ルック・インサイド7
拍子抜けする程に洋館の中は案外普通だった。
少なめに設置してある家具類は一般的なものだし、歴史を感じる様な古いものは無いし、特に怪しいものも見当たらない。
質素な印象を受けるけど、ちゃんと生活感があって廊下は綺麗に掃除が行き届いていた。
「えっと……お腹は減ってませんか?」
突然少女に話しかけられた事に戸惑ってしまい少し反応が遅れる。
「あ、気を使って頂かなくても大丈夫です!部屋を貸して頂けるだけでも十分……」
ここまで言いかけた所で盛大にお腹が鳴った。
多少気が緩んだからかも知れないが、相当に恥ずかしい。
少女を見ると無邪気に可愛らしく笑っていた。
「ふふっ、遠慮しないで下さい、実は私も晩御飯はまだなんです。誰かと一緒の食事なんて久しぶりで嬉しい」
「あーすみません、じゃあお言葉に甘えて……」
少女は心底嬉しそうだ。
その笑顔を見ていると今日起こったこれまでの事が、まるで嘘だったのではないかと思えてしまう。
(こりゃまずったなぁ……)
正直な所を言えば、ここで見ず知らずの他人から提供される食事なんて何が入っているかわかったもんじゃない。
けどこの流れで食事の誘いを断るのは、あまりにも感じが悪すぎる。
自分から泊めてくれと頼んでおいて『信用できないから食事は要りません』なんて、あまりにも失礼過ぎる。
今食べないと死ぬから何をやっても良いなんて、それじゃあ街の外をうろつく強盗と何も変わり無いじゃないか。
(さっきお腹鳴らしちゃったから、体調不良とか言って断る事も出来ないし……)
そうこう考えている内にダイニングに案内され、食事が出来るまで少し待つように言われた。
(……あ、そうだ!アレがあった!)
旅をしていると街以外の場所では狩りや採取で食料を得る事も珍しくない。
そういった安全性に疑問がある食料に対して、使われるのが『検査薬』だ。
粉末状のそれを食事に振りかけると、大体のメジャーな毒物に反応して変色するという便利アイテムだ。
ただ、この場面で使うのも不審がられるかもしれないと思い、少女が料理をしている最中に隙を見て携帯していた胡椒の瓶に混ぜておく。
これなら堂々と料理に振りかけるのを見られても怪しまれない筈。
「お待たせしました~」
少女がニコニコと楽しそうに食事を運んでやってきた。




