幻想湖水伝15
忽然とキャンプから姿を消したライラを探してクオリア達とスティーブが真夜中の湖畔を駆ける。
舗装もされていない場所で車を使って移動するのはリスクが高いし、エンジン音でモッド達を呼び寄せてしまう危険もある為だ。
ターコイズが無線の電波を辿りながら先頭を走り、後ろからスティーブが無線で呼びかけ続ける。
クオリアに比べると戦闘力の高くないスティーブの周囲をアメジストの人形達が併走していた。
「………………ザー……ザザッ」
「電波の返ってくるタイミングが短くなってきている、確実に近づいているね」
ターコイズは依然として応答の無い無線に対してスティーブが不安を感じない様にと鼓舞するとスティーブも走りながらそれに応える。
「僕は……僕達は大丈夫ですよ。これでもフィールドワークには慣れてますから」
それを聞いてターコイズが意外そうな声をあげた。
「ほう、存外タフなんだね?ではもう少し速度を上げよう、救助は早ければ早い程良いだろうしね」
「お願いします!」
今までスティーブに合わせて走っていたターコイズがグンと速度を上げると、離される事なくスティーブも追走する。
そのせいでスティーブと人形達の距離が開いてしまった。
無線からアメジストの文句が聞こえてきたが、二人共無視した。
「おいてめえら!勝手な事してんじゃねえ!」
しばらくそのまま進んでいると、湖の中から捜索していたアクアマリンが湖面に顔を出して声を張り上げた。
「見つけたよ!ハッキリとは見えないけど多分そう!」
二人がアクアマリンが指を指す方向に目をやると、確かに人影が見えた。
暗闇のせいで誰かは判別できないが、ライラである可能性は極めて高い。
「電波もあそこからだ!」
ターコイズの言葉であれがライラだと確信する。
大声でライラを呼んでみるがライラは全く反応を示さない。
それどころか何故かライラは腰まで湖に浸かった状態でふらふらと沖の方へ向かおうとしている様子だった。
これではまるで入水自殺だ、どう見てもライラは正常な状態ではないと確信した。
「アクアマリン!水の中に異変は無いか!?」
「だいじょーぶ!」
どうにかこうにかライラが溺れる前に追いついた。
スティーブは自身が濡れる事をまるで顧みずに水の中をジャブジャブと進んで行く。
「ライラ!!!」




