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ハジマリノヒ  作者: うぐいす
かたつむりの観光客
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エピローグ1 グラングレイのヒトビト

 文字通り身体を張って時代遅れの核ミサイルからグラングレイを護ったクオリア・オニキスは能力行使の代償として身体の約八割を消費してしまった。

鉱物生命体クオリアには再生能力があり核さえ無事なら自然と体は再生していく。

しかし如何にクオリアといえど身体を八割も失ってしまうと再生に丸一日近くかかるし、その間はまともに動けない。

なので今の状態のオニキスには現状何も出来る事が無いので、仕方なくボーっと空を眺めてると、そこにブレアから通信が入った。


『大丈夫かい?オニキス。状況はこちらでも確認したけど、一応報告をお願いするよ』

「はい。核弾頭を視認後、友軍と市街の防衛を優先して、捨て身で防護壁を展開……友軍と市街に被害は軽微で済みましたが……私は体の80%を喪失してしまい、現在行動不能です」


 オニキスの体は現在、能力の全力使用と核ミサイルの爆発のダメージでほとんど頭しか残ってなかったが、本人は涼しい顔をしていた。

クオリアには核以外感覚が無い為、腕がもげようが頭がもげようが体の一部が欠けた程度では大した問題にはならない。

そもそも特殊能力アブノーマリティの使用で自分の身体を消費するのだから、それに痛みが伴えば、いくら人造とはいえ生物としてちぐはぐになってしまう。

鉱物生命体クオリアは『獣性細胞によって生物化した鉱石』であり『遺伝子が組み変った生物』ではない。

要はヒトの形をしてはいるが、ヒトではないという微妙な立ち位置の存在なのだ。


「……わかった、インビジブルはどうなったかわかるかい?」

「私も友軍も敵を見失っています……おそらく逃走したかと」

「……じゃあこれまでだね、撤退しよう」

「私の回収もよろしくお願いします」


・・・


ロウディカが目を覚ますと、どこかのベッドの上に寝かされていた。


「ここは……」


恐らくどこかの病院だろうとロウディカは思った。


「……やあ、体の調子はどうだい?」


 ロウディカが目を覚ましたのに気が付いて隣に居たブレアが声を掛けてきた。

どうやらロウディカが寝ている時から既に病室に居たらしい。


「一時はどうなるかと思ったけど、ちゃんと回復してるって先生が言ってたよ」

「……ヤツは……インビジブルはどうなったんですか?」


ブレアは肩をすくめながら答えた。


「……逃げられちゃったってさ」


それを聞いたロウディカはブレアから視線を外して病院の天井を見た。


「……そうですか」

「おや、存外あっさりしてるんだね?もっと悔しがるかと思ったよ」


ブレアは拍子抜けしたといった様子でロウディカを見た。


「私は……本当はヤツの事等どうでも良かったのかもしれません」


ロウディカの独白は続く。


「私が本当に許せなかったのは、隊員を護れなかった過去の未熟な自分自身……私があの時気付いていれば、家族を、ジャックを喪う事もなかったかもしれないのに……」


ブレアは辛そうな表情のロウディカを見て軽薄そうに笑った。


「ははは……なるほど、なるほど」


ロウディカが再びブレアに視線を戻した。


「ああ……失敬、実は君の部下達から伝言を預かっていてね」


ブレアはわざとらしく咳払いを挟んで一呼吸置いてから言った。


「あんまり一人で無茶するな……だってさ」


その言葉にロウディカが微笑んだ。


「情けない……あんな無茶をしてまでインビジブルを……仲間の仇を討てなかった」

「いやいや、彼等は『家族』の心配をしているんだよ……君だって彼等にとっては大事な家族って事さ……居なくなったら悲しむよ、君と同じ様にね」


ロウディカは一瞬ハッとした様な表情をした後、苦笑いをした。


「…………そうですね、復讐で頭が一杯になって、そんな事まで忘れてしまったとは、まだまだ私は未熟者だ」

「まあまあ、そんな訳だからさ、ゆっくり養生しなよ……後始末はこっちでやっておくから」

「ありがとうございます」


ブレアは背を向けて手をひらひらと振りながら病室を出て行った。

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