幻想湖水伝22
拠点のある広場の中央にドンと鎮座する、直径5メートルはあろうかという巨大な真珠。
それは不実の湖のヌシ、蛤蜃(コウシン 後にスティーブが命名)の体内にあったものだ。
クオリア・パールの気配はこの中から感じられるという。
「……で、だ。おそらくパールが核だけの状態でこの中に居るというハナシなんだが……誰が割るよ?」
アメジストの言葉にクオリア達は皆一様に渋い顔をした。
パールがこうなった原因は間違いなくクオリア達との総力戦だろう。
クオリア全員で戦った結果、クオリア・パールは戦いに敗れ、熱圏から地上へと落ちて行った。
もし無事だったとしても気位の高いパールの事だ、復讐に燃えていて再び戦いになる可能性も否定出来ない。
中のパールが元気モリモリでも困るが、かと言って皆パールの変わり果てた姿を見たいわけでもない。
とにかく先ずは真珠を割って中身を確認しない事にはパールの安否を確認出来ないが、皆なんか気まずくて気が進まない様子だった。
「……アメジストがやって下さいよ」
「なんで俺様がそんな事しなきゃいけねーんだよ!」
「……あーホラ、貴方怖いものなんて無さそうですし……」
「却下ァ!!そもそも俺様じゃあ非力すぎてヒビ入れれるかどうかすら怪しいぜ!」
アメジストはぐるりと周囲を見回してターコイズを指差した。
「ターコイズ!テメーがやれ!!」
「これは本当に勘弁してくれ……前にパールに裏切られた事、未だに夢に見る位なんだよ」
「チッ!なさけねー野郎だぜ」
「……エメラルド、じゃあ君に頼もうじゃないか?」
「あーん?オレに指図してんじゃねー」
ルビー、サファイア、アクアマリンもばつが悪そうに目を逸らした。
「正直私も嫌だわ」
「……」
「私もパス~」
そうなると皆の視線は自然と頼まれたら嫌とは言わない優しいマッチョ、アンバーへと向かう事になる。
しかしアンバーは困り顔で肩を竦めた。
「……今回ばかりは流石に僕も遠慮したいよ」
「うーん、じゃあどうしましょう……くじ引きとか?」
「誰か何か持ってない?なんか適当なアプリとかでもいいわ」
なんとも無難で面白味の無いオニキスの提案が通ろうとしたその時!アメジストの咆哮が響き渡る!
「えーいしゃらくせぇー!!!クーオリアじゃーんけーん!!!!」
テンションに任せて事を済ませてしまおうという魂胆が見え見えだったがヒトは誰しも皆、急に大声でじゃんけんを持ちかけられると反射的に応じてしまうものなのだ。
「アワワ……ちょ、ちょっとまって……!!」
反応が遅れたサファイアが目を白黒させている間にも、無慈悲にも勝負の瞬間は迫る。
「じゃーんけーんポリャアアアアアアイ!!!!!(迫真)」




