家(サチ)**が誕生したのだった。


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