幻想湖水伝13
深夜、椅子に寄りかかって寝ていたスティーブが目を覚ます。
どうやら作業の段取りを考えている最中に、そのまま寝てしまったらしい。
彼にとってはいつもの事だ。
(またやっちゃった……またライラに『ちゃんとふとんで寝なさい!』って怒られるな)
小言を言うライラを想像して一人で気まずくなっていると、ふとライラの気配が無い事に気が付く。
先に寝ているのかと思いベッドを確認してみるも、ライラの姿はない。
(クオリアさん達の所に行ってるのかな……?)
そう思って携帯端末から連絡を入れてみるも音沙汰は無い。
ふと窓の外に目をやると、ねばつく様な濃い霧が出ていて星も見えない。
スティーブは昼間の調査の時、アメジストの人形が暴走した事を思い出した。
「……嫌な予感がする」
もしライラに何かあったら……と不安と焦燥が彼の心を搔き乱すが、それでも熟練の探検家でもある彼は慌てない。
時間的な猶予がどれ位かわからないが、一人で突っ走っては敵の思う壺だと考えたスティーブは急いでクオリア達の許へと急いだ。
・・・
スティーブは一番頼りになりそうな筋肉、クオリア・アンバーの部屋を訪ねた。
クオリア達の事をスティーブはまだよく知らないが、普段の立ち振る舞いを見て彼を頼るべきだと直感的に判断した。
「……ライラさんが居ない?ふぅむ、それは不味いね」
アンバーにかいつまんで事情を説明するとアンバーは対策を考えてくれている様子だった。
「昼間の事もありますし、すぐにでも捜索を始めたいのですが……」
とはいえ、連絡が付かない事以外はなんの手がかりも無い。
何処をどうやって捜索すべれ良いのかと考えていると、すぐにアンバーが提案してくれた。
「こんな時にパールが居てくれると助かったんだけど……よし、捜索に適したメンバーに連絡するよ」
アンバーの連絡を受けて集まったのはエメラルドとアクアマリン、そしてターコイズだった。
ライラが行方不明という事で全員で探す事は避けて、メンバーを2グループに分ける事でリスクを分散する事にした。
つまり捜索に不向きなメンバーは一か所に集まって誰かお互いを見張るという事だ。
「じゃエメラルド、始めてくれ」
「おうよ!」
探索を始める前にクオリア・エメラルドが強風を巻き起こして周囲の霧を吹き飛ばした。
締めっぽかった空気が霧散すると、一気に視界がクリアになった。
人里離れた場所だけあって、満天の星空が姿を現したが今はそれを見ている余裕は一向には無い。
(ライラ、君にまで何かあったら僕は……)




