ドクと三人の助手2
「ドロー2」「ドロー2」
「……」
「ドロー2」「ドロー2」
「…………」
「ドロー2」「ドロー2」
エナは計12枚増えた自分の手札を見て堪らず喚き散らした。
「……ちょっと!止めてよ二人共!」
ツェッペリンの実験の立会うとはいうものの三人は助手というよりも雑用みたいなもので、研究そのものの手伝いをする事は殆ど無い上、実験自体はツェッペリンがほとんど一人でやってしまう為、三人組は暇を持て余す事になる……ということで今は小銭を賭けたウノで遊んでいるのだった。
じゃあなんで三人組がここに呼ばれたのかと言えば、万が一トラブルが発生した際の備えであり、それもしばらく起こっていない。
「ルールなんだから大人しく従えよなー」
ペパーが口を尖らせながらエナをたしなめた。
「……たまたまだろ」
ヴィラも気にした様子も無く、素知らぬ顔で酒をあおる。
「……覚えてなさいよ」
とはいえルールはルールなので、文句を言いながらもエナは大人しくなった。
一方ツェッペリンはというと、やいのやいのしている3人には目もくれずにコンソールを操作していたが、突然顔を上げて大きく息を吐くと3人の方を向いた。
「……おいお前ら、仕事だぞ!」
3人はツェッペリンの声に反応して直ぐに立ち上がった。
「暴走した、なんとかするからここで食い止めろ」
それだけ言うとツェッペリンはつかつかと歩いて部屋を出て行ってしまった。
部屋に残った3人が培養槽に目をやると丁度警報が鳴り出した所だった。
強化ガラスに致命的な亀裂が走り、それを感知したシステムが自動で培養槽内部にシャッターが降ろしたが、そんなものでは到底内部のキメラを抑える事は敵わず、強化ガラスと内部のシャッターは濡れたティッシュの様に呆気なく千切れ飛んだ。
「もう少しリスクの低い実験の時に失敗してくれた方が助かるのですが……」
エナは文句を言いながら。
「ヒュー!こいつぁ凄ぇや!パワーだけならヴィラ姉より上かもしれねえぜ!?」
ペパーは暢気に野次を飛ばしながら。
「コイツぁいい、酒の肴くらいにはなるかな?」
ヴィラは剣呑に嗤いながら。
三人は立ち上がり、それぞれの腰にある軍刀を抜いた。
先程まで暢気にウノで遊んでいた三人娘は消え、代わりに三人の戦士達がそこに居た。