第3話 新たな世界・明と暗
女顔っていいのかなぁ?サミュエルは可愛い系なんだろうか?でも身長はあるっぽいし。男装の麗人みたいな?
女子が新たな扉開いちゃうよ~!!
「今日は遅刻じゃないですよね?」と、何だか高貴なオーラを纏った人が教室に入った。
「遅刻です、殿下」
殿下が遅刻??近侍の人たち何やってんの?
「サミュール、俺、殿下に興味持った」
「なんなの?男同士で」
「殿下が遅刻とか面白れぇじゃん」
なるほど。いやぁ、信じてたけどさ。双子の片割れが新しい扉を開けてしまったのかと思った。
「おい、変なこと考えてないだろうな?」
「変な事って何よ?」
「はい、そこの双子!静かにするようコソコソ話さないように!」
「「はい」」
「怒られたじゃねぇか」
「私もよ」
次の休み時間、サミュエルは殿下と話をするようになった。
「初めまして。昨日、転校してきたサミュエル=ハイスカイです。父は宰相補佐をしております。お世話になっております」
「似てない親子だなぁ」
「よく言われます」
私たちは、母親似です。父に似なくてよかったと私は思います。お兄様は女顔みたいで不満を漏らします。
昔は二人して着せ替え人形にさせられたからなぁ……。
今のお兄様は中性的でいいと思うんですけどね。
「して、何故いきなり私に話しかけたんだ?」
「単純な興味ですよ。何で今朝遅刻したのかなぁ?と」
「お、お前、ここでその話はっ」
殿下は慌てて護衛をさがらせた。
「はぁ、えーっとだなぁ。近侍の者達に非はない。私は確かに遅刻をしない時刻に王城を出た。そして、この名門ディスカブソン学園に着いた。その後だ。朝は護衛が離れてる時間があるんだよ。その時間にちょっと木陰で昼寝♡と思ったら、寝過ごしてたんだよ。それで、時計を見て慌てて教室に行ったわけだ」
「なるほど」(護衛は甘いな)
「この事はサミュエルにしか話していないからなっ。他言無用!」
「わかりました」
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その頃のヴェルフェイズ王国。
「何故書類がいっこうに減らないのだ?溜まる一方ではないか?」
国王は愚痴るのだが、臣下たちは知っている。宰相一家が隣国ホムへと亡命したためにこのような事態になったと。
「元宰相殿は優秀だったよなぁ。どんなに書類が多かろうが、定時に間に合うように書類を片付ける手腕はすごいよ」
「ああ、極度の愛妻家だからな。早く仕事を終わらせて一刻も早くマイスイートハニーの元へ帰ると言っていた。奥様はよほどの美人なんだろうなぁ」
「令息・令嬢が美形じゃないか!遺伝子の奇跡!!あれは母親似なんだろうなぁ」
「そうだな。元宰相殿にはあまり似ていないからなぁ」
「コラ、そこの二人!無駄口叩いてないで手を動かせ!!」
「「はい」」
(とはいえ、私も元宰相殿が優秀だったからこのような書類の山ができなかったのだと思う)
「国王に申し上げます!今年度の予算ですが……非常に言いにくいのですが、昨年度の6割になるかと……(本当は5割弱だけど、とても言えない)」
「なに~~~!!」
「各地で悪天候が相次ぎ、農作物の不作。税収も大きく見込めません!」
「ならば、その税率を上げればいいのではないか?」
「そのような事をしては国民の怒りを買うこととなります。民あっての国家と存じます」
「うむ」
「父上!」
「公の場では陛下と呼ばんか!」
「陛下!国王がいなくては国と言えません。ここは一つ税率をあげるのが良策では?」
「「陛下!!」」
予算の減額?そんなことが愛するキャシーに知れたら、私はキャシーに捨てられるかもしれない。何としてでも私の元に来る予算だけは確保しなくては!
そんなことを繰り返していたので、国として成立しなくなくなり、あっさりホム帝国の属国となった。キャシーはというと……。
「王子でもなければ、お金もない貴方には用はないわ!」と華麗に去っていった。
阿呆王子は国王共々平民として暮らすこととなった。これまで温室育ちだった阿呆王子が平民と同じような生活レベルに対応できるわけもなく……と誰しもが思っていたが、奇跡の順応力・適応能力で国王共々平民に交じって面白おかしく暮らしている。
……最初からこうであれば問題なかったのに、と元ヴェルフェイズ王国の貴族は切実に思うのであった。
最初から属国?まぁキャシーが邪魔しなければよかったんだけど。あ、でもキャシーのおかげでサミュールは阿呆王子から解放されたのか……。難しいなぁ。