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ハジマリノヒ  作者: うぐいす
幻想湖水伝
192/215

幻想湖水伝21

 湖面を一際大きくうねらせながら、蛤の女王が遂にその姿を現した。

その巨体は悠に百メートルを超えており、一般的なヒトのサイズよりも大きい雄の蛤達ですら米粒に見えてしまう程の巨体は、一見山と見まごう程の威容だ。

大量の霧を噴き出して、その身を覆っているのでハッキリとその姿は見えない。


「皆さん、霧を吸わない様に気を付けてください!」


 クオリア達は予めスティーブから配られた防毒マスクを装着した。

スティーブが昨晩の内に霧の成分を解析して作っておいたものだ。

いつもは年中深い霧が立ち込めていた不実の湖はクオリア達が調査に来てからは深い霧は発生せず、快晴の日が続いていた。

それは決してただ彼等の運が良かったという訳では無く、クオリアの中に風を操る力を持つエメラルドがいるからだ。

湖の霧は定期的に彼女が払っていた。


「俺の出番だな!!」


 エメラルドが能力で旋風を巻き起こすと女王を包む霧のヴェールはあっさり吹き飛ばされてしまった。

それなりに知能があるのか、女王蛤は霧が通じないと見るや潜水して逃げようとするが……その瞬間、女王の周囲の水が突然凍り付き、女王の潜水を阻止する。


「ダメだよ、逃がさない……」


 サファイアの能力で湖水を凍結された女王は逃げ道を失ってしまう。


「チェックメイト、見つけてさえしまえばあっけないものだったね」


 手下を殺され、霧も払われ、逃げ道も塞がれた貝の女王は最早抵抗する術を持っていなかった。

とにかく相手が悪すぎたとしか言えないが、最後はターコイズの電撃によって女王は絶命した。

皆がホッと胸を撫で下ろそうとした時、オニキスが何かに気付いた様子だ。


「……ちょっと待ってください!」

「今度は何よ」

「感じませんか?」

「……?」

「む、これは……!」


 何かを促そうとするオニキスの言葉、その意味に気付いたクオリア達に動揺が走る。


「女王の体内に……パールの気配を感じます」

「オイオイオイオイ!マジかよ!」

「道理でこれだけ探しても居ない訳だ」

「どきどき……」

「調査用にと手加減して仕留めたのが功を奏したか……正直面倒だと思っていたが、やってみるものだね」


 女王の身体からクオリア・パールの気配を感じた皆は女王の死体の前に集まった。

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