第5話
『ゴブリンを倒したことでカケルのレベルは1上がってレベル2になった!』
いきなり宇宙人の声が頭の中に響いた。
「あっ、おい宇宙人こらっ!」
ようやく喋ったと思ったら、レベルがどうとか言い出す宇宙人。
俺はそんな宇宙人に声を飛ばす。
「おい宇宙人、俺を地球に戻せっ!」
『はぁ……カケル、きみには学習能力がないのか? さっきも言っただろう、僕には戻せないと。地球に戻るにはゲームをクリアするしかないのだよ』
宇宙人は呆れたような物言いでそう返した。
「お前、とんでもない世界に飛ばしやがって! 下手したら死んでたぞっ!」
『でも勝ったじゃないか』
「結果論だっ!」
さっきはゴブリン相手に何とか勝利をおさめたが、次も上手くいくとは限らない。
こんなところにいたら、本当に死んでしまう。
「どうにかしろ宇宙人っ!」
『どうにかと言われてもだな。ふ~む……ではこうしようか』
そう言った次の瞬間、俺の目の前に突如として佐倉と三木が姿を現した。
二人とも俺を見て目を丸くする。
「な、なんだ結城っ!? ってかここはどこだっ!?」
「結城さんっ!?」
『仲間を二人用意した。これなら文句ないだろう』
と宇宙人。
「おい、全然解決になってないぞ宇宙人っ!」
「宇宙人だと!? これはイカレ宇宙人の仕業なのかっ!?」
「え、宇宙人さんどこですか?」
『やあ、レナ。ちえり。久しぶりだな』
宇宙人の声を聞いて佐倉は途端に苦々しい顔になる。
「てめぇイカレ宇宙人、あたしに何しやがったっ!」
一方の三木は「あ、宇宙人さん、お久しぶりです~」と能天気に挨拶などしている。
「こら無視すんなイカレ宇宙人っ! ちゃんと説明しやがれっ! ぶっ殺すぞっ!」
『相変わらずちえりは素直だな。そしてレナは口が悪いな』
「うっせぇイカレ宇宙人がっ! それよりあたしに何しやがったって訊いてんだっ! ここはどこだこらっ!」
『ふむ、それならばそこにいるカケルに聞くといい。きみたち二人を呼んだのはカケルなのだからな』
しれっと宇宙人は言う。
誓って言うが俺は佐倉も三木も呼んじゃいない。
だが宇宙人の言葉を受けて佐倉が俺をにらみつけてきた。
「どういうことだ結城っ。ことと次第によっちゃ、てめぇもぶっ飛ばすぞ!」
「おい佐倉落ち着けっ、宇宙人の言葉を真に受けるなっ」
鬼のような形相の佐倉に迫られじりじりとあとずさる俺。
そんな俺をよそに宇宙人は、
『では、僕はこれで失礼する。ゲームの製作者が口出ししては面白みが薄れるからな』
言うなり声がぱったり止んだ。
「おい結城っ、説明しろ!」
「結城さん?」
「わ、わかった! 説明するからとりあえず離れてくれ!」
そしてこのあと俺は、佐倉と三木にこれまでの経緯を話して聞かせた。
話を聞き終わった佐倉が宇宙人に向かってブチ切れたのは言うまでもない。
「で、でもホントにここがゲームの世界なんですか? なんか現実っぽいですけど……」
と三木が辺りを見回しながら言う
「ゲームの世界っていっても、あの宇宙人は惑星まるごとゲームに改造したらしいからな。俺たちがいるこの星は実在するし、今俺たちがここにこうしていることも現実なんだよ」
「でもでもゲームって楽しいものですよね? だったらこれももしかしたら……」
いまだ宇宙人に対して好意的な考えを持つ三木に、現実ってやつを教えてやるか。
そう思い、俺はゴブリンの死体を指差した。
「三木、あそこに倒れてる奴を見てみな。あのモンスターはな、さっき俺をこんぼうで殴り殺そうとしてきたんだぞ」
「えぇっ?」
「殺らなきゃ確実にこっちが殺られてたところだ」
「そ、そんな……」
ゴブリンの死体を見て、さすがの三木も自分の置かれた状況を飲み込めたようで、呆然とする。
佐倉も「マジかよ……」とつぶやいた。
「ってわけだ。地球に戻る方法はゲームをクリアすることだけらしい。だから俺たちは宇宙人の作ったゲーム世界のルールに従って行動するしかないようだ。かなり不本意だがな」
「くそっ、あのイカレ宇宙人! やっぱ殺しとくべきだったぜ! くそがっ」
「わ、わたし、RPG? でしたっけ……ってやったことがないんですけど、具体的にはどうしたらクリアなんですか?」
不安そうな顔で訊ねてくる三木。
俺はそんな三木に出来るだけ優しく返す。
「そうだなぁ……普通はモンスターを倒してレベルを上げながら、王さまとかの頼みごとを聞いてやったりして、それでストーリーを進めていくと最後には魔王が待ち構えているからそいつを倒せばクリアかな」
あくまでこれが普通のRPGだったらの話だが。
「よくわからないですけど、とにかく魔王っていう人を倒せばいいんですね?」
「ああ、まあ、そういう理解でいいよ」
「だったらさっさと王さまがいる城に向かおうぜっ」
と佐倉。一分一秒も惜しいといった様子だ。
早くゲームをクリアして地球に戻りたいのだろう。
「いいけどさ、その前にこのゲームについての説明書ってやつを読んでおきたいんだが」
「説明書ですか?」
「なんだそりゃ」
「さっき宇宙人にもらったんだよ。このゲームの説明書をな」
正確には俺のズボンのポケットが膨らんでいたから、手を突っ込んだらそれが入っていただけなのだがな。
俺は説明書をぱらぱらとめくって、ひと通り眺めてみる。
それによってわかったことは以下の通りだ。
・モンスターを倒すとそれに応じて経験値を得ることが出来て、一定値貯まるとレベルが上がる。
・レベルが上がるとステータスがアップするほか、ランダムで魔法を覚えることがある。
・モンスターやアイテムを目にすると、視界にモンスター名、アイテム名が映し出される。
・お金という概念はなく、その代わりに魔石というものが流通している。
・魔石はモンスターの体内に埋め込まれている。
・疲労が溜まったり、ダメージを受けるとHPが減る。
・魔法はMPを一定量消費して発動できる。
・HPとMPは時間経過とともに少しずつ回復していく。
・宿屋に泊まれば翌朝にはHPとMPは全回復している。
・HPが0になると死ぬ。
・魔法とアイテムはそれぞれ百種類ずつあるが、死人を生き返らせる魔法やアイテムはない。
「ちっ、死んだら終わりってことかよ……」
「怖いです~」
「まあ、そうならないためにも確実にレベルを上げて、強くなってから次の目的地に進むことにしよう」
「異議なしだ」
「わたしも賛成ですっ」
こうして俺たち三人は、どこかも知らぬ惑星で、リアルRPGのクリアを目指すこととなった。
……覚えてろよ、くそ宇宙人。