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第3話

「なに? お前たちも超能力者なのか?」

「お、お二人もなんですか……?」

「お前らもかよ。信じらんねぇ」

 宇宙人に集められた俺たち三人は、くしくも全員が超能力者だったというわけか。

 というより宇宙人が超能力者を選んで集めたという方が正解だろうがな。

 俺は宇宙人に目を向けた。

 すると当の宇宙人は涼しい顔で俺を見返してくる。

 その時、

『そこの地球人どもっ、何をこそこそ話してるんだっ! さっさと二回戦目を始めるぜ、こっちに来やがれっ!』

 イラついた様子のイケメン宇宙人が声を荒らげた。

 一回戦目の勝利を奪われたことが余程頭にきているようだ。

『二回戦目は絶対にオレ様が勝利するからなっ。おい、出番だぜ二号っ! 貴様は世界チャンピオンの意地を見せやがれっ!』

「は、はい、わかっています」

 イケメン宇宙人に呼ばれて一歩前に出てきたのは眼鏡をかけた男だった。

 メガネをくいっと直す姿はそれだけで頭が良さそうに見える。

『おいPL3000、次は負けねぇぜっ』

『望むところだ。ではこちらはちえりに戦ってもらうとしよう。ちえり、頼んだぞ』

「は、はい、が、頑張ります」

 三木がぎゅっと両手を握り締めた。

『よっしゃ。じゃあ二回戦目のオセロ勝負、いっちょ始めようぜっ』

 イケメン宇宙人の発した通り、二回戦目の勝負内容はオセロだった。


「なあ、宇宙人。三木の能力はなんなんだ? どうせオセロに勝てるような力を三木も持っているんだろ」

 オセロで対戦している二人を遠巻きに眺めながら宇宙人にそっと近付き訊ねると、

『ちえりは集中すると相手の心が読めるのだ』

 宇宙人が返す。

「マジで? 心が読めるのか? だったら絶対勝てるじゃないか」

『うむ』

 心を読む能力とはな。

 ってことは三木の奴、もしかしたら俺たちの心を読んでいた可能性もあるってわけか。

 三木の前ではうかつに変なことを考えられないな。

 だがまあ、とにかくこれで先にこちらが二勝して終わりか。

 などと思っていた矢先、

「ま、負けました~……」

 三木が力なく声を発した。

『ひゃっはー、ざまぁみろっ! オレ様の勝利だぜっ!』

『おや、負けてしまったか』

『見たか、PL3000! これで一対一だぜっ』

『うむ、そのようだな』

「だ、駄目でした~。す、すみません……」

 うなだれつつ戻ってくる三木。

 そんな三木に俺は、

「お前、心が読めるんじゃなかったのか?」

 と訊いてみるも、

「はい。でもあの眼鏡の方、すごくいろいろ考えていて……頭の中を読もうとしても何がなんだかわからなかったんです~」

 三木は涙目でそう答えた。

「ちっ、たく。仕方ねぇな。あたしがかたきをとってやるよ」

「佐倉さん……」

「佐倉、お前」

 いつの間にか俺たちには仲間意識のようなものが芽生えていたらしい。

 仲間の負けは自分の負け。そのように感じるようになっていた。

『では最後の戦いだ。最後はバドミントンで勝負をつけよう』

『もちろんだぜっ。そのためにこっちはバドミントンの世界チャンピオンを連れてきたんだからなっ。行け、三号! やっちまえっ!』

「は、はいっ……」

『ふむ、ではこちらはレナの番だ。準備はいいか、レナ』

「呼び捨てにすんな、イカレ宇宙人がっ」

 言葉とは裏腹に佐倉はやる気充分なようだった。

 佐倉には勝つ自信があるらしい。

『じゃあ、最後の勝負始めるぜっ!』

 一体佐倉はどんな超能力を秘めているのだろうな。

 興味深くみつめていると隣にいた三木が俺にだけ聞こえるようにそっと話しかけてきた。

「佐倉さんは五秒ほど相手の動きを止められるようです」

 と。

 おいおい、マジかよ。

 サイコロの出目を操作するなんて俺のセコイ能力とは違って、三木も佐倉もモノホンの超能力者じゃねぇか。不公平だぞ。

 ――そしてこのあと、佐倉がバドミントン勝負で痩せ型の男相手に一点も与えず勝利したことは言うまでもない。


『くっそーっ! オレ様が負けただとっ!』

『約束通り、この辺り一帯のエリアは僕が支配する。BK五〇五はおとなしく自分の故郷に戻るのだな』

『ちっ、言われなくてもわかってるぜ。じゃあなっ』

 イケメン宇宙人は意外にも物分かりがよく、すんなりと引き上げていった。

 イケメン宇宙人が連れてきた三人の男たちもまた、イケメン宇宙人とともに教室から姿を消した。

「あ、あのう、宇宙人さん。わたしたちとの約束も守ってもらえますよね?」

 三木がおそるおそる口にする。

 約束というのは俺たちが宇宙人の頼みごとを聞いたら地球に戻してもらえるというものだ。

『ああ、もちろんだ。きみたちのおかげで僕はBK五〇五に勝つことが出来た。とても感謝している』

「よ、よかったです~」

「ふぅ、これで一件落着か」

「やっとイカレ宇宙人から解放されるぜ」

 三木も俺も佐倉もほっとして深く息を吐いた。

 一時はどうなることかと思ったが、なんとか無事家に帰れそうだ。

『これから地球に向かう。そうだな、十分もあれば日本に戻れる。きみたちはそれまで仮眠でもとっていてくれ』

「ああ、そうさせてもらうよ」

 俺は心身ともに疲れ果てていたので、宇宙人の提案を受け入れ横になることにした。

 すると三木も俺にならって教室の床に寝そべる。

「えへへ。わたし、教室で寝るの夢だったんです~」

「そうなのか」

 変わった奴だと思うも口には出さないでおく。

 いや、三木は相手の心が読めるんだったか。

 まあこの際どうでもいい。もう二度と会うことはないだろうからな。

「あの、佐倉さんも一緒に寝ませんか?」

「馬鹿か。寝て起きてまた宇宙だったらどうすんだ。あたしはごめんだねっ」

『ふむ、僕は信用ないのだな』

「当然だ、イカレ宇宙人が」


 ――

 

 ――――

 

 ――――――

 

 俺が記憶しているのはここまでだ。

 佐倉が宇宙人に悪態をついたところまでは憶えているのだが、このあとどのようにして地球に戻ってこれたのか、それに関しては一切の記憶がない。

「もしかして、夢だったのか……」

 どこまでも青く広がる空を見上げながら、俺は宇宙空間での奇妙な出来事を思い返していた。

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