甘いマイアズマータ2
小学生の高学年程の背丈とおかっぱに切り揃えた濃い紫色の髪、そしてディアンドルで無理矢理に抑えこんでいるGカップは優に越えるだろう不釣合いな巨乳。
突然訪ねて来た少女と面識はなかったアレンだったが、アレンは少女の姿形を良く知っていた。
何故なら彼女の容姿はアレンが日頃造って売り飛ばしている『商品』そのものだからだ。
あの伝統衣装のディアンドルもクライアントの趣味だ。
「まさか、お前は……」
急に現れた少女の尋常ならざる雰囲気に気の弱いアレンは気圧されていた。
他人の太ももにアイスピックを突き立てた凶行の直後だというのに少女は穏やかに微笑んでいた。
それがかえって不気味であり、アレンの恐怖を助長させる。
「そうだよ、私はパパが造って売ってるパパの子供……材料費をケチって自分の精子でキメラを造ってるのはパパが一番よく知っているでしょ?だからちゃんと血の繋がりもあるんだ」
少女はそう言うと服の上から自分の乳房を持ち上げてアピールした。
「一体何の用だ……まさか僕を殺しに来たのか……?」
恐る恐るといった様子でアレンが少女に尋ねると、少女はクスクスと笑いながら答えた。
「安心して、私はパパと一緒に暮らしたいだけなの……だって血の繋がった親子なんだから当然よね?」
「は……?」
アレンは混乱した。
目の前の少女は、てっきり好き勝手に造られて売り飛ばされた事を恨んで復讐に来たのだと思っていたからだ。
アレンのお得意様は皆ろくでもない変態ばかりで、売られた先でどんな目に合うのか想像する事は難しくない。
だからこそアレンは目の前の少女が言ってる事が理解出来ない。
「一緒に暮らす!?急に一体なんで!?」
「よろしくね……パパ♪」
唐突に少女の姿がアレンの視界から消えた。
直後に再び内腿に走った灼熱感に、アレンはショックで悲鳴も出せなかった。
灼熱感はすぐに激痛に変わり、アレンが恐る恐る視線を下げると、自分の腰のあたりに少女の顔があった。
恍惚とした笑顔のまま、アレンの太ももにアイスピックを新しく追加して、更に傷口をグリグリ抉って遊んでいる。
「う、うああ……あああ!?」
恐怖と痛みと脱力感が同時に襲い、アレンは腰が抜けて床に尻餅をついた。
その拍子に突き立っていたアイスピックが一本ずるりと抜けて、鮮血が噴出す。
「わぁ……かわいい♪でも駄目よ、せっかく刺してあげたのに抜けちゃったじゃない」
アイスピックを拾い上げ、アレンを見つめながら先端に付いた血を舌で舐め取る少女を見たアレンは確信した。
やはりコイツは自分に復讐に来たのだと。
当然の事なのだがマフィアが統治する新月街には警察は存在しない。
だから基本的に自分の身は自分で護るしかないというのはアレンも重々承知していて、なおかつ自分の造ったキメラが自分に復讐に来るかもしれないということもある程度予想していた。
それくらいの想像力や準備は下層に隠れ住む者のマナーとも言える。




